分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学の根幹を支える考え方に「栄養素を至適量摂取することで、細胞の機能を高める」というものがあります。栄養素の中で、ビタミンCはとりわけ重要な物質と捉えられています。

ビタミンCには、酸化を防止する作用や炎症を抑える作用、免疫力を高める作用、腸のぜん動運動を促進させる作用、がん細胞を抹消する作用などがあります。ビタミンCは、体の健康を維持する上で欠かせない水溶性のビタミンです。

ここでは、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学における、最もポピュラーな手法である高濃度ビタミンC点滴(IVC)の意義について触れてみたいと思います。

目次

健康維持や病気の治療として利用されるビタミンC

ビタミンCには、酸化の防止やコラーゲンの合成、コレステロールの合成、アミノ酸の代謝などに深く関わっています。

そのため、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践するクリニックでは、食事やサプリメントによるビタミンCの補給や点滴によってビタミンCを補給することを提案しています。

  • コラーゲン合成の材料となる
  • 抗酸化作用や免疫作用を高める( 風邪予防、がん細胞の殺傷、アンチエイジングなど)
  • ヒトは体内で合成できない為、外部から摂取する必要がある
  • 病気の治療として用いる場合、標準摂取量の100倍以上を摂取することで効能を発揮する
  • ビタミンCを経口摂取することで「抗がん作用がある」とした研究論文が存在する
  • 酸化型のビタミンC (デヒドロアスコルビン酸)は、グルコーストランスポーターを介して細胞内へ取り込まれるためブドウ糖と拮抗する

標準摂取量と治療を目的とした使用量との比率

ビタミンCの1日あたりの標準摂取量は100mgとされています。その一方で、分子整合栄養医学による病気の改善を目的としてビタミンCを使用する場合には、100~1,000倍のビタミンCを用いることがあります。

感染症予防や免疫強化を目的とした場合、日常的にビタミンCを服用することで効果が表れることがあります。がんの治療や重度の副腎疲労症候群の治療を試みる場合は、高濃度ビタミンC点滴による投与を行い、体内のビタミンCを高濃度に保つよう医師からアドバイスされる場合があります。

標準摂取量と栄養学的な使用量との比率

高濃度ビタミンC点滴を受ける際の注意点

高濃度ビタミンC点滴の価格や点滴に含まれるサービスは、医療機関によって異なります。取り扱っているビタミンCの製剤の種類や対応している投与量はクリニックごとに違います。

高濃度ビタミンC点滴の投与量は、12.5g、15g、25g、50g、75g、100g という単位で扱っているクリニックが多いようです。価格は投与量によって異なり、点滴するビタミンCの投与量によって5,000円~40,000円と幅があります。

点滴に要する時間は、1回30分~2時間程度です。ビタミンC1gあたり1分以上時間を取ることが望ましいとされています。

高濃度ビタミンC点滴を受ける場合、25g以上で点滴をする場合は、事前にG6PD検査を受けなくてはいけません。G6PD検査の詳細はこちらを参照して下さい。

また、初めて高濃度ビタミンC点滴を受ける場合、患者は下記を確認しておくとスムーズです。

  • 点滴は座って行うのか(リクライニングチェア)かベッドで横になるのか
  • 個室で行われるのか、待合い室で行われるのか
  • 点滴の最中にお水のサービスがあるのか(点滴中は喉が渇きます)
  • 点滴の最中にDVDや雑誌などが見れるのか
  • 冬場に電気カーペットやブランケット、ゆたんぽなど体を温めるものを用意してくれるか
  • 点滴の回数券はあるか(割引の適応など)
  • 点滴を受ける際に事前に予約が必要か
  • 診察や治療はせずに高濃度ビタミンC点滴のみを受けられるのか

高濃度ビタミンC点滴を受けることができない人

下記に該当する人は高濃度ビタミンC点滴を受けることができません。詳しくは、各クリニックにお問い合わせ下さい。

  • ビタミンCや他の薬剤に対して過敏性がある
  • 心不全・腎不全を患っている
  • G6PD欠損症

ビタミンCが集中して存在する臓器

ビタミンCは、副腎(ふくじん)や白血球、脳(下垂体:かすいたい)、水晶体に多く存在するといわれています。こうした組織は、ビタミンCをより多く消費すると考えることができます

特定の病気に対してビタミンCを用いた治療が有効かどうかは、「その病気が発生している臓器に多くのビタミンCが存在するか」という観点から判断することができます。

ビタミンCが多量に存在する臓器 ⇒ ビタミンCの消費が多い臓器 ⇒ ビタミンCが不足すると円滑に機能しなくなる臓器と捉えることができます。

各臓器におけるビタミンCの役割を下記の表にまとめます。

臓器の名称 イラスト ビタミンC の役割
副腎 副腎(ふくじん)は内分泌器官(ないぶんぴつきかん)としてホルモンの合成を行っている。「ストレスホルモン」のコルチゾールと「攻撃ホルモン」のエピネフリン(アドレナリン)を副腎で合成する際に、ビタミンCが必要になる。
白血球 白血球は活性酸素を放出してウイルスを撃退するが、余分な活性酸素の処理にはビタミンCが必要となる。白血球は内部にビタミンCを豊富に蓄えていて、ビタミンC の量が多いほど活動は活発になる。
脳(下垂体) ビタミンC は、脳内の神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)を作る際に利用される。興奮系の神経伝達物質である「ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)を合成するのに、ビタミンCが関与している。
水晶体 水晶体は太陽光などによる活性酸素の影響を受けやすく、何十年にもわたる影響から白内障が生じやすくなる。抗酸化物質としてビタミンCは欠かす事はできない。

ビタミンCの消化吸収のされ方

ビタミンCは水溶性のビタミンです。そのため、タンパク質などに結合せずとも、そのまま腸から吸収されます。腸から吸収されて血管に入ったビタミンCは、遊離(ゆうり)の状態で存在します。遊離とは、他の物質と結合せずに単体で存在することをいいます。

ビタミンCは血管内を移動して全身の臓器に行きわたり、到達した臓器で利用されます。

水溶性(すいようせい)であるビタミンCは、体内で貯蔵することができません。そのため、体内で過剰になった分は尿として排出されます。

ビタミンCには酸化を食い止める作用や免疫力を強化する作用がありますが、体内に長時間溜めておくことができません。そのため、ビタミンCは1日の間で数回摂取すべき栄養素のひとつです。

また、先に述べたように、ビタミンCを「病気の治療」として用いる場合、ビタミンCを標準使用量(100mg)の1,000倍以上を用いることがあります。

そのため、ビタミンCをサプリメントから大量に摂取すればいいと思われるかもしれません。しかし、多量のビタミンCを飲んでしまうと、下痢を起すことがあります。一度に大量のビタミンCを経口摂取すると、腸管でのビタミンCの吸収能力が限界に達してしまうからです。

腸に大量のビタミンCが入り込んでしまうと、急激に腸のぜん動運動が活発になったり、浸透圧(しんとうあつ)によって下痢や軟便(なんべん)を引き起こしてしまったりすることがあります。

特に、ビタミンCを一度に3~4g(3,000~4,000mg)以上摂取すると、ビタミンCのサプリメント摂取による下痢・軟便の副作用がリスクが高まるといわれています。(下痢や軟便を生じる量は個人差があります。)

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践するドクターが病気の改善でビタミンCのサプリメントを用いる場合、(特に体内を高濃度のビタミンCで満たしたいときは)ビタミンCの摂取量の基準として「下痢になる直前の量」と患者に指導していることが多いようです。

ビタミンCのサプリメントを経口摂取する場合は、「少量をこまめに継続して摂取する」のがよいでしょう。

経口ビタミンC摂取時の体内飽和

ビタミンCを大量に摂取した際に、小腸で吸収しきれなくなると、腸の壁から体内に入ることができなくなってしまいます。そのため、下痢や軟便が生じる場合があります。(ビタミンCのオーバーキャパシティ)

ヒトは体内でビタミンCを作ることができない

ヒトやサル、モルモットは、体内でビタミンCを合成することができません。ビタミンCを体内で合成するために必要なグロノ-γ-ラクトン酸化酵素(GLO)を作り出すことができないからです。

その一方で、犬や猫、ヤギなどはグロノ-γ-ラクトン酸化酵素を作りだす能力があるため、自分の体内でビタミンCを合成することができます。犬や猫、ヤギなどは、ブドウ糖(グルコース)を材料にしてビタミンCを合成しています。

ビタミンCの合成経路

ヒトがどうしてビタミンCを自分で合成することができないのか、その代謝経路を下記に示します。

一部の動物にとってビタミンはビタミンではない

「ビタミン」とは、本来、自分の体内で作ることができない物質を指します。しかし、犬や猫、ヤギはビタミンCを体内合成することができます。したがって、犬や猫、ヤギにとってビタミンCは「ビタミン」とは見なされないのです。

特にヤギは病気になると、体内で通常の10倍もビタミンCを自ら作り出します。そうして、「病気」という体内環境のアンバランスを自ら回復させる力(ホメオスタシス)を維持しています。

ヒトやサル、モルモットは、自分でビタミンCを合成することができません。そのため、ビタミンCの欠乏を防ぎ、健康を維持するためには、食事からビタミンCを摂取する必要があります。

ビタミンCを合成することができる動物たち

活性酸素とビタミンC

私たち「ヒト」をはじめとする多くの動物は、酸素を利用することでエネルギーを生み出したり、生命を維持するのに必要な化学反応をおこなっています。酸化はヒトが生命を維持する上でなくてはならないものです。酸素を得ることができない状態は、生命にとって非常に危険なことであり、死を招くことにつながります。

私たちにとってなくてはならない酸素ですが、酸素を利用することによる「デメリット」があります。酸素は利用される際に活性酸素(かっせいさんそ)という有害物質を発生させます。

活性酸素(かっせいさんそ)とは、反応性に富む酸素の総称をいいます。英語でReactive Oxygen Species(ROS)と表記することがあります。

活性酸素は、体にダメージを与えます。活性酸素は反応性が高い物質で、タンパク質や脂質、糖質、核酸など、体を構成する物質と化学反応を起し、分子の構造を変化させてしまいます。その結果、細胞の機能が低下してしまったり、細胞が死んでしまったりすることがあります。

これが、酸化ストレスはがんや細胞の老化を引き起こし、様々な病気を生み出す原因といわれるゆえんです。

酸素はヒトによって不可欠な存在でありながら、活性酸素による酸化ストレスをコントロールできないと、全身の健康を損ねてしまいます。酸素は、まさに「諸刃の剣(もろはのつるぎ)」なのです。

私たちが生命を営み続ける限り、活性酸素から逃れることはできません。よって、体内の酸化ストレスが増えないように、抗酸化対策をとることが重要だとされています。

酸化とは

酸化の化学的定義は、電子を失うこと、水素を失うこと、酸素と結合することです。
還元の化学的定義は、電子を得ること、水素と結合すること、酸素を失うことです。

活性酸素種の主な種類

活性酸素は主に4種類あります。4種類を活性度の強い順に並べると、ヒドロキシラジカル、一重項酸素(いちじゅうこうさんそ)、スーパーオキシド、過酸化水素(かさんかすいそ)となります。

活性酸素には、ラジカルであるものとそうでないものが存在します。ラジカルに当たるのは、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、脂肪酸ラジカルなどです。

ラジカルとは、不対電子(ふついでんし)を持つ分子や原子のことです。ラジカルは、電子を一つしか持たないため非常に不安定な状態です。

フリーラジカルは安定化しようとするため、他の物質の分子から電子を奪い取る性質を持ちます。電子を奪われた相手の物質は、ラジカルによって酸化されてしまいます。

活性酸素の発生理由

活性酸素が発生してしまう原因には、様々なものがあります。

活性酸素は、ヒトの生命を支えるエネルギー生産やホルモン合成、生体防御などの、反応代謝活動をはじめ、紫外線や大気汚染、ストレス、喫煙、電磁波、激しい運動で生じます。

ヒドロキシラジカル 一重項酸素 スーパーオキシド 過酸化水素
ステロイドホルモン

合成・分解

ステロイドホルモン

合成・分解

エネルギー生産 タバコ
アミン型ホルモン分解 オゾン 免疫活動 アミン型ホルモン分解
放射線被爆 過酸化脂質亀裂 薬物代謝
X線照射 放射線被爆 コレステロール合成
X線照射 胆汁酸合成

生体内で活性酸素が生じやすい場所

私たちの体内では、酸素を利用して活発なエネルギー合成をおこなっている組織や細胞が、活性酸素の影響を受けやすいです。

  • 細胞膜
  • 細胞内小器官(ミトコンドリア、ミクロソーム)
  • 細胞質
  • 好中球、マクロファージ
  • 赤血球

活性酸素が発生するとどうなるのか

活性酸素が増えて、体が酸化ストレスに負けてしまうと、細胞や組織が正常な活動を行うことができなくなってしまいます。その結果、下記のような影響が生じるリスクが高まります。

  • 代謝活動の低下
  • 酵素活性の低下(ミトコンドリアでのエネルギー合成の障害)
  • 老化の亢進(シミ、シワ、ソバカス)
  • 卵巣の細胞へのダメージによる女性ホルモンの分泌異常
  • がん細胞の発生
  • 動脈硬化
  • 白内障
  • 関節炎
  • 認知症
  • 寿命の短縮

上記に加え、活性酸素が細胞膜の不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)を酸化させて、過酸化脂質(LOOH)を発生させます。そして、過酸化脂質は、細胞や組織を破壊しながら、老化色素であるリボフスチンを作り、細胞の働きを低下させるといわれています。

体が活性酸素を処理しきれずに、防御機構が弱まってしまうと、様々な不調や病気を引き起こし、死を招く危険性すらあります。

ビタミンCの抗酸化メカニズム

ビタミンCには、酸化を抑制したり、免疫力を強化したり、コラーゲンの生成を促進したりする働きがあります。

ビタミンCには、様々な効果や効能がありますが、ここでは、ビタミンCの抗酸化作用にフォーカスを当てて見ていくことにしましょう。ビタミンCの要点を一言で表現すると「体のサビを取り除いてくれる」ということができます。

ビタミンCの抗酸化作用は、他の物質に電子や水素を引き渡すことで発揮されます。

ビタミンCから分離した電子や水素は、他の物質と結合します。ビタミンCから電子や水素を受け取った物質は還元されます。ビタミンCは、活性酸素に自らの電子や水素を受け渡すことで、活性酸素を還元して無害な状態にします。

このとき、活性酸素や他の物質に電子や水素を与えることで酸化したビタミンC は、酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)に変化します。

デヒドロアスコルビン酸は、すぐに体内で還元されるため、無毒化されます。そのため、デヒドロアスコルビン酸は体に影響を及ぼさず、最終的には無害な物質となって体の外で排せつされます。

ビタミンCはビタミンEの再生に一役買っている

抗酸化物質には、ビタミンCや尿酸などの「水に溶けやすい性質を持った水溶性の物質」とビタミンEやCoQ10(ユビキノール)などの「油に溶けやすい性質を持った脂溶性の物質」があります。

このうち、脂溶性のビタミンであるビタミンEは、活性酸素と反応して、活性酸素を無害な物質に変える働きがあります。

反応を終えたビタミンEは酸化されてしまうため、活性酸素を消去する能力を失ってしまいます。

このとき、ビタミンCは、酸化されたビタミンEを還元してくれます。ビタミンCが酸化されたビタミンEに水素(H)を引き渡すことで、ビタミンEを再生して、抗酸化能力を発揮させるようにしてくれます。

ビタミンEに水素を引き渡して酸化されたビタミンCは、抗酸化物質としての力を失います。そして、無害な物質となって、体の外に排出されます。

水溶性であるビタミンCは、脂溶性であるビタミンEの機能を回復する役目を担っています。ビタミンCは細胞膜を構成する脂質部分に存在して、抗酸化を行うビタミンEの再生を間接的にサポートしています。


ビタミンCによるビタミンEの還元作用
細胞膜に発生した脂質カジカルの消去

細胞膜における脂質ラジカルの消去系

加齢に伴い抗酸化力は衰える

生体に備わっている抗酸化能力は加齢と共に低下することが知られています。生活習慣病やがん、動脈硬化が中高年以上の人に多く発症するのはそのためだとされています。

こうした背景から、年齢を重ねても体内の酸化を食い止めることができるように、ビタミンCをはじめとした「抗酸化作用のある栄養素」を用いることが望ましいと考えられています。抗酸化作用がある栄養素として、下記があります。

  • ビタミンC
  • ビタミンE
  • カテキン
  • CoQ10(ユビキノール)
  • 亜鉛
  • マンガン
  • セルロプラスミン
  • ポリフェノール
  • フラボノイド

過酸化水素によるがん細胞のアポトーシスへの誘導

ビタミンCには、他の物質を還元させ、自らを酸化させることで、体内にとって好ましくない物質を無毒化することは先に触れたとおりです。

また、ビタミンCは高濃度を投与すると、体内で過酸化水素(H2O2)を発生させます。この作用を利用して、ビタミンCのサプリメントや高濃度ビタミンC点滴を用いることで、がん予防やがん症状の改善が試みられる場合があります。

ビタミンCの血中濃度を350-400mg/dl付近に近づけることで、ビタミンCは過酸化水素を発生させ、がん細胞のみを攻撃することが示されています。

こうしたビタミンCの働きを、プロドラッグといいます。プロドラッグとは、体の中で物質が代謝されることで効果を発揮する薬理作用を持った物質をいいます。プロドラックは生体で代謝されない(化学反応を受けない)と、薬としての作用をもたらしません。

上記を踏まえると、ビタミンCを高濃度で投与することで得られる効果は、2つの側面から捉えることができるといえます。

1. 高濃度ビタミンCによる抗酸化療法
・活性酸素(フリーラジカル)を消去する

2. 高濃度ビタミンCによる酸化療法
・過酸化水素(H2O2)によるがん細胞の殺傷

高濃度のアスコルビン酸から生成された過酸化水素ががん細胞をアポトーシスへと誘導するしくみ

Qi Chenらによる研究では、マウスを用いた実験から、濃度のビタミンC(薬理作用を持つレベル)が投与されると、ビタミンC(アスコルビン酸)はガン細胞の間質に「アスコルビン酸ラジカル」と「過酸化水素(H2O2)」を生成していたことが示されています。
Ascorbate in pharmacologic concentrations selectively generates ascorbate radical and hydrogen peroxide in extracellular fluid in vivo

上記文献では、「アスコルビン酸から失われた電子は、タンパク質を構造体の中心にもつ金属分子を還元し、細胞外液中の過酸化水素を促進する」としています。

また、Qi Chenらによる他の研究からは、アスコルビン酸は、微量血清タンパク質中では細胞外培地中で検出可能なレベルの過酸化水素(H2O2)を生成するが、全血では生成しないとしています。
Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: Action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues

正常細胞(血液中)には細胞内にカタラーゼが豊富にあるため、過酸化水素が発生しても「水」と「酸素」に分解することができます。カタラーゼとは、過酸化水素を「酸素」と「水」に分解する化学反応を触媒する酵素のことです。

一方で、がん細胞には正常細胞に比べてわずかしかカタラーゼが存在しません。そのため、過酸化水素を分解することができません。よって、過酸化水素ががん細胞のミトコンドリアやエネルギーの合成システムに何らかの影響を与え、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導すると考えられています。

この仕組みを図に示します。

ビタミンCの真実およびVitamin C: A Concentration-Function Approach Yields Pharmacology and Therapeutic Discoveriesより引用・一部改編

ビタミンCは酸化されると電子 (e-)をひとつ失って、「モノデヒドロアスコルビン酸ラジカル」へと変化します。

ビタミンCから放出された電子(e-)は、遷移金属(せんいきんぞく)であるFe3+を還元 してFe2+にします。還元されたFe2+は、酸素に電子(e-)を与える供与体(きょうよたい)として作用します。

その結果、スーパーオキシドラジカル (・O2- )が生成されます。スーパーオキシドラジカルは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)により過酸化水素 (H2O2)に変わります。

血液中で生じた過酸化水素 (H2O2)は、血液中に存在するグルタチオンペルオキシダーゼにより無害な物質へと変えられます。グルタチオンペルオキシダーゼには、過酸化水素や過酸化脂質を水やアルコール、酸化型グルタチオンへと分解する働きがあります。

高濃度ビタミンC点滴によって血液中のビタミンC濃度が高くなると、がんの腫瘍がある細胞の間質液にも高濃度のビタミンCが入り込むとされています。間質液中でビタミンCは酸化され、過酸化水素 (H2O2)を生成します。

間質液中で生成された過酸化水素 (H2O2)は、がん細胞の内部へと簡単にすり抜けます。腫瘍内に入ってきた過酸化水素は、まず直接腫瘍を攻撃します。

しかし、ガン細胞はカタラーゼなどが欠乏していることが多いため、過酸化水素を中和し、無毒化することができません。その結果、がん細胞のDNAや解糖系(かいとうけい)は破壊され、死に至る(アポトーシス)とされています。

また、腫瘍内に入ってきた過酸化水素は、腫瘍内に存在する(2価)鉄とフェントン反応を起こして、ヒドロキシラジカル(OH・)を作ります。ヒドロキシラジカル(OH・)も、がん腫瘍を攻撃すると考えられています。

詳細は、がん治療に対する高濃度ビタミンC点滴を参照下さい。

活性酸素を除去する酵素の働き

スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼが活性酸素種を無害化する流れを下記に示します。

  1. スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、スーパーオキシドラジカルを酸素と過酸化水素 (H2O2)に変える。
  2. カタラーゼは、過酸化水素を酸素と水に分解する。
  3. グルタチオンペルオキシダーゼは、過酸化水素 (H2O2)や過酸化脂質を水やアルコール、酸化型グルタチオンへと分解する。

糖尿病とデヒドロアスコルビン酸

ビタミンCは、他の物質を還元する還元剤(かんげんざい)として機能します。他の物質に電子や水素を与えたのち、ビタミンCは酸化型ビタミンCに変化します。

酸化したビタミンC は、デヒドロアスコルビン酸(DHA)と呼ばれ、無害な物質となって排泄されます。

あるいは、グルコース輸送体を介して細胞の中にある小胞体(しょうほうたい)に器官に運ばれ、そこで還元されて、再びビタミンC(アスコルビン酸)に戻され、体内で様々な役割を果たします。

ビタミンCは、私たちの体内で化学変化を受けると、多様な化学構造に変化します。ビタミンCは、アスコルビン酸、モノデヒドロアスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸などの物質になります。

これらの物質は、酸化されたり、還元されたりを繰り返して元のアスコルビン酸の化学構造に戻ることができます。これを、可逆的(かぎゃくてき)な酸化還元システムと言います。可逆的とは、「元の状態に戻れること」を意味します。

デヒドロアスコルビン酸還元酵素(DHAR)は、他の物質に水素を与えてくれる(水素供与体:すいそきょうよたい)であるグルタチオン(GSH) と化学反応を起し、デヒドロアスコルビン酸をアスコルビン酸に還元します。

デヒドロアスコルビン酸還元酵素とグルタチオンの反応

2DHA + 2GSH → 2HA‐ + GSSG

アスコルビン酸の可逆的酸化還元

インスリン抵抗性によるデヒドロアスコルビン酸の細胞内取り込みの影響

デヒドロアスコルビン酸が、アスコルビン酸(ビタミンC)に還元されるのは細胞内で行われます。

デヒドロアスコルビン酸還元酵素は、様々な組織に存在しています。デヒドロアスコルビン酸を還元する際に重要な因子となるのが、インスリングルコーストランスポーター(グルコース輸送体)です。

食事などから糖質やビタミンCを摂取して血中の濃度が上昇すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されますインスリンは細胞膜の上に突き出ているインスリン受容体(じゅようたい)に結合します。

インスリンがインスリン受容体に結合したことを合図に、グルコーストランスポーターが細胞内部から細胞膜の表面に移動してきます。

デヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)とグルコース(ブドウ糖)は化学構造がとてもよく似ています。したがって、デヒドロアスコルビン酸とグルコースは、共にグルコーストランスポーターを介して細胞内に入り込んでいきます。

グルコーストランスポーターは数に限りがあるので、デヒドロアスコルビン酸とグルコースは輸送体を奪い合いますが、グルコースがデヒドロアスコルビン酸に優先して細胞内に取り込まれます。

慢性的に血糖が高くなっている糖尿病の人や糖質を多く摂取する食生活を送っている人では、インスリン抵抗性によってグルコーストランスポーターが不活化してしまう可能性が高くなります。

また、インスリン抵抗性によって、インスリンの効きが弱くなるため、細胞内にデヒドロアスコルビン酸を取り込むことが難しくなります。

血糖が高い(グルコースが多い)と酸化型ビタミンCが取り込まれなくなる

生田哲 ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く より引用・一部改編

デヒドロアスコルビン酸を細胞内に取り込んで、ビタミンCに還元することができなければ、体はビタミンC不足に陥ってしまい、抗酸化力は低下します。その結果、神経障害やED(勃起不全)、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)、白内障、腎臓病、壊疽(えそ)などが生じてしまいます。

健康な人からは、デヒドロアスコルビン酸はほとんど検出されませんが、糖尿病の人からはデヒドロアスコルビン酸が検出されることがわかっています。

この背景には、糖尿病の人では、食事から摂取したデヒドロアスコルビン酸や体内で生じたデヒドロアスコルビン酸を、正常に還元することができないからだと考えられています。

前述したように、デヒドロアスコルビン酸はグルコースと輸送体を共有しています。そのため、糖尿病の人ではグルコース(ブドウ糖)が過剰になっており、デヒドロアスコルビン酸を細胞内に取り込むのに不具合が生じています。そのため、糖尿病の人は、血中にデヒドロアスコルビン酸が残ってしまいます。

また、糖尿病の人は血中ビタミンC濃度が低い一方で、デヒドロアスコルビン酸濃度は高いことが指摘されています。

糖尿病の人は、デヒドロアスコルビン酸をビタミンCに効率的に還元することができず、血中にデヒドロアスコルビン酸が多く存在しています。

加えて、糖尿病の人や高血糖の人は、タンパク質の糖化(とうか:グリケーション)が進んでいます。糖化とは、体を構成するタンパク質が余分な糖と結合して、タンパク質が変性してしまう状態をいいます。

糖化が進むと、活性酸素が多量に発生します。血糖が高い人が抗酸化作用を狙ってビタミンCを摂取する場合、糖質を多く含んだ食べ物を控えるなどの工夫が必要です。

糖尿病の人が高濃度ビタミンC点滴を受ける場合

糖尿病の人や血糖が高い人が、治療のために高濃度ビタミンC点滴を行うと、浸透圧利尿(しんとうあつりにょう)が加速し、脱水症状になることがあります。

浸透圧利尿とは、高血糖により血液の浸透圧が高くなったため、組織から血管の内部に水分が移動して血液の量が増えた結果、尿の量が増加したり、高濃度のビタミンCやブドウ糖が尿細管に排泄された際に腎臓が水分を再吸収できなくなり水分排泄が多くなる現象のことを言います。

そのため、糖尿病の人がビタミンC点滴を受ける際は、血糖値が安定している時が望ましいとされています。

また、ブドウ糖(グルコース)とビタミンC(アスコルビン酸)は化学構造が似ています。そのため、体はブドウ糖とビタミンCを判別することができず、血中のブドウ糖の濃度が上昇したと勘違いすることがあります。

こうした状態で血糖を測定すると、一部の血糖測定器(特に簡易型血糖測定器)では誤って高い血糖値が出る場合があります。そして、体は、血糖が上昇したと思い、インスリンが不必要に分泌されてしまうことがあります。その結果、低血糖状態になる場合があります。

糖尿病の人が高濃度ビタミンC点滴を行う場合は、予め主治医に相談しましょう。また、点滴のあとに血糖が急激に上昇した場合、正しい数値であるかどうか、主治医に確認するようにしましょう。

がんの人が高濃度ビタミンC点滴を受ける場合

がんの代替療法として高濃度ビタミンC点滴を行う場合があります。がんに対する高濃度ビタミンC点滴の応用については、下記の記事をご覧下さい。

ビタミンCが「がん細胞のみを選択的に抹消する機序」について解説しています。

高濃度ビタミンC点滴による副作用に関しても、ご紹介しています。参考にして下さい。

がん治療に対する高濃度ビタミンC点滴

分子整合栄養医学における高濃度ビタミンC点滴

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践するドクターの多くは、高濃度ビタミンC点滴を治療に取り入れています。

高濃度ビタミンC点滴は、「ビタミンC 静脈点滴」という意味の「Intravenous VitaminC」と表記されます。クリニックによっては、英語を略してIVC(アイヴィーシー)と表記したり、読んだりすることがあります。

高濃度ビタミンC点滴はアメリカでは、既に1万人を超える医師が、がんに対して導入しているとされています。国内で分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践するドクターは、ヒュー・リオルダンが設立したリオルダンクリニックのプロトコルに従って高濃度ビタミンC点滴を行うことが多いようです。

リオルダンクリニックから公表されている高濃度ビタミンC点滴のプロトコル(英文)はこちらをご覧下さい。

医療関係者向けのビタミンC点滴の学会

医師や歯科医師がビタミンC点滴の理論や手技を学ぶことができる学会があります。詳細は各学会の事務局にお問い合わせ下さい。

高濃度ビタミンC点滴療法学会
http://ivc-org.com/

点滴療法研究会
https://www.iv-therapy.org/

高濃度ビタミンC点滴マニュアル

高濃度ビタミンC点滴を点滴をクリニックに導入する際のマニュアル(プロトコル)が販売されています。医療関係者のみ購入することができます。詳細は、高濃度ビタミンC点滴療法学会にお問い合わせ下さい。

高濃度ビタミンC点滴に関する書籍

高濃度ビタミンC点滴に関して詳しく解説している書籍があります。生化学者や医師によってビタミンCの有効性やビタミンCを用いた治療例が紹介されています。下記の記事を参考にして下さい。

高濃度ビタミンC点滴に関する書籍

ビタミンCの働き・サプリメント

栄養素としてのビタミンCの働きや作用については下記の記事をご覧下さい。通販サイトで手軽に購入できるサプリメントも記載しています。

・栄養素のはたらき:ビタミンC
・分子整合栄養医学で使用するサプリメント:ビタミンC
ライナス・ポーリングとビタミンC
美容とビタミンC

監修:ナチュラルアートクリニック 御川安仁