歯科アマルガムが歯の中に入っている場合、患者のあなただけではなく、歯科医・衛生士・受付を含めた歯科スタッフ全員の安全が確保された状態で除去を行う必要があります。歯科アマルガムが歯に入っていたからといって、焦って無防備な状態のままで除去をすると、除去をしている最中に、目には見えない水銀の水蒸気や粒子が大量に飛び散って、治療している空間が高濃度の水銀で汚染されてしまいます。

そのため、水銀メーターやバキューム、ラバーダム、防護服などを用いて「安全なアマルガム除去」を行う必要があります。こうした措置は、あなたが健康被害を被るのを防ぐと共に、アマルガムを除去する歯科医師の安全を確保するための手段でもあります。

歯に詰められている金属がアマルガムかどうかを確認する

あなたの歯に詰められている金属の物質がアマルガムかどうかを確認するには、「安全なアマルガムの除去」を行っている歯科医院を受診しましょう。「安全なアマルガムの除去」を行っている歯科医院には水銀ガスメーターと呼ばれる機材が置いてあります。

水銀ガスメーターは、水銀の濃度を測定するための機械です。工業用製品として販売されているものを、歯科医院で利用できるよに改良しています。この機械の先端を歯の詰め物に接触させ、金属がアマルガムであるかどうかを確認します。歯の詰め物がアマルガム(水銀)であった場合、ガスメーターは水銀から放出されている水銀ガスを感知し、水銀の濃度を画面に表示します。

「安全なアマルガムを除去」を掲げている歯科医院の中で、より安全な除去を行う歯科医院には必ずこの水銀ガスメーターが置いてあります。なぜなら、この機械がなければ、歯科医師でも「歯科アマルガムと他の金属を判別することが難しい」場合があるからです。

歯科アマルガムを除去する場合は、受診しようとしている歯科医院に、水銀ガスメーターが設置されているか事前に確認するようにしましょう。(日本で水銀ガスメーターが設置されている歯科医院は、現状50件に満たないです。)

そして、可能ならば「水銀ガスメーター」が設置されている歯科医院で安全に除去することをお勧めします。

アマルガムを用いた水銀ガスメーター(水銀計測器)の動画

千葉県にある「あおい歯科クリニック」の澁谷仁志先生が、水銀ガスメーターのデモンストレーションを行っています。

安全にアマルガムを除去する際の防護服

歯科アマルガムを安全に除去するためには、使い捨てタイプの防護服やマスク、ゴム手袋、ラバーダムなどが必要です。また、歯科アマルガムを削っている最中に患者が水銀にばく露しないように、全身を覆う必要があります。

日本の歯科医が取り入れている安全な歯科アマルガムの手法は、「ハル・ハギンス」または「IAOMT(国際口腔毒物学会)のプロトコルを踏襲しているようです。IAOMTが推奨する安全なアマルガム除去法はこちらをご覧下さい。

アマルガム除去の費用と含まれるサービス

安全なアマルガム除去は、基本的に自費診療になります。除去費用は、歯科クリニックによって異なります。歯科アマルガムを除去する平均的なコストは、1本あたり15,000円から20,000円です。(歯科アマルガムを除去した後に詰める他の材料費や型代、治療代は含まれません。)

この価格は、単純に歯科アマルガムを除去するだけの場合もあれば、高濃度ビタミンC点滴やサプリメントなどの、付帯サービスが含まれた価格の場合もあります。詳細は各クリニックに問い合わせをしましょう。

アマルガムを除去したら病気は治るのか

歯科アマルガムに含まれる水銀が人体に及ぶものには、慢性的な体調不良から生命を脅かすものまで様々な病気があります。

安全なアマルガム除去を推進している医師や歯科医師が治療にあたった患者の中には、アマルガムを除去したことで病気が改善できて人がいることが数多く報告されています。

その例として、関節リウマチやうつ病、慢性疲労、消化不良、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、不妊、頭のモヤモヤが晴れるなどがあります。

患者の中には、アマルガムを安全に除去した直後から、気分が爽快になったり、体が軽くなったり、頭が冴えてきて視界がクリアになったりする人がいます。

しかし、治療の効果が顕著に表れる人がいる一方で、除去してからしばらくの間は体調が回復しない人がいることも事実です。 また、歯科アマルガムの除去中は、どれだけ厳重な防御対策を行っていたとしても、少なからずアマルガムから水銀が漏れ出て、体内に侵入してしまいます。

このとき、免疫力や抵抗力が弱かったり、水銀を解毒する力が低かったりすると、アマルガムを除去して数日間は、体調が悪化してしまう場合があるかもしれません。こうしたことは「個人差」があるために、どうしても仕方のないことです。

歯科アマルガムを何年も歯に入れたままでも健康的に暮らしている人もいれば、歯科アマルガムが原因で大きな病気になったり、体調不良になったりする人もいます。

歯科アマルガムを外したことで、あなたが抱えている病気が治るかどうかを100%保証することはできません。

誰しもが、アマルガム除去したあとに、一晩で病気が治って欲しいと願うのは当然でしょう。しかし、そのような奇跡に過度な期待を寄せると、大きな失意を招く結果になってしまうかもしれません。

歯科アマルガムを除去したからといって、すべての患者の体調が良い方向に変化するとは限りません。焦りや不安の気持ちが、治療を続ける大きな障壁になってしまいます。

特に、症状が重い人では、歯科アマルガムを除去したのちに、さらに解毒のプログラムやキレーション療法を実施する場合があります。

水銀が解毒され始めると、今まで水銀の影に隠れていた有害金属(カドミニウムや鉛など)が排せつされ始めることがあります。そのため、歯科アマルガムを除去しても症状が改善されない場合には、別の金属の排せつを試みたり、遺伝子異常など、別の観点からの治療に進む場合ことを検討したりします。

アマルガム除去による病気の改善は、臨床と研究結果から数多く報告されているものの、「何事にも絶対は無い」という、冷静かつ客観的に捉えることが必要です。

  • あなたが抱える病気の原因は歯科アマルガム(水銀中毒)ではなかった
  • 水銀以外の重金属が病気の原因かもしれない
  • 金属以外の問題が、病気の原因かかもしれない

上記の可能性があることを念頭に置きつつ、歯科医や内科医と積極的なコミュニケーションをとることで、歯科アマルガムを除去することのメリットとデメリットを理解するようにしましょう。

歯科アマルガムが人体にとって有害だと結論づける決定的な証拠は得られていないのが現状であり、米国や日本の医師会でも、歯科アマルガムが危険物質だとのコンセンサスは得られていません。

しかし、「怪しいものは使いたくない、人体に影響を及ぼす可能性のある物質を除去したい」とあなたが感じるのであれば、安全な歯科アマルガムを考慮しても良いのではないでしょうか。

水銀などの有害金属を排せつ能力が生まれつき弱い人がいる

歯科アマルガムや大型魚、その他の化学製品の使用によって体内に水銀が入り込んでしまった場合、体内に蓄積された水銀はふん便や尿、髪の毛、汗などから排せつされます。しかし、水銀を体の外へと自然に排せつする能力は個人によって大きく異なります。

体内にある有害物は主に肝臓や腎臓で無害な物質へと変えられますが、肝臓や腎臓に障害がある人では、水銀などの有害金属を解毒する力が弱くなっています。

さらに、腸内環境が悪く、便秘や下痢などを繰り返している人では、体内で生じた老廃物をすみやかに捨てることができません。腸の機能が低下いていることも、水銀の排せつを妨げる要因になります。

水銀や鉛、アルミニウムなどの有害金属を排せつする力を見ているのが、毛髪メタル検査尿中メタル検査などです。

毛髪メタル検査や尿中メタル検査では、体内に有害な金属がどのくらい蓄積されているかを推察すると共に、自力でそうした金属を排せつする力があるかどうかも確認します。

歯科アマルガムが詰められていたり、歯科業務に従事いていたり、日常的にお寿司や魚料理をたくさん食べていたりするにも関わらず、検査結果で水銀の数値が低く出た場合は、「体内に溜まっている水銀は少ない」と読み取るのではなく、「水銀が体内蓄積されているにも関わらず、自分の力で排せつすることができていない」と解釈することが多いです。

具体的な検査の読み方や解析の方法に関しては、主治医の先生に相談してみましょう。

自分で毛髪メタル検査の読み方を学びたいという人は、下記の動画教材で勉強してみましょう。実際の症例も紹介されていますので、あなたが抱える症状や検査結果と照らし合わせながら、詳しい内容を学ぶことができます。

血液検査・毛髪ミネラル検査徹底解析セミナー
腸内環境とミネラルを制する者が栄養療法を制す。

また、下記は、アメリカで歯科アマルガムの危険性を訴えている団体IAOMT(国際口腔毒物学会)によるオンライン教材です。

IAOMTによるアマルガム除去法 (無料)
歯科アマルガムの基礎知識

IAOMT 基本コース 歯科アマルガム1  (有料)
バイオロジカルデンティストに必須の基礎知識を網羅。

キレーション治療の理論と実際の症例
医科や歯科のドクター向けに、DMPS、EDTA、グルタチオンを用いた点滴キレーションのプロトコルを紹介。
金属中毒に対するキレーション療法の理論と実践が学べます。

歯科医師が最も被害を受けている歯科アマルガムの危険性

歯科アマルガムの危険性は、これまで患者からアマルガムを取り除いてきた歯科医師に最も及ぶとされています。

特に、アマルガムの危険性について知らされず、重大なものとして認識してこなかった歯科医は、無防備な状態で患者の歯からアマルガムを削り出してきた可能性が高いです。

歯科アマルガムは、削り出すときに、目には見えない微粒子や蒸気となって部屋中を水銀で満たします。そして、水銀の粒子は医院全体に飛び散ります。歯科医と患者がいる治療室から、壁を隔てた受付までに、水銀が到達することが確認されています。 

歯科アマルガムの除去は、治療を受ける患者と同様に、治療する側の医師や補助スタッフが危険にさらされている状態となります。そのため、歯科アマルガムを除去する際には、防護服やマスク、手袋の着用が必要です。また、部屋中に飛散した水銀を吸い取るためのバキュームや水銀吸収クリームを使うことも忘れずに行います。

治療中は完全に部屋を遮断し、水銀が他の治療室や受付、待ち合い室、スタッフの休憩スペースなどに運ばれないようにします。特に、歯科医院は女性が多く働く場所です。

先にも述べたとおり、水銀は不妊や流産、奇形といったリスクを高める有害物質であるため、治療にあたる医師以外に、女性スタッフ全員の安全が確保できる環境を整えることが大切です。 

水銀にまつわる歯科医の健康不良

シンガポールで実施された研究では、歯科医は一般人と比較して、運動速度、視覚走査、視覚運動協調動作、視覚運動協調速度、集中力、言語記憶、視覚記憶が劣ることが示されています。

また、水銀中毒によるものとして、アメリカの歯科医療関係者には、下記の症状を訴える人が多いことが報告されています。

  1. 唾液の過剰分泌、不眠、食欲減退
  2. 気分の急変、イライラ、疲労、興味関心の薄れ、引きこもり、発汗、赤面
  3. 協調動作不全、平衡異常、運動失調、震え
  4. 記憶、論理的思考、知能など精神的能力の衰退進行

口の中に潜む恐怖―アマルガム水銀中毒からの生還より

歯科医の水銀被ばくの状況を示す毛髪検査

何十年と歯科治療に携わってきた歯科医の中には、過去に歯科アマルガムを無防備な状態で削ったり、外したりしてきた経験がある人がいます。歯科アマルガムは既に過去の材料としてほぼ姿を消したとはいえ、年代によっては、大昔に患者の口に歯科アマルガムを日常的に詰めていた人は多いでしょう。

下記に示す毛髪メタル検査は、歯科医の検査結果です。水銀が突出して高く検出されていることが分かります。歯科医が毛髪メタル検査を行うと、水銀が高く出る傾向があります。

水銀が高く検出されたからといって、必ずしも病気になるとは限りません。高濃度の水銀が体内に蓄積されていたとしても、人によって健康状態は異なります。

水銀が高い値であったとしても、健康に暮らしている人もいれば、長年にわたって体調不良を訴えている人もいれば、肉体的・精神的に大きなな病を抱えている人もいます。

あなたが歯科医だった場合「職業被ばく」の元凶である水銀とどう向き合い、「自分の健康」と「患者の健康」を守るためにどんな行動をとっていくかは、あなた自身に委ねられています。

監修:あおい歯科クリニック 澁谷 仁志