歯科アマルガムとは、歯に詰められている金属のことです。歯科アマルガムは1世紀以上にわたって歯の治療に用いられてきた材料です。アマルガムが扱いやすい上に虫歯ができにくいという利点があり、しかも、安価であるため、歯科治療の場で重宝されてきました。

しかし、歯科アマルガムには「水銀」が入っているために、歯の詰め物から蒸発したり、溶けだしたりした水銀が体内に侵入し、様々な病気を引き起こすとが知られています。

水銀は、1956年に熊本県で発生した「水俣病(みなまたびょう)」の原因物質(メチル水銀)です。水銀は体内に入ると神経毒となり、運動機能や視力、発話、感覚に問題が生じ、体のバランスを取ることが難しくなったり、体の震えがとまらなくなったりするようになります。人によっては、思考力や記憶力が低下したり、情緒が不安定になったりする場合があります。

歯科アマルガムに関しては、歯科医の間でもその取扱いや安全性に対して見解に相違があります。歯科アマルガムを危険物質として捉えている歯科医がいる一方で、歯に詰められているアマルガムは安全だと考える歯科医がいます。

分子整合栄養医学を実践している医師や歯科医師の中には、歯科アマルガムの危険性を強く認識している医師たちが数多く存在します。患者が訴える体調不良や病気の原因は、歯科アマルガムによる「金属中毒」や「脳神経細胞の破壊」という考えのもとで、安全に歯科アマルガムを除去することを勧めています。

ここでは歯科アマルガムについて詳しくみていくことにします。

もし、あなたの口の中に黒ずんだ金属の詰め物がある場合には、歯科アマルガムの可能性を疑ってみて下さい。歯科アマルガムがもとで原因不明の体調不良に悩まされてきた人が、安全な方法でアマルガムを除去したことで、体調が大きく改善した例が国内で報告されています。

分子整合栄養医学の治療の一環として、口腔内の健康状態を確かめてみたいという人は参考にして下さい。

歯科アマルガムとは?

歯科アマルガムとは、歯を治療する際に使われる金属製の「詰め物」の一種です。アマルガムの正式名称は「歯科用水銀アマルガム」といいます。

歯科用アマルガムは、様々な種類の金属が混ざり合った「合金(ごうきん)」からできています。アマルガムに関して書かれた書籍によると、歯科アマルガムに使われる金属の割合は、水銀40~50%、銀35%、錫9%、銅6%、微量の亜鉛とされています。

アマルガムの歴史は古く、歯科業界では何十年も歯の詰め物として利用されてきました。歯科アマルガムは1970年代をピークに、米国をはじめ、日本国内でも一般的な歯科治療用の充填材(じゅうてんざい)として利用されてきました。充填剤とは、虫歯の治療のために削った歯の穴に詰める材料のことです。

歯科アマルガムには「水銀」が含まれています。その水銀が様々な健康被害をもたらしていることから、ドイツやイギリス、スウェーデンでは既に使用が禁止されています。日本では、2016年4月の保険制度の改正により、アマルガムは保険診療の対象から外れました。 

日本における歯科アマルガムを用いた治療は、1970年代以降は減少しており、2000年代に入ってからは、歯の治療で歯科アマルガムを用いている歯科医院はほぼなくなりつつあります。

2000年代に歯学部の学生だった世代の中には、大学の実習で「歯科アマルガムを用いた治療法」を習ったことがない人たちが増えるようになり、歯科アマルガムは段々と姿を消そうとしています。こうした若い世代の歯科医師たちの中は、アマルガム合金の生成方法やアマルガムを用いた詰め物の経験が全くない人がいます。また、アマルガムが全身に及ぼす影響やリスクについて授業で習ったことがない人もいるようです。

現在では、歯科の治療で使われることがほぼなくなったアマルガムですが、1970年代頃までは歯の治療に頻繁に利用されていました。そのため、現在40歳以上の世代の人では、口の中に詰められている金属が、歯科アマルガムである可能性があるかもしれません。 

また、「既に歯の中に詰められている歯科アマルガム」が人体にどのような悪影響を及ぼすかを理解している歯科医師や一般人は少ないです。加えて、歯に詰められている金属がアマルガムかどうかを正確に見極め、安全に除去するための豊富な経験を持っている歯科医の数も限られています。 

分子整合栄養医学を実践する歯科医や内科医の中には、歯科アマルガムの危険性を強く認識している人がいます。そのため、問診やカウンセリングの際に、患者の歯の中に金属の詰め物が無いかを確認している医療機関があります。

病気や体調不良の原因が歯科アマルガムだとする根拠は、米国で発表された論文や臨床レポートによって支えられていています。

米国ではIAOMT(国際口腔毒物学会)という学会組織があり、ここでは歯科アマルガムが体に及ぼす影響について、様々な科学的エビデンスをもとに啓蒙活動を行っています。歯科医が集う年次総会では、アマルガムを除去した患者の症例を報告しています。また、アマルガムに関する文献のデータベースの構築や安全にアマルガムを除去するためのプロトコルを提供しています。

しかし、先に述べたように、歯科アマルガムに対する考え方は歯科医師によって異なります。歯科アマルガムを無害で安全な物質だと捉える歯科医師からは「アマルガムの使用は病気との明確な関連性がなく、危険性を証明するエビデンスに乏しい」という意見が寄せられています。

アマルガムに含まれる水銀の化学的性質

歯科アマルガムに含まれる水銀は英語でMercury(マーキュリー)やQuicksilver(クイックシルバー)といいます。「水銀の詰め物」を表す言葉として、「Mercury Fillings」という表現が頻繁に使われます。

歯科アマルガムの化合物に最も多く含まれる水銀ですが、水銀には数多くの種類があります。

有機水銀 炭素と水銀が結合した化合物
無機水銀 水銀蒸気や水銀塩、水銀イオン化合物
メチル水銀 メチル化された有機水銀(水俣病の原因物質)
エチル水銀 エチル化された有機水銀(ワクチンの防腐剤として使用:チメロサール)

水銀は自然界にも存在します。辰砂(しんしゃ)と呼ばれる鉱石として、鉱山から発掘することができます。

辰砂は水銀と硫黄が結合した硫化水銀(りゅうかすいぎん)が主な成分です。硫化物(HgS)の状態でも目にすることができます。硫化水素は水に溶けにくい性質を持っているため、赤色を出す香料として神社の鳥居を塗ったり、古墳(こふん)を装飾したりする際に用いられました。

辰砂

身近なところにある水銀製品として、昔よく使われていた赤チン(マーキュロクロム液)があります。また、水銀式血圧計、水銀式体温計などに水銀は用いられています。加えて、水銀はボタン電池や消毒薬、クリーナー、医薬品、化粧品、農薬、蛍光灯に含まれていることがあります。

無機水銀はより毒性の強い有機水銀へと変わる

歯科アマルガムに使用されるのは無機水銀です。歯科治療で使われる無機水銀は「人体に害はない」と認識されています。しかし、実際には、歯に詰められたアマルガムが、口の中で溶けだして、体内に入ってしまいます。また、歯磨きによる摩擦でアマルガムが口の中で気化したり、コーヒーなどの熱い温度のものを飲んだり、食べたりすることによってアマルガムが溶けだして、体内に侵入します。

無機水銀はビタミンB12など、天然に存在する物質と化学反応を起こして有機水銀に変化します。ヒトの腸管では、腸内細菌によってビタミンB12が作られているため、無機水銀は腸内に入ると、簡単に有機水銀に変化すると考えられています。有機水銀は農薬や工業製品に含まれています。

また、無機水銀は、口の中にいるストレプトコッカス・ミュータンス菌によってメチル水銀(有機水銀)に変えらることが分かっています。

有機水銀は無機水銀と比較して毒性が大変強い物質です。有機水銀は脂溶性(しようせい:油に溶けやすい性質)を持っています。そのため、ヒトの体内でアミノ酸のひとつである「システイン(Cys)」 に結合すると腸管の壁から吸収され、リンパ液を経由して腎臓や肝臓に蓄積されることが知られています。

脳のバリア機構である血液脳関門(けつえきのうかんもん:BBB)を通過するため、脳に到達して神経障害を引き起こします。

また、有機水銀は胎盤も通過するため、妊娠中の母親から血液を介して胎児に水銀が移行します。すると、発達障害を引き起こす可能性が高くなる場合があります。特に、胎児の発育中の脳はメチル水銀に対する感受性が高くなります。

厚生労働省は、妊婦している女性に対し、水銀を含んでいる可能性のある魚類を摂取する際には、量を控えるべきと注意を促しています。これからママになるあなたへ – 厚生労働省

歯科用アマルガムの体内への侵入経路

口の中で溶けだしたり、蒸気になったり、気化した水銀は、体内に侵入し、様々な臓器へと到達します。

歯科アマルガムが詰められていると尿中や血中の水銀レベルは高くなる

尿中の水銀中毒レベル

0.0~2.0 ppb 健常者レベル
2.01~14.9 ppb 軽度水銀中毒
15.0ppb以上 重度水銀中毒

※ppbは十億分の1を意味する単位(十億分率)。大気中の大気汚染物質の濃度を示す単位として用いられる
口の中に潜む恐怖―アマルガム水銀中毒からの生還より

歯科アマルガムが溶けだして体内に入る動画

口の中に詰められている歯科アマルガムが擦られたり、高い温度にさらされることによって蒸発する様子が確認できます。

スモーキング・ティース

口の中に電流が流れる(カルバニー電流)

歯の中に金属が詰められていると、口の中に電流が流れることが知られています。これを口腔内ガルバニ電流といいます。 口の中で発生した電流は、既に詰められている水銀を蒸気として放出するように、体内の化学反応を促進すると考えられています。

口の中で発生した電流が脳に向かった場合、脳障害をはじめとした、様々な体調不良が引き起こされることが懸念されています。

IAOMT(国際口腔毒物学会)が製作した金属の電流実験では、ジャガイモを用いて、アマルガムが口の中で電流を流す様子を検証した様子が確認できます。

ポテトクロック-歯の中に詰められている金属が時計を動かす

監修:桜川歯科医院 石川佳和