■細胞膜の働き
細胞膜は脂質という油の成分でできているため、私たちの細胞は柔軟性・流動性に富んだ性質を持っている

細胞膜は脂質、タンパク質、コレステロール、糖から成り、特に膜の大部分を占める脂質はリン脂質から成っている

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このリン脂質には、
・水に馴染みやすい頭部(親水性)
・水に馴染みにくい尾部(疎水性)
があり、それぞれの性質は親水性と疎水性と呼ばれている

水に馴染みやすい親水性の部分が、細胞の外と内側にある液体部分の方向を向くため、細胞膜は二重の構造を取る

これを「リン脂質二重層」と言い、このお陰で細胞の内側と外側がきちんと仕切られている

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細胞膜は固い物質で完全に遮断されている訳でなはく、
このリン脂質で形成された柔らかい膜の表面から、必要な物質が行き来したり、情報伝達されることで、私たちの体が正常に機能するようしっかりとコントロールされている

■細胞膜の役割
・内側と外側を仕切る(細胞の内部環境を一定に保つ)
・必要な物質の輸送を行う(選択的透過性)
・自己と非自己を区別する
・老廃物の排出
・細胞の外からの刺激に対する反応(受容体)
などがある

細胞が機能不全に陥っていたり、脂質で構成されている膜が酸化ストレスでダメージを受けていると、細胞の働きが悪くなって、
・元気が出なくなったり
・病気になりやすくなったり
・病気が中々治らずに長期化してしまったり
してしまうことに繋がる可能性がある

従って、栄養療法では、この細胞膜を強化したり、油の膜が酸化しないような手立てを施することで、ヒトが本来持つ自然治癒力を高め、生命活動に関わる能力を最大限に引き出すよう試みている


■多価不飽和脂肪酸とエイコサノイド
細胞膜は油であるリン脂質によってその殆どが構成されているが、
リン脂質を組成する脂肪酸は大きく分けて2種類ある

飽和脂肪酸不飽和脂肪酸

炭素が水素で飽和されて二重結合が無いものが飽和脂肪酸、
二重結合を持つものが不飽和脂肪酸だ

飽和脂肪酸とは、
バターやラード、生クリーム、チーズなどの、常温で個体になっているもの

不飽和脂肪酸とは、
魚油やオリーブオイル、ごま油などの常温で液体になっているもの
とざっくり覚えよう


不飽和脂肪酸のうち、二重結合を2個以上もつものを多価不飽和脂肪酸と言い、体内で合成できないため必須脂肪酸とされている

細胞膜が外部から何らかの刺激を受け取ると、細胞膜を構成するリン脂質から多価不飽和脂肪酸が切り出され、エイコサノイドという物質が合成される

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エイコサノイドとは、不飽和脂肪酸から作られる生理活性物質で、生体機能の調整する役割を持っている

エイコサノイドには、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンといった種類があり、炎症を誘発するものもあれば、炎症を抑制するもの、
血小板を凝集させたり、凝集抑制に働いたりと対立的に働く場合がある

ごく微量のみが合成され、作られた場所で作用し、すぐに消失するという特性を持っている(局所ホルモン的作用)

こうしたエイコサノイドの作用は
癌や動脈硬化、アレルギー、炎症に深く関与しているとされる



■エイコサノイドの代謝
細胞膜を構成する不飽和脂肪酸の種類によって合成されるエイコサノイドを表した代謝図だ

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オメガ6系脂肪酸であるリノール酸を食品から摂取すると、
γリノレン酸という物質に変わり、そこから更にジホモ‐γリノレン酸やアラキドン酸へと物質が体内で化学的に変化していく

ジホモ‐γリノレン酸やアラキドン酸からは、
プロスタグランジンのグループ1やグループ2に属する生理活性物質が作られる

一方、オメガ3系脂肪酸であるαリノレン酸から代謝されるEPAからはプロスタグランジンのグループ3のエイコサノイドが生成される

オメガ6系と3系の脂肪酸は互いに転換しあうことができず、
両者が持つ作用は互いに相反し合うので、オメガ3系と6系のバランスを取ることが重要だ

現代の食生活では往々にしてオメガ6系のアラキドン酸が多く含まれているため、
炎症を引き起こすエイコサノイドが過剰に生成されてしまう傾向が高く、
その結果、動脈硬化やガン、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、喘息、リウマチといった慢性疾患や生活習慣病が引き起こされると考えられている

■オメガ6系からオメガ3系が多い食事に移行
身体が過剰な炎症や免疫反応、血栓を生じさせないようにアラキドン酸有意な食事から、オメガ3系脂肪酸を積極的に摂る食事に切り替えましょうというのが栄養療法で支持されている考え方だ

栄養療法のみならず、最近流行りの健康的な食事療法でしきりに言われる
「良質の油を摂りましょう」
「オメガ3のオイルが身体にいいです」
「EPAで血液サラサラに!」
といった宣伝文句は、こうした炎症や血栓を抑制する効果を謳っているものが多い

また、オメガ3系脂肪酸は脳や神経組織の発育や機能の維持に欠かせない成分でもあるので、抗うつ作用や脳の活性化、記憶力の向上、認知症の予防にも効果的だとされている

「DHA,EPAを摂ると頭が良くなる」
というのはオメガ3系の脂肪酸が脳機能にも効果的であることを示している

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