長期にわたって続く便秘に悩んでいる人は、日本国内に500万人以上いると言われ、その数は年々増加する傾向にあります。便秘になるとお腹の張りや痛み、ガスだまり、体臭がきつくなるなど、本人にしか分からない辛い症状がいくつも生じます。

便秘になってしまう原因として、ライフスタイルの変化や偏った食生活、ストレスの蓄積などがあります。

この他に、女性の場合は、生理周期に伴うホルモンバランスの乱れによって便秘になる傾向が高くなります。男性の場合は、大便をするためにトイレの個室に入ることへの抵抗感が強くなることから、正常な便のリズムが狂い、便秘になる人が多いようです。

便秘を解消して毎日すっきりとした排便をするためには、普段の自分の生活を振り返り、どうして便秘になってしまったのかを考えてみましょう。

人によっては、慢性的な便秘が生じる背景に、大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)などの重い病気が関わっていることがあります。こうした場合には、いち早く病院を受診して、適切な治療を受けましょう。

その一方で、便秘になってしまう大半の要因は、偏った食事や精神的なストレス、水分摂取量の不足などです。このような問題は、食生活を改善し、ストレスをなるべく減らすような生活を送ることで改善することができる場合があります。

ここでは、便秘が長引いて治らない原因を探るべく、生活パターンや食事内容に焦点を当てていくことにします。日常生活の中で、便秘を解決するための対処を行うことで、辛い便秘から1日も早く解放されるようにしましょう。

便秘は腸の機能が低下して起こる病気

便秘とは「便が長い期間、大腸の中に留まり、排せつが正常に行われない」状態になることをいいます。

便秘の症状には個人差があり、医学的に便秘を診断する際の明確な定義は今のところないとされています。そうした中で、一般的には3,4日以上便通がない状態を便秘としていることが多いようです。便秘が重症になると、1ヶ月もの間、排便がないという人も存在します。

便秘の人がどうにか排便までこぎつけたとしても、肛門から便を出すために長時間いきんだりしなくてはいけません。排せつされた便は赤黒い色をしていたり、ポロポロとしたウサギのフンのように小さい形状をしていたりすることが多いです。排せつを終えても、まだ大腸に便が残っているような残便感(ざんべんかん)を覚える人もいます。

毎日決まった時間に快調な便通がないことや排便後の爽快感が得られないのは、腸の機能が低下していることが原因です。ここでは、まず腸の基本的な働きを理解し、腸の機能が低下することで便秘になる理由をみてくことにしましょう。

腸で栄養を消化・吸収し、老廃物を排便するしくみ

私が口から食べ物を食べると、食べ物は口から食道を通り、胃まで達します。胃では、消化酵素(しょうかこうそ)という「食べ物を分解する液体」によって、食べ物はドロドロとした「おかゆ」のような状態に分解されます。

次に、このドロドロした状態の食べ物は、小腸に届けられ、そこで体に吸収されやすい大きさへとさらに分解されます。分解された栄養素は体内に消化・吸収されます。

そして、大腸に移動した食べ物は再びそこで体内に吸収されます。その後、最終的に残った食べ物の残りカスから水分が抜き取られます。大腸で水分が抜き取られた食べ物の残りカスは、私たちの細胞の死骸や病原菌、老廃物などと共に、肛門から便として排せつされます。

つまり、腸は「食べ物から必要な栄養素を体内に取り込み、不要になったカスを老廃物と一緒に体の外に捨てる」という重要な働きを行っています。

口から摂取した食べ物を胃から腸、腸から肛門へと移動させているのが、腸のぜん動運動です。ぜん動運動とは、食べ物が胃腸に入ってきたことを合図に、腸の組織が伸びたり縮んだりすることで、栄養素の消化・吸収を進め、肛門まで運ぶことで老廃物を処理する働きのことです。

このぜん動運動が適切に機能していれば、毎日決まった時間に便通が起こりやすくなります。しかし、何らかの原因によって腸のぜん動運動に問題が生じると、小腸と大腸で栄養を素消化・吸収し、大便として排せつするサイクルが乱れます。その結果、何日もうんちがでない状態になり、便秘になってしまいます。

腸のぜん動運動が低下すると便秘になる

ぜん動運動が低下する理由に、極端な食事制限を行うダイエットや運動不足、性ホルモン、ストレスなどがあります。現代人の生活様式と照らし合わせてみると、こうした原因のいくつかは、誰にも思い当たることばかりだと思います。

ここではそれぞれについて簡単に説明していきます。自分にも心当たりがないか、考えてみて下さい。

量が少なすぎる食事や間違ったダイエット

減量を目的として食事の量を減らしたり、特定の食品だけを食べ続けたりするダイエットをすると、便秘になることがあります。単純に食事の量を減らせば、便の量も減ります。また、食事の量が少なかったり、特定の食品だけを食べ続けたりすると摂取する栄養に偏りができ、体を動かすための栄養素は不足します。

減量を目的としたダイエットに関しては、余分な糖質やカロリーを適度な量に減らしたり、短い期間に断食をすることで体内をリセットしたりすることは、安全や効果が期待できるでしょう。

しかし、自分の体質に合わないダイエットや極端に食品の摂取を制限する間違ったダイエットを行ってしまうと、タンパク質やミネラル、ビタミンなどの生命活動を支える栄養素は不足します。

全身の細胞に栄養が届かなくなるだけではなく、小腸や大腸もこの影響を受けるため、消化・吸収・排せつの能力が損なわれ、便秘になることがあります。

加えて、食品を制限するダイエットによって、食物繊維(しょくもつせんい)の摂取量が減ると、腸のぜん動運動の働きはさらに低下してしまいます。

食物繊維とは「人の消化酵素では消化・分解することができ食品成分」です。食物繊維の代表的なものは、海藻やこんにゃく、穀類、野菜、果物、豆などが挙げられます。

食物繊維には、水分を吸収して膨らむことで便を柔らかくし、ぜんどう運動を活発にすることで排便を促す作用があります。ダイエットによる食事制限によって食物繊維が不足すると、便秘が生じるリスクが高くなります。

生理前の女性ホルモンによるぜん動運動の低下

女性の場合は、生理前にホルモンバランスが崩れることで便秘がさらに悪化したり、顔や手足がむくんだり、ニキビやアトピーなどの肌荒れが起きたりすることがあります。

女性の体内では、排卵日のあとにプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが多く作り出されます。このホルモンは、体が妊娠備えるために必要なホルモンで、排卵日から生理が始まる約14日間で分泌量が増えていきます。

このプロゲステロンには、体内に水分を溜め込もうとする働きがあります。そのため、生理前に顔や手足がむくみやすくなります。

このプロゲステロンは、子宮内膜を厚くして着床しやすい状態に整える働きがあります。子宮内膜とは子宮の内側に存在している薄い膜です。

プロゲステロンは、卵子と精子が結合した受精卵(じゅせいらん)が子宮内膜に着床して妊娠すると、妊娠を維持するために子宮の収縮を抑え、流産や早産してしまうのを防ぐ役割を担っています。

子宮は平滑筋(へいかつきん)と呼ばれる筋肉でできており、プロゲステロンには平滑筋の働きを弱める働きがあります。そして、腸の組織は子宮と同じように、平滑筋で構成されています。

生理前にプロゲステロンの分泌が盛んになると、子宮の平滑筋の収縮を抑えるのと同時に、腸の平滑筋の収縮も抑えられてしまいます。

その結果、生理前の女性は、平滑筋の収縮が抑制されたことで、腸のぜん動運動が弱まり、また、プロゲステロンの作用によって大腸にある内容物から水分が吸い取られて硬くなり、便が出にくい状態になります。

ストレスによる過剰な交感神経

ストレスが多く溜まると、自律神経(じりつしんけい)のひとつである交感神経(こうかんしんけい)が活発になり、副交感神経(ふくこうかんしんけい)が低下します。すると、ぜん動運動が抑制されます。

自律神経とは、自分の意思とは無関係に働く臓器に張り巡らされた神経のことです。私たちが無意識のうちに呼吸、体温、血管や内臓などの動きをコントロールしているのは、自律神経による働きによるものです。

交感神経は、昼間に活発になる神経です。交感神経が優位になると、心拍数が増加し、瞳孔が開きます。また、脳や身体の隅々まで血液を送るために血管を収縮させ、酸素を多く取り込むために呼吸が浅く、激しくなります。つまり、交感神経は体を興奮させる傾向にあり、敵と戦う際に活発に働く神経です。

一方で、副交感神経は、心が穏やかでリラックスしているときや眠っているときに優位になります。副交感神経は体温や血圧、心拍数を下げると同時に緊張をやわらげ、消化活動を活発にさせてエネルギーを蓄えるように働きます。

ストレスを受けて交感神経が優位になったことで腸での消化・吸収の能力が低下し、ぜん動運動も抑制されます。すると、排せつが不良になり、便秘になってしまいます。

デスクワークによる筋力低下と悪い姿勢、運動不足

仕事や学校の授業で長時間座ったままでいると、運動不足になり、便秘を生じやすくなります。

また、座るときの姿勢が悪いと、腸をはじめとした全身の血流が悪くなり、腸の活動が停滞します。運動不足だと、腸に対する外部からの刺激が加わらなくなるため、便意が起こりにくくなります。また、運動不足で筋力が低下すると、肛門から便を押し出す力も衰えてしまいます。

便秘による症状が社会生活に悪影響を及ぼす

便秘の人では、常にお腹がはったり、ゴロゴロしたりするという不快感に悩まされている以外に、様々な体の不調を抱えていることがあります。

毎日お通じが順調に行われないためにウェストが太くなってスカートやズボンがきつく感じたり、体が常に重く、体重が増えたような感覚になったりすることがあります。このような状況では、活発に動くことも難しくなり、いつ便意が起こるのか分からないという不安も相まって、人との付き合いや外出機会が減る人もいるようです。

その他、便秘が原因で生じた不調のために、周囲の人に嫌な思いをさせているのではないかと不安になったり、自分の外見や体質にコンプレックスを抱くようになったりする人もいます。すると、ますます人付き合いが少なくなります。

さらに、便秘が深刻化して、重い病気へと発展するケースがあります。便秘が心の病気を引き起こすということが研究でも明らかにされており、腸のトラブルは精神にもダメージを与えてしまいます。

体臭、口臭、おならの臭いがきつくなる

便秘の人は、腸の機能が低下して、大腸に老廃物が残ったままです。すると、腸内環境が悪化して、腸内フローラのバランスが乱れてしまいます。

腸内フローラとは、腸内に住む善玉菌(ぜんだまきん)、日和見菌(ひよりみきん)、悪玉菌(あくだまきん)が、多彩な種類を保ちつつ、腸の中で集落を形成している状態をいいます。

腸内細菌の中で、善玉菌は極めて重要な働きをしており、腸内を清潔に保ち、栄養素の吸収を行い、ぜん動運動を促進させます。また、ビタミンB群を合成したり、免疫システムを強化したりすることで病原菌から体を守る働きを担っています。

一方で、腸内細菌の悪玉菌は、増えすぎると腸に悪さを働く菌です。腸内の内容物を腐敗させ、そこから毒素や発ガン物質を作り出します。

便秘の人では生活習慣やストレス、極端な食事が原因で、善玉菌よりも悪玉菌の方が増えて腸内フローラのバランスが崩れていることが多いです。毎日きちんとした排便習慣がないために、大腸の中に老廃物がたまりやすい状態になっています。

老廃物が溜まった腸では、悪玉菌がさらに増える環境になるため、腸内環境がさらに悪化して、悪循環に陥ります。

腸で増大した悪玉菌は、腸内のたんぱく質やアミノ酸などを腐敗させて、アンモニアやインドール、スカトールといった有害物質を作り出します。こうした有害物質は便臭や腐敗臭のもととなる「ニオイ成分」を生産します。これが原因となり、便秘の人では体臭や口臭がきつくなり、おならの臭いが強烈になります。

便秘の人では自分の体臭や口臭を気にするあまり、人と接するのが怖くなったり、相手から不快に思われていないか常に心配したりするようになります。自分の体が臭いと思いつめたせいで、職場や学校に行けなくなってしまう人もいます。

腸に溜まった毒素によって肌荒れが生じる

便秘の人は便を定期的に排せつすることができないために、体の中に老廃物や毒素が溜まりやすくなることは先に述べたとおりです。そうした老廃物は、ニオイ成分を生み出すだけでなく、肌トラブルをも引き起こす原因になります。

老廃物から出される毒素が血液の中に入り込んでしまうと、体は毒素を体内から排除しようとするために免疫反応を起こします。すると、免疫反応による炎症から、アトピーやニキビ、吹き出物などの肌トラブルが生じます。

また、便秘の人では腸内の善玉菌が不足しているために、善玉菌によって作られるビオチン(ビタミンH)も減少しています。ビオチンは皮膚の細胞が正常に入れ替わるための栄養素です。ビオチンが不足すると、お肌や髪の毛のパサついたり、ハリやツヤがなくなったり、抜け毛が多くなったりします。

アトピーによって顔が乾燥したり、かゆみのある湿疹ができたりすると、人に自分顔を見られるのが耐えられないと感じるようになる人もいます。また、顔にニキビや吹き出物ができた場合、話すときに相手の顔を見てしっかり話せなくなったり、買い物や外食など活動的に過ごすことができなったりするケースがあります。

便が溜まってお腹がポッコリ出て、体重増加が増える 

便秘の人では、大腸に便が溜まってしまうことで下腹が固くなり、ポッコリお腹が出てしまいます。

また、何日も排便がない状態が続くと、体内に便がどんどんと溜まっていきます。すると、それに応じて体重が増えることになり、多い人では便秘によって3キロ以上も体重が増えることがあります。

便秘の人は既に腸の機能が低下して、正常なぜん動運動が行われていない以外に、それ以前の消化・吸収能力にも問題がある場合が多いです。そのため、体が必要とする栄養素を取り入れることができず、細胞を入れ替えて、エネルギーを生み出す新陳代謝がうまく回らなくなります。

すると、カロリーの消費能力が低下し、脂肪を燃焼する力も弱まり、太りやすい体質になります。活動的に動く機会が減り、活力が減少するために見た目も不健康になります。

こうした状況が続いた結果、便秘でお腹周りが太り、体重が増えたために、着たい洋服が着られないとなげく女性は多いようです。便秘でお腹が張ったり、お腹が膨らんだりするために、流行のファッションやスリムデザインの洋服を思い切り楽しめなくなっているのです。

スカートやズボンがきつく感じ、体にフィットする洋服をきるとお腹のでっぱりが目立つのが嫌だからと、大きいサイズを選ぶようになります。また、便秘の期間はお腹が締め付けられるのを避けるため、普段着る洋服はウェスト部がゴムになったスカートやお腹が隠れるチュニックやワンピースしか着ないとう人もいます。

自分の力で便が出せなくなってしまう

便秘の状態が続いている人の中には、便意をおこすために何年も下剤(げざい)を使用している人がいます。下剤とは、薬の成分によって便意を起こすものです。便秘の症状を改善する際に、病院で頻繁に処方されたり、街のドラッグストアなどで販売されたりしています。

下剤の種類としては、大腸を刺激して便意を起すアントラキノン系の薬が主流で、代表的な成分はセンナ(マメ科の植物)、大黄(ダイオウ属の根茎)アロエなどがあります。

下剤は効果が表れやすく、はじめのうちは一度飲んだだけで、重症の便秘の人でも短時間のうちに便が出るようになります。下剤には強い作用があり、どんな状態の人にも効果を発揮することから、多くの人は便秘のときに経験するお腹の張りや重さ、痛みから解放されるため、便秘になるたびに下剤を使うようになってしまいます。

下剤は医師の指導のもとで適量を正しく用いれば、副作用を防ぎながら、便秘を治すことができる薬です。しかし、個人の判断で誤った使い方をしたり、軽度の便秘にも関わらず下剤を使用し続けたりすると、下剤を飲まなければ便が出ない体質になってしまいます。

下剤が無ければ排便できなくなった状態を「下剤依存症」と呼びます。下剤依存症になると、本来の腸の働きが損なわれ、栄養素を消化吸収して、便を作り出し、毒素と一緒に排せつするという自然の行為を行うことができなくなってしまいます。

また、先に説明した、センナ、大黄、アロエなどのアントラキニン系の下剤を長期にわたって飲み続けると、大腸メラノーシス(大腸黒皮症:だいちょうこくひしょう)が引き起こされることがあります。大腸メラノーシスは、大腸の内側の粘膜が黒っぽくなり、大腸が機能不全になる病気です。

下剤依存症になると、下剤がなければ自力で排せつすることができなくなってしまいます。いつも薬を手放すことができず、下剤がなくなったときの不安感や恐怖感が強まり精神的ストレスが重なります。下剤の効き目が薄れていくために、大量の下剤を飲んでしまい、さらに便秘の症状が悪化するという人もいます。

また、下剤による副作用として腹痛、脱水、吐き気、むくみ、下痢などがあります。下剤を使用することでさらに便秘が悪化する場合もあります。

また、下剤を多用すると体内からカリウムが出てしまい、カリウム不足になります。カリウムは体にとって大切なミネラル(電解質)のひとつです。カリウムが不足すると筋力の低下や血圧の上昇、強い疲労感、動悸、不整脈、自律神経失調症状が現れることがあります。

さらに深刻になると低カリウム血症を引き起こし、昏睡状態や心肺停止に陥る場合があります。

便秘が下人でうつ病になる場合も

便秘は様々なストレスが原因で発症していることが多く、便秘で悩んでいる人の多くは何らかの精神的な症状を同時に抱えている傾向が高いことが知られています。

人間の腸と脳は膨大な数の神経で繋がっており、お腹の調子が悪いと、その様子が脳に伝わることが研究から明らかにされています。腸の具合が悪いというサインを受けった脳は、さらにストレスを感じるようになり、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、すべての事に興味や関心を持てなくなったりします。

人によっては、身だしなみに注意を払わなくなってしまったり、何かを楽しんで笑ったり、感動して涙を流すという人間らしい感情が薄らいでいく場合があります。自分に自信が持てず、性格が暗くなったり、非社交的になったりするなど、人格や行動にも影響を及ぼします。

こうした症状が深刻になると、精神が安定せず、うつ病に似た症状が起こることが研究結果から示されています。

また、腸の悪化が脳に好ましくない影響を与えるほかに、脳が腸に影響を与えることも様々な研究から示されています。脳と腸は密接に関係しあっているため、脳からの腸に情報伝達がなされるのです。

うつ病や統合失調症、パニック障害、双極性障害など、脳が健全に機能しないことで生じる心にかかっている人では、便秘や下痢、膨満感(ぼうまんかん)、消化不良など、腸の機能低下による症状がみられることが非常に多いです。

現在、あなたが重い便秘で悩んでいる場合、以前に比べて自分の性格や思考・行動パターンが変わってしまったと感じるかもしれません。この原因に、お腹の不調の可能性も考えてみましょう。

そして、次に紹介する「便秘解消」の方法を取り入れることで、少しでも便秘を改善できるように心がけて下さい。

便秘を解消する5つの栄養素

便秘を解消するには、ストレスを減らすことが近道です。特に、ストレスが原因で便秘になっている場合、あなたの交感神経は優位になっており、知らず知らずのうちに心と体は興奮状態になっています。

心と体を穏やかにし、リラックスした状態にするには、好きな音楽を聞いたり、ゆっくりとお風呂に浸かったり、読書を楽しんだり、散歩に出かけたりするのが効果的です。とにかく、自分が好きで熱中できること楽しむと、気分転換になり、自律神経を整えることができます。

ただし、長時間テレビを見続けたり、インターネットを見ていたりすると、自律神経が乱れて神経が高ぶることがあるため、電子機器を長時間用いる活動は控えた方がいいでしょう。

生活習慣のちょっとした改善以外に、日常生活で実践することができる便秘解消の方法があります。それは、腸の機能を回復する栄養素を積極的に摂取することです。

先に示した「下剤」を用いて強制的に排せつさせるのではなく、音楽や入浴、腸に有益な栄養素を摂取することで、腸が自分の力で排せつする能力を回復させることを目指します。薬と異なり、栄養素の摂取は副作用が少ないため、誰でも気軽に始めることができます。

EPA・DHA

「オレイン酸を含むオメガ9系のオリーブ油」、オメガ3系脂肪酸の「EPA(エイコサペンタエン酸)」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」は、便を柔らかく滑らかにして、肛門から出しやすくする働きがあります。

特にEPAやDHAは大腸がんの予防にも効果があるとされています。さらに、EPAやDHAには、体内の炎症を抑える働きがあります。

便秘で腸内に老廃物が溜まると、そこから毒素が発生します。すると、腸は毒素を異物や敵と認識して、腸を守るために炎症を起します。そのため、長い間便秘になっている人では、体内で慢性的な炎症が起きている可能性があります。

そこで、EPAやDHAを摂ることで、体内の炎症を鎮める効果が期待できます。

EPAやDHAはサバ、アジ、サケ、イワシ、ブリなどの青魚に含まれています。EPAやDHAは熱に弱く、加熱すると酸化しやすい性質を持っているため、青魚を食べる時には生の刺身の状態で食べるのが最も良いとされています。

マグネシウム

マグネシウムは腸内に水分を引き寄せて便を柔らかくしたり、腸のぜん動運動を活発にしたりすることで排便を促す効果があります。

便秘で病院にいくと、「マグミット」や「マグラックス」などの酸化マグネシウムの薬が処方されることがあります。こうしたマグネシウム製剤は、比較的刺激が弱く、長期間服用しても効果は落ちにくいとされています。

酸化マグネシウムは、下剤を服用していたり、高マグネシウム血症、心臓病、腎臓病などの病気を持っている人では服用できない場合があります。

酸化マグネシウムを服用する場合には、上記に該当しないかを医師にきちんと伝え、医師の指示に従って服用するようにしましょう。

マグネシウム製剤を用いなくても、日頃の食事からマグネシウムを摂取することができます。マグネシウムは穀類、野菜、魚介、豆、海藻に多く含まれています。

また、便秘の人では十分な水分補給が推奨されますが、マグネシウムが豊富に含まれているミネラルウォーターを飲むことでも、マグネシウムを補給することができます。ゲロルシュタイナー、コントレックス、エビアンなどのミネラルウォーターは国内のコンビニエンスストアやスーパーで購入することができます。

ビタミンC

果物や野菜に含まれるビタミンCもまた、便を軟らかくして、腸のぜん動運動を活発にしてくれます。

ビタミンCは体を健やかに保つ効能がたくさんあり、その一つに活性酸素(かっせいさんそ)や体内毒素を排除してくれる抗酸化作用(こうさんか作用)があります。

活性酸素は体内で病原菌やウイルス、がん細胞などが発生した際に、そうした物質を酸化させて攻撃する働きをもつ物質です。活性酸素は、菌を殺したり、免疫機能を助けたり、エネルギーを生み出したりするのに欠かせません。

しかし、活性酸素は体を守る働きをすると同時に、増えすぎると私たちの細胞に損傷を与えサビつかせるという負の側面を持っています。

本来であれは、活性酸素が増えないように体内で調節しているのですが、便秘の人では長期間、大腸に便が溜まっており、腐敗した便から大量の活性酸素が発生します。すると、体は酸化ストレスに負けて、細胞の機能は低下していきます。

便秘の人は体内で大量の活性酸素が発生しているため、体内のビタミンCレベルが低下していることが考えられます。活性酸素を除去するために、体内で大量のビタミンCが消費されるからです。

そこで、ビタミンCを摂取することで、ぜん動運動を促すと共に、体の抗酸化力を高めることで健康的な体を取り戻すことができます。

食物繊維

普段の食事で食物繊維をたくさん取るようにすると、腸のぜん動運動が活発になり、便秘を効果的に治すことができます。ここでは、食物繊維の種類と効果的な食べ方について紹介します。

水溶性食物繊維(すいようせいしょくもつせんい)は、水分を抱えてドロドロのジェル状になることで、便に水分を加えて柔らかくしてくれます。不溶性食物繊維(ふようせいしょくもつせんい)は、水分を吸収して便のカサを増やすことで、ぜん動運動を助けます。

食物繊維を摂取するときは、2つの種類をバランスよく食べることが望ましいです。便秘で体内の水分が不足している状態で不溶性食物繊維を多く取ってしまうと、膨満感が強くなったり、便がカチカチに硬くなって出にくくなったりします。不溶性食物繊維を摂取する際には、十分に水分を補給することが大切です。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の理想的なバランスは1:2とされています。下記に記した食品を参考にして、料理に取り入れてみて下さい。

水溶性食物繊維 こんにゃく、寒天、りんご、干し柿、わかめ、ひきじなど
不溶性食物繊維 玄米、ごぼう、ハト麦、ブロッコリー、アズキ、切り干し大根など

腸内の善玉菌である乳酸菌を摂取する

腸内環境を整えて、善玉菌を増やすことが便秘を治すための近道です。善玉菌の中で特に便秘に効果がある菌として名高いのが乳酸菌(にゅうさんきん)です。乳酸菌とは、ブドウ糖や乳糖など糖類を分解することで、「乳酸」を作り出す腸内細菌の総称です。

乳酸は、身体活動に必要なエネルギー源となります。

また、乳酸は酢酸などと一緒に有機酸(ゆうきさん)とも呼ばれ、腸内に悪玉菌が増えないようにすることで、大腸の内容物が腐敗するのを防ぎ、腸を刺激してぜん動動運動を起して排便を促します。

この乳酸菌は日本人にとって馴染みのある「和食」から摂取することができます。味噌やしょう油、ぬか漬け、甘酒を食べることで乳酸菌を摂取することができます。他には、チーズやヨーグルトなどの乳製品からも乳酸菌を摂取することができます。

乳酸菌が便秘の会食に役立つことは、多様な研究や臨床から報告されています。特に、米を主食とする日本では、ぬか漬け以外に、しば漬けや野沢菜漬け、千枚漬けなどの漬物をご飯と一緒に食べるようにすることで、手軽に乳酸菌を取ることができます。

これまで見てきたように、腸の機能を回復させる栄養素を意識して摂ることで、停滞したぜん動運動を活発にさせることが可能になります。正常なお通じを復活させて、心も体も軽くすることで、健康的な暮らしを送りましょう。