私たちの体には、外部から入り込んで来る病原菌やウイルスなどの異物を見つけ出し、排除する能力が備わっています。これを「免疫力(めんえきりょく)」といいます。免疫力があることで病原菌やウイルスに打ち勝つことができ、病気を予防することができます。

しかし、免疫力が低下すると病原菌やウイルスと闘う力が弱くなります。その結果、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。人によってはヘルペスや口内炎ができたり、疲れが取れなかったりします。

これとは反対に、免疫力が必要以上に働いてしまうケースがあります。本来なら体にとっては異物ではないにも関わらず、免疫に関与している細胞が異物だと見なして攻撃してしまうのです。この結果、アレルギーやアトピー、花粉症などの「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」を発症してしまうことがあります。

自己免疫疾患とは体の中に入ってきた異物を排除する力が必要以上に働いてしまい、栄養を得るための食べ物や自分の細胞にまで反応して攻撃を加えてしまう病気です。

このように免疫力は低下すると病原菌に感染してしまう一方で、過剰に働きすぎると病気の状態になります。こうした問題を解決するためには、腸内環境を整えることが大切です。

腸内環境を健全に保つことで、免疫力が落ちている場合には免疫が向上し、免疫力が過剰に働き過ぎている場合には適度なレベルにまで抑えることができます。腸内環境を綺麗にして、免疫に関わっている細胞が最適な状態で働けるようにしましょう。

外部からの侵入者と闘う免疫システム

先に述べたように、私たちには病原菌やウイルスが侵入したときに、体の外に排除して病気になるのを防ぐ免疫力があります。この役割を担っているのが「免疫細胞(めんえきさいぼう)」です。

病原菌やウイルスと闘う免疫細胞にはさまざまな種類があります。それぞれの細胞が異なる役割をこなしながら連携することで、異物を体の外に追い出しています。この仕組みを「免疫システム」といいます。免疫システムが正常に機能していることによって、私たちは外部の侵入者から攻撃されても体を守り、健康を維持することができます。

免疫システムは、体の中に入り込んできた病原菌やウイルスを異物として認識し排除します。これとは反対に、免疫システムは、食べ物から得られる栄養素や自分の体の一部であるタンパク質や細胞、腸内細菌を排除することはありません。

異物は体に被害をもたらすのですが、栄養素や自分の細胞、腸内細菌は生命を維持する上で必要不可欠なものだからです。

つまり、免疫システムは自分の体と異物を区別していることになります。このことを、「免疫システムが自己と非自己を見分ける」と表現します。免疫システムは体にとって有害なものは「非自己」と見なして排除し、体にとって必要なものは「自己」と見なして何もしないのです。

免疫システムはチームとして機能する

免疫システムには「自然免疫(しぜんめんえき)」と「獲得免疫(かくとくめんえき)」の2種類があります。自然免疫は、生まれながらに誰もが持っているシステムです。獲得免疫は、生まれてからの生活環境の中で、後から獲得していく免疫システムです。

体内に病原菌やウイルスが侵入したとき、その異物に対して最初に自然免疫が働きます。

自然免疫を担当するのは「マクロファージ」や「顆粒球(かりゅうきゅう)」、「NK細胞」などの免疫細胞です。これらの自然免疫を担当する細胞は、外からやってきた病原体やウイルスを異物だと特定します。そして、その異物を捕まえて飲み込み、すぐに体の外へと追い出します。

自然免疫の細胞が、細菌や病原菌を自分の細胞にとり込んで処理する働きを「貪食(どんしょく)」といいます。

自然免疫だけで異物に対処できなくなると、次に獲得免疫が働きます。獲得免疫は過去に認識したウイルスや病原体を記憶する能力を持っています。獲得免疫に関わる細胞は、侵入してきた異物の形状や攻撃方法を学習して、それをずっと記憶しておくことができます。

こうした能力があるために、再び同じ異物に襲われたとしても、すぐに対応して病気にならないよう反撃することができるのです。例えば、水ぼうそうやはしかは、幼い頃に一度かかるとその後はかかりません。これらの病気を引き起こした菌を免疫系が覚えているため、再び同じ病気にかからないようにしてからです。

獲得免疫を担当している細胞にはいくつかの種類があります。代表的なものは「ヘルパーT細胞」や「キラーT細胞」、「B細胞」と呼ばれるものです。

自然免疫と獲得免疫の働き

体内に異物がやってくると、マクロファージが病原菌を排除しようと飲み込みます。このとき、マクロファージは自然免疫を担当する他の細胞に病原菌と闘うように命令を出します。

次に、マクロファージは獲得免疫を担当している細胞たちに命令を出します。マクロファージからのシグナルを受けると、獲得免疫のB細胞は「抗体(こうたい)」と呼ばれるタンパク質を作ります。抗体はウイルスや病原菌などの異物に取り付いて、その異物を体から除去するよう働きます。

自然免疫と獲得免疫の働きを図にまとめました。makuro

免疫システムが壊れると病気になる

免疫システムは体から異物を取り除き、病気にならないようにするための重要な機能です。そのため、このシステムが狂うとさまざまな病気が引き起こされます。

この原因の一つが免疫力の低下です。免疫が低下するとウイルスや病原体からの攻撃から体を守ることができなくなってしまいます。免疫力が低下すると、下記のような病気を生じてしまいます。

・風邪
・インフルエンザ、結核などの感染症
・慢性疲労症候群
・口内炎
・ヘルペス
・食中毒
・膠原病
・腎臓病
・心臓病
・肝炎
・糖尿病
・ガン(悪性腫瘍)
・リンパ性白血病など

反対に、免疫システムが過剰に働いてしまうことがあります。こうした状況では、異物に対する反応が過剰になるほか、体にとって害がない物質に対しても攻撃をしてしまいます。免疫システムが適度なバランスで働くようコントロールする機能が破たんして、免疫システムを適度な状態に抑制できなくなってしまうのです。

免疫システムが過剰になると、下記のような病気が生じます。

・ぜん息
・アトピー
・花粉症
・食品アレルギー
・クローン病
・関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患など

腸は常に外部にさらされている

私たちは食べ物から栄養を得ることで、生きていくために必要なあらゆる活動を営んでいます。食べ物から必要な栄養素を吸収し、不要になった物質を体の外に排泄する臓器を「消化器系(しょうかいきけい)」といいます。消化器系は口、のど、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門で構成されています。

口から肛門までの消化器官は一本の長い「ちくわ」のような構造になっています。腸の内側は、体の内部であるかのように見えますが、実は体の外なのです。

消化器官は入ってきた食べ物を分解し、体の中に取り込んでも問題がない物質だけを選別して内部に通しています。大きなかたまりである食べ物は、そのままでは体内に入っていくことができません。そこで、細かい分子にまで分解し、腸の壁から吸収されて体内へと入っていき、血液を介してようやく肝臓や心臓、肺などの「内部」に入ることができます。

つまり、胃や腸で消化の途中にあるものは、まだ体の中に入っていないことになります。腸は体の内側にありながら、外界に接している器官なのです。こうした消化器官の状態を「内なる外」と呼びます。uchinarusoto1実質的に腸は体の外側であるため、食べ物が入ってくるのと同時に、細菌やウイルス、寄生虫、化学物質といった物質も一緒に入り込んできます。腸は常に外部環境にむき出しになっている状況なので、あらゆる異物と常に闘っています。こうした状況を支えるため、腸には外部からの侵入を食い止める頑丈な防御機能が備わっています。

その重要な役割を担っているのが腸の壁にある細胞です。腸の壁にある細胞が、必要な物質だけを体に取り込み、異物は排除するよう正確な判断を行っているのです。

腸は栄養素を吸収し、異物を排除する

私たちが口から食品を食べると、その食品は食道を通って胃に入り、胃から出される胃酸で細かく分解されます。その後、小腸で栄養素が消化・吸収され、大腸で水分が抜かれたのちに便として肛門から排せつされます。これが食べ物を消化する基本的なしくみです。

小腸で栄養素を吸収しているのが、腸の壁に存在している「腸管上皮細胞(ちょうかんじょうひさいぼう)」です。腸管上皮細胞を電子顕微鏡でみると細かい凹凸(おうとつ)になっていることが確認できます。これを「微絨毛(びじゅうもう)」といいます。

栄養素はこの微絨毛を通過することで、体の外部である腸の壁から体内へと入り込むことができます。pic1 私たちが食べ物を飲み込むとき、細菌やウイルスなどの好ましくない物質も一緒に入り込んできます。こうした病気のもとになる物質が体の中に入り込まないように防いでいるのがこの微絨毛です。微絨毛は体の中に入ってよいものと、悪いものを区別している見張り役として活躍しています。

もし、病原菌やウイルスなどの異物が微絨毛をすり抜けて体内に侵入した場合は、免疫系が素早く反応して撃退しようとします。

腸は最大の免疫システム

体に異物が侵入すると免疫細胞が働いて、有害物質を体から排除します。これが冒頭で説明した免疫系のしくみです。そして、この免疫系の60~70%は腸に集中していることがわかっています。そのため、腸は最大の免疫システムと呼ばれています。

腸内に存在する免疫系を「腸管免疫系(ちょうかんめんえきけい)」といいます。腸管免疫系には、異物を対外に排せつする免疫細胞以外にも重要な物質が数多く存在しています。例えば、病原菌やウイルスと闘う「免疫グロブリンA(IgA抗体)」があげられます。

IgA抗体は腸の上皮細胞で作られます。IgA抗体が外からやってきた異物と闘うことで、腸の壁から病原菌やウイルスが侵入してこないようにガードしています。pic2しかし、腸内環境が悪化するとこのバリア機能は弱くなってしまいます。腸内環境が悪化すると、異物が入り込まないように監視している腸の細胞が壊れてしまうからです。すると、病原菌やウイルスが簡単に腸の壁をすり抜けてしまい、異物の侵入を防ぐことができなくなってしまいます。

さらに、腸内細菌が悪化して細胞に異常が出ると、IgA抗体の生産量が少なくなります。腸のIgA抗体が減少すると、異物と闘って体内から追い出すことができなくなります。

既に述べたように、腸には外部の攻撃から体を守る免疫細胞の大半が集中しています。ですから、腸内環境が悪化して腸内で働く免疫細胞の力弱まると、抵抗力はみるみるうちに落ちてしまいます。

そうすると、簡単に病原菌に感染したり、風邪にかかりやすくなったりします。人によっては、環境の変化や気温の変動、ちょっとしたストレスを乗り越えられずに病気になってしまうことがあります。

このような問題を防ぐためには、腸内の善玉菌を増やし、健康な状態に保つことが大切です。腸の細胞は「乳酸菌(にゅうさんきん)」や「ビフィズス菌」といった善玉菌によって守られています。善玉菌とは、体にとってよい働きをする腸内細菌のことです。

善玉菌は腸が健康的に働けるようにサポートしています。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌をたくさん摂取することで、腸の防衛力を強化することができます。また、こうした善玉菌を取ることで腸内環境の機能を高めると、効率的にIgA抗体が作られることが確認されています。

外敵が襲ってきたときに腸の細胞がしっかりとガードできるよう、乳酸菌やビフィズス菌を積極的に取るようにしましょう。

免疫が過剰に反応しても病気になる

私たちの体は免疫力が低下すると、風邪などの病気にかかりやすくなります。しかし、免疫が過剰に働きすぎてしまっても別の問題が生じます。免疫力の働きが強くなりすぎると、免疫に関わる細胞は病原菌やウイルスなどの有害なものだけではなく、害のない物質まで排除しようとしはじめます。

こうした状態では、食べ物から得るべき栄養素まで異物とみなされます。そのため、特定の食べ物が体の中に入り込むと、免疫系はそれを攻撃して排除しようとします。

その結果、特定の食べ物を食べると体調がおかしくなったり、お腹が痛くなったりします。人によっては食べるものを制限しなくてはならず、十分な栄養をとることが難しくなる場合があります。

また、花粉症も免疫の異常によって生じる病気です。花粉は人体にとっては何も悪さをしない物質です。それにも関わらず免疫システムが反応してしまい、むりやり体の外から排除しようとしてしまうのです。

このように、免疫が必要以上に働いてしまうことが、花粉症や食物アレルギーが発症する原因だと考えられています。免疫システムが異物を体から排除しようとするために、花粉症や食物アレルギーに特有の鼻水やくしゃみ、せきという症状が出ます。

ここでは花粉症や食品アレルギーが発病してしまう理由を考えていきます。同時に、過剰に働いてしまう免疫力を適度なレベルにまで抑える方法についても紹介します。

花粉症や食品アレルギーは免疫の過剰反応が原因

上記で述べたように、花粉症や食品アレルギーは、免疫の過剰反応によって生じる病気の代表的なものです。免疫が過剰になると、食品や花粉、自分のタンパク質や細胞を敵とみなして攻撃します。

花粉症や食物アレルギーでは、スギ花粉や食べ物を免疫系が異物と判断してしまいます。こうしたアレルギーの原因となる物質を「アレルゲン」といいます。花粉や食べ物以外に、ダニや動物、金属、化学物質もアレルゲンになる場合があります。

本来なら食べ物は異物として認識されず、免疫反応を起こさずに栄養素として吸収されます。しかし、免疫反応が過剰になると、食べ物を異物として認識してしまいます。それによって起こる不必要な攻撃が食物アレルギーです。

花粉も体にとって害はないために、免疫システムが攻撃して追い出すべきものではありません。ところが、免疫システムが異常になると花粉は敵だとみなされてしまいます。

免疫系が食べ物や花粉をアレルゲン(異物)だと判断すると、それらに対して「ヒスタミン」と呼ばれる化学伝達物質を作りだします。このヒスタミンが体のすみずみまで行き渡り、体の中で緊急事態が起きていることを知らせる「炎症(えんしょう)」という警告を鳴らします。

炎症が起こると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が出ます。また、せきを増やしたり、涙や鼻水を大量に流したりすることで体内に入ってしまった異物を体外に排除しようとします。他には、目の血管が広がって目が充血したり、目やまぶたがかゆくなったりする症状が出ます。

食物アレルギーでは、腹痛や吐き気、下痢といった消化器系の症状が出ることがあります。are3私たちの免疫システムは外部からの攻撃から身の安全をまもる大切な機能です。免疫力が低下すると外敵に負けてしまい、体は病気になってしまいます。

しかし、だからといって必要以上に免疫力が活性化してしまうと、さまざまな物質に対して攻撃するようになります。本来なら体にとって必要なものや害のないものにも過剰に反応し、病気と同じような症状が出てしまいます。

こうした問題は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を清潔にすることで解決できます。乳酸菌やビフィズス菌が免疫細胞に働きかけて、免疫系の強弱を調節するからです。

この働きを「クロストーク」といいます。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が免疫細胞と対話をすることで、体にとって害のあるものと、良いものとを見極めます。

クロストークで腸内細菌と免疫細胞が対話した結果、入り込んできた異物が害のあるものであれば、攻撃して排除するように働きかけます。反対に、体にとって有益な栄養素や害がないと判断された物質に対しては、免疫反応は抑制されるのです。

善玉菌によって適度な免疫力が発揮される

風邪やインフルエンザ、アレルギーなどの症状は、免疫システムが正常に働かなくなってしまったためにかかる病気です。こうした症状に悩んでいる場合には、一度自分の腸内環境が健全に機能しているか振り返ってみましょう。

腸の壁では、外部の侵入者を見分けて、体内に入れさせないようにしています。また、腸内環境には免疫系の7割以上が集まっています。腸内環境が悪ければ、免疫力を担っている細胞は適切な仕事をすることはできません。

その結果、免疫力が落ちて病原菌やウイルスに感染してしまったり、逆に免疫力があがり過ぎることで病気になってしまったりします。

このような場合は、善玉菌と免疫細胞が互いにコミュニケーションできるようにし、適度な免疫力のバランスを取り戻すことが大切です。

免疫力がちょうどよいレベルで働くことで、病気に負けない免疫システムを作ることができます。そのためには、善玉菌を摂取して健康的な腸内環境を作り出し、免疫に関わっている細胞が最適な状態で働けるようにしましょう。