生活リズムが不規則だったり、ストレスや悩みを多く抱えていたりすると気分は落ち込んで、体は疲れを感じます。このようなとき、大半の人は休息を取るように努めます。しかし、いくら睡眠を取って休んでも、疲労感が抜けずに体力が回復しないという経験をしたことはないでしょうか。

このように疲れが長引くと私たちの体は緊張状態になり、健康的な日常生活を送るのに必要な体の機能が低下してしまいます。また、体内ではストレスや困難に立ち向かうためのホルモンが休みなく作られるため、ホルモンを作り出す臓器は弱り、活動することができなくなってしまいます。

その結果、強い疲労感が蓄積され、さまざまな病気が引き起こされるようになります。

こうした症状を訴える人では、腸内環境が乱れていることが分かっています。ストレスが腸内に住む細菌のバランスを壊すからです。そして、腸内細菌のバランスが崩れるとストレスで弱った体に負担がかかり、体調不良はますます悪化します。

自宅で十分な休息を取っているのに疲れて活動できない場合は、腸内環境を整えて全身の活動機能を高めるように心がけましょう。腸内細菌のバランスを良好にして身体の活動能力を回復させることで、疲れにくい体を取り戻すことができます。

さまざまなストレスが疲労の原因になる

私たちの日常生活は多種多様なストレスに囲まれています。例えば、対人関係のトラブルや残業の多い仕事、経済的問題、睡眠不足、喫煙、化学物質への接触、過剰な薬の摂取などです。

こうしたストレスに直面したとき、私たちの体に張り巡らされている神経が反応して脳に緊急事態であることを知らせます。そして、血液の流れや呼吸の深さ、腸での消化・吸収を調節していつでもストレスに対抗できるように準備をします。

外部のストレスに対して自分の体を守ろうとする仕組みは、生命を維持する上でとても大切な働きです。

しかし、ストレスが長期間に及ぶと上記に記載したような体の機能が限界に達し、ストレスに耐え切れなくなってしまいます。その結果、強い疲労感やだるさを感じて日常生活に支障をきたすようになります。

ストレスで交感神が経優位になる

ストレスや嫌な出来事に直面したとき、私たちの体では自律神経(じりつしんけい)が反応して問題に対抗しようとします。自律神経は呼吸や消化、血液の循環といった身体活動を調節することで体の健康を支えています。しかし、ストレスが増えすぎて体の調節システムが維持できなくなると自律神経が乱れます。

自律神経が乱れると、自律神経の一つである交感神経(こうかんしんけい)が優位になります。交感神経は昼間、活動的になっているときに活発になる神経で「闘争と逃走の神経(とうそうととうそうのしんけい)」とも呼ばれています。

これは生まれながらにして人間に備わっている能力です。目の前に敵が現れたときに神経を興奮させて、血圧を上げたり、心拍数を早めたり、筋肉を収縮させることで「敵と戦う」のか「逃げ去る」のかを瞬時に判断して行動に移します。

昔は命の危険に関わるような状況は短い時間で終わることが大半でしたが、現代社会では日常生活のあらゆる場面でストレスが生じています。すると、体はいつも恐怖や不安を感じて、交感神経が優位な状態のままになります。その結果、体にさまざまな不調が現れるようになります。

交感神経優位になると回復力が低下する

交感神経が優位になると呼吸や心拍数が速くなるといった身体反応以外に、腸の消化・吸収の機能が抑えられます。そのため消化不良になり、食べ物から摂取した栄養を全身の細胞へ届けることができなくなってしまいます。

栄養が不足すると細胞は健康を維持するための役割を果たせなくなります。例えば、体内でエネルギーを作りだせなくなったり、不要な老廃物を排除したりすることができなくなってしまいます。そのため、全身の機能が低下して、疲労感やだるさを感じるようになります。

また、交感神経が優位になると夜眠ることができなくなるため、睡眠中に傷ついた細胞を修復できなくなってしまいます。すると、細胞の機能はさらに低下するためケガや病気が治りににくくなり、疲労は回復しづらくなります。

さらに、神経が高ぶって筋肉がこわばるため、背中の張りや肩の凝り、腰の痛みが生じます。また、筋肉が固くなることで血流の巡りが悪くなるため、各細胞に酸素を届ける働きが低下し、老廃物や二酸化炭素を回収する力も弱まります。

こうした血行不良は病原菌やウイルスと闘う免疫力(めんえきりょく)にも影響を及ぼします。病原菌やウイルスが侵入したとき、私たちの血液中に存在する白血球(はっけっきゅう)は、それらの外敵を死滅させることで病気に感染するのを防ぎます。

しかし、血液の流れが乱れると、白血球が体内をスムーズに移動して外敵を監視することができなくなります。その結果、免疫力が低下してさまざまな病気にかかりやすくなったり、疲れが出やすくなったりします。

副腎がダメージを受けると、ストレスに対抗できなくなる

私たちの体は外部からストレスを受けると、副腎(ふくじん)という臓器でストレスに対抗するためのストレスホルモンを作り出します。副腎で作りだされるストレスホルモンをコルチゾールといいます。

コルチゾールは交感神経と同じように、血圧や心拍数の調節、エネルギーの合成など、ストレスに対応するための体の機能をコントロールしています。しかし、ストレスが長引いてコルチゾールが毎日多量に作られると、副腎に負担がかかり過ぎてホルモンを作りだす能力が低下してしまいます。

つまり、副腎が消耗すると十分なコルチゾールが作りだせなくなってしまうのです。

このような状態になるとストレスに簡単に負けてしまい、疲れやだるさが出たり、風邪を引きやすくなったり、気分が沈んで意欲が低下したりするなどの症状が出ます。

副腎で作られるコルチゾールの働き

先に述べたように、副腎はストレスホルモンのコルチゾールを作り出しています。コルチゾールは「差し迫った危険」から逃れるために、心身を保護する働きをします。

副腎は左右の腎臓(じんぞう)の上にある三角形の臓器で、ウズラの卵ほどの大きさをしています。副腎はストレスを感じたとき、脳からの命令を受けてコルチゾールを分泌します。

コルチゾールは体内でブドウ糖を作りだして血糖を上げるほか、ブドウ糖を細胞の中に取り込む働きをするインスリンの量を減らします。つまり、コルチゾールは血液中のブドウ糖を増やすことで、体が瞬時にエネルギーを作りだすように働きかけます。

また、コルチゾールには血管を縮める作用があるため、血圧を上げて緊張感を高めます。このとき、心拍数や体温も一緒に上昇します。このようにして、いつでも外敵から逃げられる態勢を整えます。

加えて、コルチゾールには免疫力を低下させ、炎症(えんしょう)を抑える働きがあります。炎症は病気やケガから体を守るための仕組みであり、体が回復する過程で発熱や痛みなどを生じます。コルチゾールは、このような炎症の症状を和らげてくれます。

その一方で、コルチゾールが出続けると免疫力が低下して、体が病原菌やウイルスと闘う力が弱くなります。そのため、感染病にかかりやすくなったり、風邪が治りにくくなったりして体の抵抗力は弱まります。

副腎疲労症候群になると疲れが取れなくなる

これまで述べてきたように、コルチゾールは体のさまざまな機能を抑制・促進させることで、非常事態やストレスから逃れるための調節を行っています。

しかし、ストレスが長引いて副腎に負担がかかり過ぎてしまうと、副腎が消耗してしまいコルチゾールを作り出せなくなってしまいます。

本来コルチゾールは、ストレスや緊急事態が起こるごく短い間だけ作り出されるホルモンでしたが、現代社会では日々発生するストレスに対応しなくてはいけないため、休む暇もなく副腎でコルチゾールが作り出されています。

副腎の機能が低下してコルチゾールが減少すると、血糖の調整や炎症の抑制、血圧の維持ができなくなってしまいます。すると、血糖の調節が乱れたり、炎症が治らなかったり、低血圧になったりします。

すると、こうした副腎の不調が引き金となって全身の機能が低下し、休んでも疲労感やだるさが強く残るようになります。人によっては立ちくらみや貧血、朝起きられない、性欲がない、けがが治りにくい、気分が落ち込むといった症状が出ることがあります。

また、朝ベッドから起き上がれずに職場や学校に行くことができなくなったり、家事がこなせなくなったり、子供と一緒に遊ぶためのエネルギーが尽きてしまったりする場合があります。

さらに副腎の働きが落ちると、人によっては寝たきりになったり、うつ病になったり、学習や記憶にも問題が出るようになります。

このように、副腎が消耗してコルチゾールが作り出せなくなったために、さまざまな症状が出る病気を「副腎疲労症候群(ふくじんひろうしょうこうぐん)」といいます。

腸内環境を改善することで疲労感を軽減する

日常生活でストレスを感じたとき、体内では自律神経や副腎ホルモンが働いてストレスに対抗しようとします。しかし、ストレスが長く続いて交感神経が優位になったまま、コルチゾールが作り出せなくなると、疲労が増大して病気に発展する可能性が高まります。

ストレスが原因で病気になるのを防ぐには、自律神経のバランスを整えると共に、適切な量のコルチゾールを作りだせるように副腎の機能を回復させることが大切です。

自律神経と副腎機能を改善するには色々な方法がありますが、疲れやだるさをなくして病気を治すには、健康的な腸内環境を作ることが大切になります。ここでは、腸内環境を向上させることが疲労を軽減するのにどう役立つのかを見ていくことにします。

自律神経の乱れは腸内細菌に影響を与える

ストレスで自律神経のバランスが狂い交感神経が優位になると、腸内細菌の悪玉菌(あくだまきん)が増えることが分かっています。悪玉菌は増えすぎると腸の機能を損ない、全身にさまざまな悪影響を与えます。

悪玉菌が増えてしまうと腸の働きが低下して、食べ物を消化・吸収する機能が落ちます。すると、健康的な体を維持するのに欠かせない栄養を取り入れることができなくなります。その結果、体が新しい細胞に入れ替わったり、老廃物を除去したりすることができなくなってしまい、疲れやすい体質になります。

また、腸内に悪玉菌が多いと排便の機能にもトラブルが起きます。腸が伸び縮みする運動に異常が出るため、便秘や下痢になります。また、便秘になると、悪玉菌は腸内の食べカスを腐敗させて有毒物質を作り出します。有毒物質は体の免疫システムを低下させるため、全身に疲労症状が出るようになります。

このように、ストレスで腸内の悪玉菌が増えて疲労が蓄積している場合は、善玉菌(ぜんだまきん)を増やすことが大切です。善玉菌は腸での栄養の消化・吸収を促し、免疫力を向上させるように働きます。また、善玉菌は食べカスを大腸まで運び、形の良い便にして排せつするのを助けます。

腸内環境を整えるには、善玉菌を増やす食品を意識して食べるようにましょう。芋類や豆類、海藻、雑穀には食物繊維(しょくもつせんい)が豊富に含まれ、善玉菌が増える際のエサになります。また、納豆や味噌、漬物、キムチ、ヨーグルトなどの発酵食品も善玉菌を増やすのに有用です。

腸内環境を改善しないと副腎疲労症候群は治らない

副腎疲労症候群の患者の多くが、腸内環境が悪いということが臨床結果から示されています。腸に問題があると、その事実を脳がストレスだとみなして、副腎でコルチゾールを作ろうとします。しかし、副腎疲労症候群の患者は元からコルチゾールを生産する力が落ちているため、腸のストレスに対応することができなくなっています。

また、こうした患者は副腎機能が低下していることに加えて、腸での消化・吸収能力も落ちているために十分な栄養素を取り込んで適切な血糖を維持することが難しくなってしまいます。こうした状態では、正常な血糖を維持することができないため、体はエネルギー不足になり疲れて元気がなくなります。

このとき、副腎疲労の患者は血糖を上げようとして菓子やパンなどの砂糖が入った炭水化物を多く食べるようになります。砂糖が入った食品を食べると、一時的に血糖値が上昇して気力を保つことができます。しかし、血糖値はすぐに低下して、再び脱力感がおそってくるようになります。

また、砂糖が入った甘い食品は腸内の悪玉菌のエサになるだけでなく、腸内細菌の1種であるカンジダ菌を増やす原因にもなります。カンジダ菌は悪玉菌の働きを助けるため、腸の機能はますます低下してしまうのです。

こうしたことが原因で腸内環境が悪化すると、副腎の働きを復活させるのに必要なタンパク質やビタミン、ミネラルを腸で吸収して、副腎の細胞まで届けることができなくなります。そのため、副腎が回復せずにコルチゾールの生産量は減り続け、疲れがしぶとく残ったままになってしまいます。

副腎疲労症候群を治すには、まずは腸内環境を改善することから始めましょう。そのためには、なるべく甘い食べ物を控えるようにして、糖質の少ない食べ物を食べるようにします。ゆで卵やナッツ、チーズなどの食品は糖質が少なく血糖値を急激に上げにくい食べ物です。

また、先ほど紹介したように、腸内の善玉菌を増やすような食物繊維や発酵食品も合わせて食べるようにして下さい。腸内環境が改善されると脳でのストレスが減って、副腎に必要な栄養素も摂取できようになるため、しつこい疲労を軽減できるようになります。