分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学に基づく治療を行う場合、体調不良を改善するための食事法として「グルテン」や「カゼイン」を除去することが推奨される場合があります。

グルテンは、小麦やライ麦などに含まれる植物性タンパク質の一種です。
カゼインは、牛乳をはじめとする乳製品に多く含まれる動物性タンパク質です。

本来であれば、生体にとって栄養分となるこれらのタンパク質ですが、複合的な要因によってグルテンやカゼインが腸の機能を低下させたり、脳の機能を障害したりすることが指摘されています。

実際に、グルテンやカゼインがヒトの細胞に悪影響を与え、あらゆる体調を引き起こすと同時に脳の働きや気分にまで影響を及ぼすことを示した文献も存在します。

昨今では、健康に対する意識が高まっていることから、「グルテンフリー」や「カゼインフリー」という言葉が一般化しています。グルテンフリーやカゼインフリーとは、上記のタンパク質が含まれる食品を摂取しない食事方法をいいます。

グルテンフリーやカゼインフリーは、健康増進を目的にアメリカで初めて注目されました。そして、日本でも定着しつつあります。

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学では、健康増進やダイエットという枠組みを超えて、「病気治療」のためにグルテンフリーやカゼインフリーの食事が指導されることがあります。

ここでは、グルテンフリーとカゼインフリーを実践することで期待できる効果について解説していきます。

目次

グルテンフリー、カゼインフリーが流行した背景

グルテンフリーは、海外のセレブや日本のタレントの間で、主にダイエットや美容効果を目的に実践されている食事法です。また、世界トップクラスのアスリートたちの間では、肉体改造の方法として積極的に取り入れられています。

グルテンフリーを実践している有名なプロスポーツ選手として、テニスの世界ランク1位になった、ノバク・ジョコビッチ選手がいます。

ジョコビッチ選手は、グルテンフリーを実践したとたん、劇的に成績が向上しました。その経験をもとに、『ジョコビッチの生まれ変わる食事~あなたの人生を激変させる14日間プログラム~』という著者を2015年に出版しています。

この本は、健康関連の書籍として10万部を突破し、グルテンフリーブームの火付け役となりました。

ジョコビッチの書籍を機に、グルテンフリーに関する書籍が相次いで出版されるようになりました。

書籍以外のメディアでもグルテンフリーの特集が組まれるなど、グルテンフリーを実施したことで効果的に減量が達成できたことや健康を回復した個人体験談などが多く聞かれるようになりました。

ファッション誌やゴシップ誌では、海外のハリウッドスターやスーパーモデルがグルテンフリーを実践していることを取り上げたため、国内では女性を中心に実践者が増えていることが伺えます。

このようにして、グルテンフリーは、多くの著名人が美容効果や健康促進、肉体改造のために導入したことから、世に知れ渡ることになりました。

子供を取りまく食品の変化

グルテンフリーブームが活況を呈する前に、海外の医療分野では、グルテンやカゼインが子どものアレルギーに関わっていることがいくつかの研究によって示されていました。

グルテンやカゼインは、ヒトにとって有用な栄養素です。しかし、年齢や消化吸収能力を考えて摂取しないと、アレルギー症状を引き起こす可能性があると唱える医師や研究者たちがいます。

また、子どもが大量にグルテンやカゼインを摂取すると、アレルギーだけでなく、神経系の働きに支障が生じる場合があることがわかっています。このような神経の損傷は、自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害にもつながっていると指摘されています。

そのため、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学による自閉症や発達障害の治療においては、「グルテンやカゼインを完全に除去する」ことで改善効果が見込めると判断された場合、徹底したグルテンフリーやカゼインフリーの食事をするよう医師からアドバイスがなされることがあります。

グルテンフリーやカゼインフリーを実践する前に考えたいこと

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学のみならず、各種の健康療法において広く推奨されているグルテンフリーとカゼインフリーですが、食事からグルテンとカゼインを完全に除去しただけで、あまねく体調不良や病気が治るとは断言できません。

また、「食事」というライフスタイルの根幹に関わる習慣を変えることは、そう簡単なことではありません。今までグルテンを含んだ食品やカゼインを含んだ乳製品を好んで食べていた人が、突然こうした食品を経つのは精神的に相当のインパクトを及ぼすことが考えられます。

どのレベルでグルテンフリーやカゼインフリーを実践するかにもよりますが、食事から完全にグルテンとカゼインを除去しようと思ったら、3食はすべて自炊しなければならないでしょう。

調味料や加工食品も厳選して選ぶ必要があるため、一般的な人に比べて食事の「自由度」は狭くなる傾向があります。

加えて、本格的な治療を念頭においたグルテンフリーやカゼインフリーを実践する場合は、家族や友人など周囲からの理解や協力、励ましを得る必要があります。患者本人の自助努力だけでは、どうしても挫折してしまう可能性があるからです。

グルテンフリーやカゼインフリーの実践においては、人それぞれの考え方にもよってもやり方や向き合い方が大きく異なります。こうしたことを理解した上で、グルテンフリーやカゼインフリーを実践するかどうかを決める必要があります。

グルテンフリーに関して、栄養医学研究所の佐藤章夫先生は、ブログで下記のように述べられています。

ジョコビッチは、数人の栄養士、調理人、カウンセラー、医師のケアとサポート を受け、4大グランソスラム優勝と世界ランキング1位への復活を目標にしてそれをほぼ手中に収めてきました。

グルテン不耐性に対するグルテン除去食は決して一時の流行で飛びつくべきものではなく、不耐性を作った自らの体内環境を理解し、除去食方法のメリット、デメリットを理解して進めることが肝要です。

この本の影響もあって、マスメディアはこぞって「グルテン除去食」を究極の健康方法かのように取り上げています。残念ながらどのメディアを見てもグルテン除去食の良い点ばかりが紙面に躍り、デメリットや注意点はほとんど紹介されていません。

除去食を勧め指導する側の人間は、実際に除去食を行う人にとっては想像以上のストレスがかかるころを十分理解し、そのケアとサポートを十分に行ってこそ始めてグルテン除去食方法の真価が発揮できることを忘れてはいけないと思います。

臨床栄養士のひとり言より引用 

グルテンフリーやカゼインフリーを徹底的に実践するのであれば、そのメリットとデメリットをよく見極め、自分の体質や体調を把握し、然るべき医師の指導の元で行うのが賢明です。

日本人における小麦と乳製品の消費量の爆発的な増加

昔はめったに見られなかった、子どものアレルギーや発達障害が生じるようになった背景を探るには、時代の変化に伴う「食生活の変容」に目を向ける必要があります。

現代の子どもたちは、昔の子どもよりも多く、グルテンやカゼインアが含まれた小麦製品や乳製品を乳幼児の頃から摂り続けています。そして、そうした食品は給食にも使われています。

家庭内でも、米が主食であった昔と比べ、現在はパンや麺類などの小麦製品が食卓に上る回数が多くなっています。

『公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構』によって2015年に発表された、米とパンの2人以上の世帯の年間支出金額では、わが国における明らかな主食の変化が確認できます。

21世紀初頭には、米はパンの1.5倍ほどの消費量でしたが、2010年頃にその量は逆転しています。このような経過から、日本人の主食が米からパンへとシフトしており、特に2000年代に入ってから大きく変化していることがわかります。

公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構 ライフスタイルの変化と米消費の動向 より引用

一方、生乳の世帯需給量は、近年ではやや減少傾向にあります。しかし、昭和と比較すると、平成25年には約6倍もの生産量となっています。

このように、日本における小麦や乳製品の消費量は、時代の流れと共に爆発的に増加していることが、統計から把握することができます。

実際にコンビニやスーパーなどに行くと、こうした変化は身をもって体感できます。

たとえば、昔と比べて、クッキーやケーキなどの小麦で作られた洋菓子やパン、カップ麺が多く売られていることに気が付くでしょう。牛乳はもちろん、アイスクリームやプリン、ヨーグルトなどの乳製品もたくさん並べられています。

私が子どもの頃(1980年代)には、このような食品は、今ほど多く陳列されていなかった記憶があります。日本人の食事が欧米化することに伴い、グルテンやカゼインの摂取量も相対的に増えていることが分かります。

参考:公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構 『ライフスタイルの変化と米消費の動向』2015年3月5日発行
参考:雪印メグミルク株式会社『我国の乳製品の需給動向について』2015年9月1日発行

食生活の変化が食物アレルギーや生活習慣病の引き金になっている

昔と比べて、小麦や乳製品の国内消費量が増加していることは明らかです。そして、これらの商品は比較的安価であるため、子どもたちは簡単にグルテンやカゼインを含んだ食品を口に入れることができるようになりました。

一方で、そのような食事の変化とともに、食物アレルギーを持つ子どもが増加し、食事に注意を払わなければいけないケースが増えています。

2013年に日本経済新聞に掲載された記事では、公立小中高校の児童生徒においては、約45万4千人(全体の4.5%)が何らかの食物アレルギーをもっていると報告されています。この数は、2004年に行われた前回調査よりも12万4千人(1.9%)増加しています。

2004年から2013年までの9年間に、これだけの増加率が見られるということは、現在(2017年)では、食物アレルギーをもつ子どもがさらに増えていると想像できます。

また、パンや洋菓子を食事に取り入れた食の欧米化は糖質の過剰摂取を引き起こすため、肥満症や糖尿病、がんなど生活習慣病の原因の一つになっていると指摘する専門家もいます。さらに、生理不順や不妊などの婦人科疾患にも関係していることが示唆されています。

こうした背景により、子供の食品アレルギーを防ぎ、健康的に発育させるという点からも、グルテンフリーやカゼインフリーが注目を集めています。

グルテンとは何か

グルテンとは、小麦やライ麦などの穀物の胚乳(はいにゅう:種子が発芽する時に胚の養分となるもの)から生成されるタンパク質の一種です。小麦や強力粉、中力粉、薄力粉、大麦、押し麦、丸麦、ライ麦、空豆にグルテンが含まれています。

小麦に含まれるタンパク質の割合は10%程度で、そのうちの80%はグルテンが占めています。グルテンは、「グルテニン」と「グリアジン」というタンパク質によって構成されています。

グルテニンは、弾力に富んでいて伸びにくいという特徴があります。一方で、グリアジンは、弾力はありませんが粘着力が強く、伸びやすい性質を持っています。

現在は、グルテニンとグリアジンの双方の性質を利用した、様々な小麦製品や添加物が食品として出回っています。

次のような食品にグルテンが含まれています。

  • パン、ライ麦パン、黒パン
  • パンケーキ
  • ホットケーキ
  • ドーナッツ
  • スコーン
  • マフィンクッキー
  • 焼き菓子
  • スナック菓子全般
  • ケーキ類
  • ピザ
  • パスタ
  • シリアル
  • シチュー
  • カレーのルー
  • ラーメン
  • そば(そば粉100%使用の場合は除く)
  • うどん
  • たこ焼き
  • てんぷら、フライ
  • ハンバーグ
  • たこ焼き
  • お好み焼き
  • 肉まん、あんまん
  • 餃子
  • ビール
  • 発泡酒
  • スピリッツ系
  • スコッチ
  • バーボン
  • ウォッカ
  • 麦焼酎
  • モルト
  • 大麦麦芽
  • 各種ソース
  • ドレッシング
  • 醤油
  • 各種スパイス(固着防止剤)
  • 加工食品
  • 食肉加工食品
  • 着色料
  • 植物油(小麦胚芽油)
  • 乳化剤
  • 化粧品(たんぱく加水分解物)
  • 防腐剤
  • サプリメント(カプセルの結着材)
  • でんぷん(小麦由来)
  • 植物油(グルテン添加剤)
  • 分散剤(セルロースクエン酸)
  • デキストリン
  • たんぱく加水分解物
  • 植物ガム(オート麦由来)
  • 穀物酢(小麦を使用したもの)
  • 充填剤(じゅうてんざい)

このように、グルテンが含まれている食べ物は、私たちの身近に多く存在します。そのため、ほとんどの日本人が知らないうちにグルテンを口にしています。

グルテン不耐性

私たちは、口から食べた物を主に小腸で消化吸収しています。しかし、小麦製品を食べたときに、小腸でグルテンを上手く消化吸収できない人がいます。このような状態を、グルテン不耐性といいます。

グルテン不耐性の症状は多岐にわたります。そのため、他の疾患と間違えられることが多く、グルテン不耐性を持つ人の99%が、的確な診断がなされていないともいわれています。

グルテン不耐性の症状には次のようなものがあります。

  • 下痢、便秘、悪臭を伴うガスなど消化器系トラブル
  • 腕や背中にぶつぶつができる
  • アトピー性皮膚炎
  • めまい、ふらつき
  • 頭痛、片頭痛
  • 慢性的な疲労感
  • 集中力の欠如
  • 頭が重たい
  • やる気の低下、気分の上下
  • 腰やひざの痛み
  • コントロールできない食欲
  • ホルモンバランスの乱れ(月経前症候群など)
  • 手足の冷え、しびれ
  • 急激な体重の増減
  • 乳幼児の発達遅延

グルテンアレルギーの場合、グルテンを口に入れた瞬間にアレルギー反応が生じるのが一般的です。しかし、グルテン不耐性では、しばらくしてから症状が出現する特徴があります。

そのため、グルテン不耐性の人はグルテンを食べた直後ではなく、「グルテンを消化吸収する作業に入ったとき」に症状が出現しやすくなります。

グルテン不耐性の多くは、グルテンに含まれる「グリアジン」というタンパク質に過剰に反応してしまいます。その結果、腸にガスが溜まったり、腸に炎症が生じたりすることがわかっています。

時代とともに変化したグルテンの性質

ヒトが小麦を食糧とするようになってから、1万年前ほどの長い歴史があります。

現代では、グルテンはあらゆる病気の発症に関連していることが示唆されています。この理由として、先のグラフで示したように、国内の小麦消費量が増加していることが関係している可能性があります。しかし、もう一点知っておきたい事実があります。

それは、現在私たちが口にしている小麦は、ヒトの祖先が育て、挽いて粉にしていた小麦とは全く別物だということです。

17世紀に「メンデルの法則」を提唱したグレゴール・メンデルが、異なる植物を交配して新しい種を作り出すという実験を発表して以来、様々な新種の作物が育てられてきました。

現在(2017年時点)では遺伝子生物工学の飛躍的な技術向上により、わずか数十年前に栽培されていた穀物に比べ、グルテンを約40倍も含む穀物を栽培できるようになりました。

人工的な品種改良を経て生産された小麦の成分は、時代と共に変化しています。現在、店頭に並んでいる小麦製品の多くは、グルテンが豊富に含まれているものばかりです。

日本人は、真っ白なフワフワとした食パンを好みます。また、うどんは、こしのあるものが好まれるため、消費者のニーズに応えるべく、こしと歯ごたえのある麺が製造されることが多いです。よって、食品に含まれるグルテンの量も多くなっていることが考えられます。

しかし、品種改良されたグルテンは、身体に悪影響を及ぼす可能性があります。グルテンを毎日大量に摂取することで、糖質が過剰になったり、脳神経が損傷されたり、腸のバリアが破壊されたりするリスクが高まると指摘する専門家がいます。

グルテンの摂取が引き金となって生活習慣病やうつ病、アレルギーなどの現代病を発症すると、こうした専門家たちは警鐘を鳴らしています。

カゼインとは何か

カゼインとは、牛乳やチーズなどの乳製品に含まれるリンタンパク質の一種です。カゼインは、様々な食品の添加物として使われたり、プラスチックなどの製品の材料としても利用されたりしています。

カゼインは、牛乳に含まれる乳タンパク質の約80%占めています。その構成成分は単一のタンパク質ではなく、大きく分けて下記の3つに分類されます。

  • α-カゼイン(アルファカゼイン)
  • β-カゼイン(ベータカゼイン)
  • K-カゼイン(カッパーカゼイン)

カゼインはヒトの乳汁にも存在していますが、人乳には牛乳に比べてα-カゼインが著しく少ないことがわかっています。牛乳を飲んでアレルギー症状を引き起こす人の多くは、このα-カゼインに原因があるといわれています。

カゼイン不耐性

牛乳に含まれるカゼインの40%を占めるα-カゼインを、ヒト人は消化・吸収することができないとされています。

ヒトは、α-カゼインを分解するレンニンという消化酵素を作ることができません。その代わりに、胃酸がα-カゼインの分解を補っています。それでもα-カゼインを完全に分解することは難しいとされています。

分解されなかったカゼインが小腸まで届くと腸に炎症が生じ、腸内を傷つけてしまいます。その結果、身体にさまざまな影響が生じてきます。

腸内が傷つけられた結果、腸内環境が悪化し、栄養素の吸収が正常に行えなくなります。また、傷ついた部分から、毒素やアレルゲンなどが容易に体内へ侵入しやすくなります。

さらに、カゼインはグルテンと似た構造をしていることから、体内でカゾモルフィンと呼ばれる麻薬様物質となり、脳内の神経伝達物質の働きを悪くし、中毒を引き起こします。

こうしたカゼインによる健康被害は、前述したとおりです。

最近では、カゼイン(牛乳)にアレルギーを持つ子供が増えてきていることから、学校の給食や食堂で出される牛乳を飲ませないように要請する保護者も増えてきているようです。

グルテンとカゼインが身体に及ぼす影響

グルテンを含んだ食品を大量に摂取することで、身体には様々な影響が出ると考えられています。グルテンの摂取によって生じる体調不良や健康被害に関しては個人差があります。

グルテンが何らかの形で全身に悪影響を及ぼしているものの、特定の病気を発症する「明確な原因」であることを示す科学的エビデンスは存在しません。

また、身体の機能が低下する原因は複雑に絡み合っているため、万人に対して「グルテンが病気の根本的原因」と当てはめることはできません。

しかし、実際の臨床現場では、グルテンを摂取すると明らかに体調が崩れると自覚している患者は数多く存在します。こうした人たちがグルテンやカゼインの摂取をやめると、病気や体調不良が大きく改善したことも、クリニックレベルの症例では多数報告されています。

ここでは、グルテン(一部カゼイン)の摂取によってどのような健康被害が生じ得るのか、その例をいくつか紹介します。

グルテンとカゼインによって脳神経が興奮する

グルテンやカゼインなどのタンパク質は、体内で消化・吸収される際に「アミノ酸」まで分解される必要があります。しかし、グルテンやカゼインはアミノ酸まで完全に分解されず、「ペプチド」として小腸粘膜に入ることが確認されています。

グリアドルフィンは、グルテン由来のペプチドです。
カソモルフィンは、乳製品に含まれるカゼイン由来のペプチドです。

これらのペプチドは血液脳関門(けつえきのうかんもん)を通過できる化合物であることが示唆されています。これらのポリペプチド混合物が脳に入り込むと、脳のオピオイド受容体と結合します。

オピオイド受容体とは、神経細胞が「痛み」の情報を受け取る受容体のことを指します。オピオイド受容体に結合する物質として有名なのが「モルヒネ」です。モルヒネは、がん治療などに使われる医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)です。

モルヒネは、痛みを伝える脳の神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)に先回りして、オピオイド受容体に結合します。これによって、神経細胞は痛みのシグナルを受け取らなくなり、痛みを止めることができます。

「グルテン由来のグリアドルフィン」や「カゼイン由来のカソモルフィン」は、モルヒネと大変よく似た化学構造をしています。グリアドルフィンは、グルテオモルフィン(グルテン由来のモルヒネ様化合物)とも呼ばれます。

モルヒネに似た構造を持つグリアドルフィンやカソモルフィンが体内に入ると、血液脳関門(けつえきのうかんもん:BBB)を通過することが分かっています。血液脳関門は「脳の関所」とも呼ばれ、脳内に入って良いものと、入ってはいけないものを厳密に区別しています。

血液脳関門を通過したグリアドルフィンとカソモルフィンは、神経細胞にあるオピオイド受容体に結合します。すると、モルヒネが結合したときに生じる鎮静作用に加え、気分の高揚や快楽の増加、継続的な興奮が発生すると考えられています。

人によっては、「深い多幸感」に包まれることがありますが、その反対に、「強い不安感」を覚える人もいるようです。

グリアドルフィンとカソモルフィンがオピオイド受容体に結合する様子

Division of Genetics and Metabolismより引用・一部改編

こうしたことから、グルテンやカゼインが脳に作用し、麻薬を使ったときのような症状をもたらすのではないかという仮説が提唱されています。

加えて、グルテンを含んだ食品は、食べると幸せな気分をもたらしてくれます。グルテンを含んだ食品を一度食べてしまうと、次から次へと食べたくなってしまうのです。このことから、グルテンには、「強い依存性・常習性」があるとされています。

グルテンの摂取によって生じる病気

最近の研究から、グルテンは私たちの体に様々な問題を引き起こすということがわかってきました。下記にグルテンがもたらす代表的な症状について説明します。

セリアック病

小腸の上皮細胞(じょうひさいぼう)では、細胞同士がタンパク質の鎖によってしっかりと結びつき、これによって未消化のタンパク質や未消化の食べ物、異物を体内に侵入させないようバリアを築いています。これを腸のタイトジャンクションと呼びます。

腸に異物が入ってしまったとき、腸の上皮細胞が「ゾヌリン」というタンパク質を放出し、タイトジャンクションを緩めることで、腸粘膜の細胞間に異物を押し込めて免疫細胞(めんえきさいぼう)に引き渡しています。

免疫細胞は、体内に入り込んできた異物を攻撃し、体の外へと排除してくれる働きを担っています。しかし、ゾヌリンが余計に分泌されると免疫細胞が過剰に働いてしまいます。

小腸の上皮細胞にグルテン由来のペプチドが取り込まれると、体内に異物が侵入して来たと勘違いし、自分の小腸上皮細胞を攻撃してしまうのです。その結果、小腸の壁に炎症が生じたり、穴があいたりするため、小腸での栄養素の吸収が円滑に行えなくなります。

こうしたことから、セリアック病はグルテン(グリアジン)に反応し、ゾヌリンの分泌が過剰なることで生じる自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)と認識されています。自己免疫疾患とは、自分自身の正常な細胞や組織に対して過剰に反応し、攻撃してしまう病気をいいます。

セリアック病は、どの年齢においても発症する可能性のある病気です。セリアック病が発症する原因として、腹部の手術、ウイルス感染、過度のストレス、妊娠や出産などが挙げられます。

セリアック病とグルテン不耐症は混合されがちですが、「小腸のグルテンに対する反応」によって区別することができます。

グルテン不耐症は、「グルテンを小腸で消化吸収できない状態」をいいます。また、グルテン不耐症では、消化酵素の不足や欠如などの消化異常が見られる場合があります。

一方、セリアック病は、「グルテンに反応して自分の免疫細胞が小腸を攻撃し、その結果、小腸での消化吸収が上手く行えない状態」をいいます。

セリアック病の症状は多岐に渡り、他の消化器疾患と混同されることも少なくありません。具体的には次のような症状がみられます。

  • ガス、腹痛
  • 慢性の下痢、便秘
  • 体重の減少、増加
  • 青白い、悪臭の漂う便
  • 貧血
  • 関節痛
  • 性格の変化、うつ症状
  • 疲労、衰弱
  • 月経の乱れ
  • 不妊症、流産
  • 口の中の口囲潰瘍(こういかいよう)
  • エナメル質の歯退色あるいは損失
  • 発育や思春期の徴候の遅れ
  • 乳幼児期には、特に腹痛や便秘、下痢、発育遅延、体重の減少、感情コントロールの抑制困難などの症状

また、セリアック病と気付かずに放っておくと、小腸への損傷が悪化し、命にかかわる可能性もあります。具体的には、次のような疾患の起因になるといわれています。

  • 鉄欠乏性貧血
  • 早発型骨多孔症(そうはつせいこつたこうしょう)、骨減少症(こつげんしょうしょう)
  • ビタミンK欠乏症(出血のリスクが高くなる)
  • 中枢、周辺神経系障害
  • 膵不全(すいふぜん)
  • 腸リンパ腫
  • 胆のう機能不全
  • 疱疹状皮膚炎(ほうしんじょうひふえん)
  • 甲状軟骨病
  • 全身性紅斑性狼症(ぜんしんせいこうはんせいろうしょう)
  • 肝疾患
  • 慢性活動性肝炎
  • アジソン病
  • ダウン症
  • 関節リウマチ
  • ターナー症候群
  • ウィリアムス症候群
  • シェーングレン症候群
  • 線維筋痛症
  • 円形脱毛症
  • 硬皮症

重い病気につながらないためにも、予防を心がけ、思い当たる症状があれば、早めに検査を行うようにしましょう。

リーキーガット症候群

リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群:ちょうかんへきしんろうしょうこうぐん)は、何らかの原因で腸管壁に炎症が生じ、腸のタイトジャンクションが破壊されたり、緩んだりすることで腸に穴が開き、そこからバクテリアや毒素、未消化の食物が体内へと漏れ出す病気です。

リーキーガット症候群は、LGS(リーキーガット・シントローム)と表記されることがあります。

リーキーガット症候群を引き起こす原因と腸粘膜(タイトジャンクション)の破壊

リーキーガット症候群が発生するメカニズムはセリアック病と似ていますが、リーキーガット症候群では原因が複合的であり、条件を問わず誰でも発症しやすいのが特徴です。

リーキーガット症候群を引き起こす要因には次のようなものが挙げられます。

  • 睡眠不足
  • 運動不足
  • 不摂生な食生活
  • アルコールの多飲
  • 糖質や脂質の過剰摂取、腸内環境悪化による悪玉菌の増殖
  • カフェイン飲料や炭酸飲料の多飲
  • 小麦製品の過剰摂取によるグルテンアレルギー
  • 胃の消化機能の低下や消化器官のぜん動運動の低下
  • 鎮痛剤、抗生物質、ステロイド、ピルなどの長期服用
  • アレルゲン物質、重金属、化学物質へのばく露
  • 化学合成物質を添加した食品の大量摂取
  • 発酵食品や食物繊維を含む食品、オメガ3系脂肪酸など、腸内環境を整える栄養素の不足

腸内環境を悪化させるような生活習慣が長期にわたって続くと、リーキーガット症候群を発症するリスクが高まります。これらの要因は、現代において子供から高齢者まで、誰もが陥りやすいものばかりとされています。

リーキーガット症候群では、主に下記の症状が見られます。

  • 関節炎
  • 長期の便秘
  • 体重増加
  • 免疫力の低下
  • 栄養素の吸収不良によるエネルギー不足
  • 口臭や体臭の悪化
  • 喘息などの呼吸器疾患アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患
  • 過敏性腸症候群などの腸のトラブル
  • 原因のわからない頭痛や腹痛、発熱
  • うつ症状、統合失調症などの精神疾患
  • 食物アレルギーや花粉症
  • 更年期障害、子宮筋腫

腸は免疫機能の大部分を司る重要な臓器です。そのため、腸が損傷してバリア機能が低下すると、体に様々な悪影響が生じるようになります。人によっては、風邪や病気になりやすくなったり、ちょっとしたストレスにも負けてしまうことがあります。

リーキーガット症候群の症状は多岐に渡り、グルテン不耐症やセリアック病と同様に、他の疾患と間違われやすい病気です。そのため、一般的な病院を受診しても確定診断を受ける機会はごくわずかであるというのが現状のようです。

リーキーガット症候群ではないかと心当たりがある場合は、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践している医療機関で「リーキーガット症候群」の治療実績があるクリニックを探すのがよいでしょう。

精神疾患(うつ病、自閉症、発達障害)

グルテンには麻薬に似た中毒性があり、継続的な摂取によって脳へダメージを与えることが示唆されています。そのため、一部の専門家は、グルテンが記憶障害や情緒不安定、うつなどを引き起こす要因のひとつであるという見解を示しています。

実際に、うつ病や自閉症、発達障害などの患者がグルテンフリーを実践したところ、こうした病気の症状が緩和したケースが、臨床レベルで報告されています。

しかし、これらの症例は個別のクリニック単位で認められたものです。大規模な研究データによって証明されたものではありません。

よってグルテンフリーやカゼインフリーを実践したからといって、うつ病や自閉症、発達障害が改善したり、完治したりするとは断言できません。冷静な判断と、的確な情報収集を行った上で、自分や家族の治療として取り入れるかを検討しましょう。

グルテンフリーやカゼインフリーなどを中心とした「食事療法」によってうつ病や自閉症、発達障害を改善したことを紹介している書籍があります。参考にして下さい。

カンジタ症

カンジダとは正式名称をカンジダ・アルビカンスと呼ぶ真菌の一種で、どんなヒトの身体にも存在 するカビの仲間です。

カンジダは口腔内から消化管、性器、肛門に存在しますが、大部分は腸内に生息し、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を構成する菌の一 部として働いています。

腸内細菌叢にはビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」、大腸菌やクロストリジウム属のウェルシュ菌、ブドウ球菌などの「悪玉菌」、そしてバクテロイデスや嫌気性連 鎖球菌といった「日和見菌」の3種類があります。これら3つの菌のバランスは、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が 2:1:7 の割合で存在している状態が理想的です。

ただし、日和見菌は腸内に善玉菌が多ければ、善玉菌に味方をして何も悪さを行いませんが、反対に、腸内に悪玉菌が増えれば悪玉菌とともに、様々な悪さを働くような性質を持っています。そして、日和見菌の中で代表的なものが、カンジダ・アルビカンスです。

普段はおとなしいカンジダですが、腸内細菌叢のバランスが崩れて悪玉菌が多くなると、日和見菌であるカンジダは病原菌のように振る舞い始めます。カンジダが増えすぎてカンジダ症を発症すると、様々な病気を引き起こします。

カンジダ症は性行為からのみ感染する病気だと思われがちですが、そうではありません。カンジダは、性交渉以外にも、免疫力の低下や食生活の乱れ、ストレスによっても不必要に増殖し、さまざまな疾患を発症させる可能性があります。

カンジダは主に粘膜組織に寄生することが多いため、入口である口腔内から始まって、小腸、肛門や性器付近で症状が出現します。以下に体の部位別に発生するカンジダの症状の例をまとめます。

性器
・膣カンジダ症
・カンジダ性包皮炎(ペニスカンジダ症)
・性器や肛門の痒み
・おりものの増加(カッテージチーズ状)

消化器系
・消化不良
・腹部膨満感
・下痢 便秘
・胃けいれん
・胃酸逆流

呼吸器系
・ぜん息
・花粉症
・副鼻腔炎
・喉の腫れ
・咳
・アレルギー

皮膚・口腔内粘膜
・ニキビ
・爪が劣化する(ボロボロになる)
・肌あれ、ただれ
・虫歯
・舌の白い苔
・口腔カンジダ症

エネルギー代謝
・うつ
・神経症
・パニック
・不安、不眠
・集中力の欠如
・記憶力の低下
・頭のモヤモヤ

精神系
・疲労感
・極度の怠さ
・うつ症状
・気分の落ち込み

その他
・性欲の低下
・低体温
・甘い物への渇望

このような症状が引き起こされる原因として、カンジダによって分泌される毒素が挙げられます。

カンジダが体内で死滅したり、他の栄養分を摂取したりすると、老廃物として「アセトアルデヒド」が分泌されます。このアセトアルデヒドは、お酒などのアルコール類を飲んだ際に、体内で生成されることでも有名です。

アセトアルデヒドは「アセトアルデヒド分解酵素」によって分解されますが、このアセトアルデヒド分解酵素の働きが弱いと二日酔いが生じます。

また、アセトアルデヒド自体が体にとって有害な物質であるため、生成されると、人によっては吐き気、頭痛、動悸などを生じる場合があります。

カンジダが増殖すればするほど、体内で合成されるアセトアルデヒドの量は増え続けます。その結果、常に頭がぼーっとした状態になり、仕事や家事、 勉強に集中できなかったり、記憶力が落ちてしまったりすることがあります。

カンジダによって分泌されるもう一つの毒物に「グリオトキシン」というものがあります。グリオトキシンには白血球を殺してしまう働きがあり、免疫システムを抑制することがわかっています。その結果、炎症が生じやすくなり、花粉症やぜん息が悪化する場合があります。

カンジダ菌が増える原因としては様々なことが考えられます。以下に主な要因を記します。

  • 抗生剤を用いた治療
  • 薬剤の服用
  • 感染、炎症などによる免疫力の低下
  • 生活習慣
  • 食生活の乱れ
  • 腸内環境の悪化
  • 小麦粉(グルテン)の摂取
  • 乳製品(カゼイン)の摂取
  • 精製された砂糖や糖質の摂り過ぎ
  • 避妊薬やピルの使用
  • ストレス
  • 加齢
  • 老化
  • 歯科アマルガムに重金属の蓄積
  • 遺伝的要因

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学によるカンジダ症の治療では、グルテンフリーとカゼインフリーが強く勧められることが多いです。グルテンとカゼインのいずれのタンパク質も、腸内環境を悪化させてカンジダ菌を増やす原因になり得るからです。

カンジダ症の治療方法や食事療法に関しては、主治医やカウンセラー、管理栄養士に相談するようにしましょう。

カンジダ症に関しては、こちらの記事を参照して下さい。

カンジダの基礎知識
カンジダ菌が増えてしまう様々な要因
カンジダ感染を調べる検査や治療法
カンジダについて学ぶ
カンジダ友の会「結果にコミットメントしないカンジダ除去」初版テキスト+カンジダ除去レシピ(無料版)

カゼインの摂取によって生じる病気

私たち人間の体の仕組みを考えると、カゼインは心身のトラブルを招きやすい物質だといえるかもしれません。こうしたトラブルの多くは、グルテンの摂取によるものと重複しています。

カゼインの摂取により、次のような病気を発症することがあります。

  • 自己免疫疾患(リウマチ、バセドウ病など)
  • 発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、多動注意欠陥障害など)
  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症の悪化
  • ターナー症候群
  • ウィリアムス症候群
  • シェーングレン症候群
  • 生理不順
  • 不妊症
  • 疱疹状皮膚炎
  • 円形脱毛症

このほかにも、カゼインを継続して摂取することで、様々な疾患が生じる可能性があることがわかっています。

グルテンやカゼインによる影響を調べる検査

自分がグルテンやカゼインから何らかの影響を受けていると認識している場合、いくつかの検査を受けることで、現在の自分の体の状態を把握することができます。

ここでは、グルテンやカゼインの摂取に対して自分の体がどう反応しているかを推察する手段として、遅延型フードアレルギー検査とグルテン・カゼインぺプチド検査、有機酸検査を紹介します。

遅延型フードアレルギー検査

食品アレルギーには、その食べ物を摂取した時点で症状が現れる「即時型アレルギー」と、食べてから数時間~数週間後に体調不調を示す「遅延型アレルギー」があります。

即時型フードアレルギーは、lgEという抗体が発症に関係します。遅延型フードアレルギーは、lgGという抗体によって症状が誘発されます。

抗体(こうたい)とは、病原体などが体内に侵入してきたとき、その異物を認識して結合することで、体から排除するように働くしタンパク質の総称です。抗体は、免疫グロブリンともいいます。

遅延型フードアレルギー検査では、グルテンや牛乳、酵母(カンジダ)といった項目があります。高い値で反応が出ている場合は、それらの食品に対してアレルギーがある可能性があります。

あるいは、前章で説明したように、グルテンやカゼインによって腸の上皮細胞が破壊された結果、リーキーガット症候群になっている可能性が考えられます。

グリアドルフィン(グルテン)やカソモルフィン(カゼイン)によって腸のバリア機能が損傷を受けると、病原体や未消化のタンパク質などが体内に侵入してしまいます。その結果、体それらを異物と認識することで、アレルギー反応が起きてしまいます。

グルテンやカゼインによって腸内環境が悪化している場合、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を除去したり、ローテーションを行っただけでは根本的な解決には至らないことが多いです。

極端に偏った食事をすることで、必要な栄養素の摂取ができなくなり、栄養失調を招くリスクすら高まります。

遅延型フードアレルギー検査を受けて、たくさんの食品に高い反応を示していた場合は、まずアレルギーが生じている原因を理解することが大切です。

そして、腸内環境が悪化している原因がグルテンやカゼインによるものなのか、じっくり考えてみましょう。勿論、主治医やカウンセラ、管理栄養士から適切なアドバイスを受け、それを守ることも必須です。

遅延型食物アレルギー検査に関する詳細は、下記を参照して下さい。
栄養療法で実施される検査 → 遅延型フードアレルギー

グルテン・カゼインぺプチド検査

グルテン・カゼインぺプチド検査は、尿中に排泄された小麦と乳製品由来の未消化のペプチドを検出する検査です。朝一番の尿を採取することで、これらのペプチドを検査します。

グリアドルフィンとカソモルフィンのアミノ酸配列は大変よく似ています。チロシン(Tyr)とプロリン(Pro)から始まり、途中のプロリン(Pro)の配列は同じです。


グルテン+カゼインペプチドテストより引用

下記はグレートプレインズ・ラボラトリー社から提供されているグルテン・カゼインぺプチド検査のサンプル結果です。

この検査は専門的な検査であるため、自閉症や発達障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)を専門とするクリニックで扱っていることが多いようです。

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践しているクリニックで取扱いがない場合であっても、患者の要望に応じて取り寄せてくれるかもしれません。詳細は各クリニックに問い合わせしてみましょう。

有機酸検査

カンジダ症に感染しているかを推察するための手段として有機酸検査を行われる場合があります。有機酸検査は、グルテンやカゼインによる影響を間接的にみる検査といってよいかもしれません。

腸内環境が悪化していたり、カンジダによる代謝物が多量に生産されていたりする場合は、普段の食事でグルテンやカゼインを大量に摂取していないか、また、それらの食品が体に害を与えていないかを考えることができます。

有機酸検査は、これ単体で行われる機会は少なく、腸内環境を把握するための便総合検査(CSA)や遅延型フードアレルギー検査を組み合わせて用いられることが多いです。

有機酸検査に関する詳細はこちらを参照して下さい。
栄養療法で実施される検査 → 有機酸検査

日本でのグルテンフリーへの取り組み状況

アメリカやオーストラリアなどの諸外国では、グルテンフリー生活を送っている人が多くいます。スーパーでもグルテンフリーの食品が当たり前に並んでいますし、レストランや菓子店にもグルテンを除いた商品が提供されています。

一方、日本では完全なグルテンフリー生活を行うには、努力と工夫が必要です。日本人が昔から使ってきた醤油や味噌には、一般的に小麦が原料として使われています。小麦粉が含まれていない「たまりしょう油」を代わりに使うことができますが、こうした「グルテンフリー」の調味料を探すのは手間やコストがかかることが多いです。

また、スーパーで買えるほとんどの食品には添加物が使用されています。多くの添加物には、グルテンが使われているため、食品表示をかなり注意して見ない限りグルテンを摂取してしまうことになります。

一見すると、日本食はヘルシーというイメージがあります。しかし、私たちが想像するよりも、はるかに多くの調味料や食品にグルテンが含まれています。海外ほど「グルテンフリー」が浸透していないこともあり、日本でグルテンフリーを行うには、他国に比べてまだ少しハードルが高いといえるかもしれません。

グルテンフリーのレストランや食品は増えている

日本においてグルテンフリーを行うにおいて、不便な点があることは事実です。しかし、昔と比べると、アレルギー体質への対応などから、グルテンを使っていない食品も販売されているお店が増えています。

たとえば、小麦ではなく、米粉を使ったうどんやトウモロコシを原料としたパスタなども売られるようになりました。また、小麦を使っていない醤油も売られています。

現在は、添加物やアレルゲンに対する食品表示基準が法律上で詳細に決められています。そうした表示を注意深く見ることで、グルテンフリーの食品を購入することができます。

ネットショッピングを活用すれば、(少々値段は高いかもしれませんが)自宅にいながら「グルテンフリー」や「カゼインフリー」の食材を買うことができます。

外食でもグルテンフリーのメニューを扱っているレストランやパン屋が増えてきています。インターネットを利用すればグルテンフリーのレストランを簡単に検索できるので、昔に比べると、グルテンフリーも実践しやすくなっているでしょう。

グルテンフリーやカゼインフリーに対する関心は益々高まっているため、今後もより利便性が高く、バラエティに富んだ商品やサービスが展開されることが期待できます。

グルテンやカゼインの消化を促すサプリメント

これまで述べてきたように、海外でのブームを受けて、日本でグルテンフリーは定着しつつあります。また、グルテンフリーの食品やレストランが増え、グルテンフリーを取り入れやすい環境が少しずつ広がっています。

こうしたことを受けて、サプリメントでもグルテンやカゼインへの対策ができるようになってきました。

たとえば、グルテンの消化を助ける働きのある「ジペプチジルペプチダーゼIV」という消化酵素を含んだサプリメントが売られています。こうしたサプリメントを、グルテンが含まれる食事を摂る前に内服することで、グルテンによるさまざまな症状を軽減させることができます。

グルテンを除いた食事を意識して行うこと以外にも、サプリメントでもグルテン対策がとれるようになっています。

グルテンやカゼインの消化酵素サプリメント(参考)

グルテンやカゼインの消化を促すサプリメントは、こちらをご覧下さい。

特にお勧めは「Doctor’s Best ベスト消化酵素」です。(写真中央)
小麦粉グルテン、牛乳カゼインの両方を分解する酵素の「DPP-IV」が含まれています。

乳牛に含まれる抗生剤の問題

第二次世界大戦後、牛乳は健康に良いものだという情報が伝わり、パンなどの小麦製品と共に日本の食卓に上ることが多くなりました。これは、当時アメリカで大量に余っていた小麦粉と牛乳を、GHQが日本の学校給食やで消費するために画策したとされています。

戦争から半世紀以上が経過した現在では、スーパーやコンビニには当たり前のように牛乳や乳製品が売られています。乳製品の消費量の増加に伴い、牛乳を大量に流通させるための生産現場にも変化が生じました。

乳牛として飼育されている牛からはいつでも牛乳が採れるわけではありません。牛も人と同様に、子どもを出産した後にしかお乳が出ないようになっています。

しかし、牛が自然的に妊娠し、搾乳するといった方法で牛乳を作っている酪農家はほとんどいません。多くの場合、人工授精によって妊娠・出産させることで、安定した量の牛乳を出荷できるように調整しています。

自然の環境で育つ牛は、一生のうちに6~7頭の子牛を出産するといわれています。一方で、乳牛として家畜されている牛は、搾乳可能な期間が終了してから2カ月経つと、再び牛乳を搾れるよう、すぐに人工授精で妊娠・出産させられます。

このように、人工的な手段を用いることで、私たちは牛乳や乳製品を安定して手に入れることができています。

ところが、こうした不自然な行為は、牛の健康を損ないます。私たち人間が同じようなことを行えば、体調を崩すことは容易に想像できます。牛にとってもそれは同じことだといえます。

特に、乳牛においては、妊娠出産を無理に繰り返すことで、産後に乳腺炎(にゅうせんえん)が生じる牛も少なくありません。

乳腺炎とは母乳の通り道である乳管が詰まり、乳腺が炎症を起こしてしまう病気です。授乳中の母親がなりやすいトラブルの代表ともいえる疾患です。

一般的に牛の乳腺炎への治療では、エサに抗生剤を混ぜて症状を抑えます。そうすることで、一時的に炎症を抑えることができます。

抗生剤は病原菌を殺したり、増殖したりするのを抑える作用があります。細菌感染によって辛い症状が生じている際には、とても有効な薬物ですが、同時に副作用に注意が必要な薬です。

抗生物質は、有害な菌を殺すことができる一方で、動物の体に大切な働きをする菌をも攻撃してしまいます。特に腸内環境を整えてくれる善玉菌へのダメージは大きく、働きを弱めてしまいます。

腸は免疫系の8割を担う重要な臓器です。そのため、善玉菌が減り、腸内環境が崩れれば免疫が低下し、さまざまな病気の発症につながります

抗生物質を投与した乳牛から搾乳された牛乳をヒトが口にすれば、それらの副作用がヒトの体内で生じる可能性があります。

このようなことから、家畜への投薬の使用種類や量、頻度は農林水産省によって定められた「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」によって、厳格に規制されています。

特に抗生物質は「要指示医薬品」に分類され、生産者が勝手に使用することは認められていません。家畜に対して抗生物質を使用する場合は、獣医師免許を有する人が使用するか、獣医師の処方箋や指示書が必要になります。

また、投薬を行った後の数日間は、搾乳した牛乳を商品にしないように決められています。さらに、その期間が終了したら、一度薬物の残留度合いを検査し、安全性を確かめることが義務付けられています。

このように、牛への投薬方法やその後の対応は、厳しく決められているため、牛乳や乳製品は安全な食べ物であると考える人が多いと思います。

しかし、薬物の使用禁止期間は、日にちを守れば薬の成分が全く残留しないというわけではなく、「ヒトにとって危険性がない量になるまでの期間」という考え方を基に決められたものです。そのため、継続的に牛乳や乳製品を摂取すれば、上記のような副作用が出る可能性がないとは言い切れません。

肉牛や乳牛に関わらず、「発育スピードをあげる」抗生物質を使用している家畜業者は多いようです。

もし、抗生剤の影響が心配な場合は、「自然の環境で飼育された牧草牛」から搾乳した牛乳や乳製品を選ぶようにしましょう。こうした自然な乳製品は数が限られており、商品価格も高額な場合がありますが、インターネットなどを活用して上手に取り入れる工夫ができます。

分子整合栄養医学で実施されるグルテン・カゼインフリー

これまで述べてきたように、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を実践する医師の中には、治療の一環としてグルテンフリーやカゼインフリーを推奨している人たちがいます。

グルテンやカゼインがあなたの健康に悪影響を及ぼしていると感じた場合は、グルテンフリーやカゼインフリーを実践することで、体調不良や原因不明の病気を改善することが期待できるでしょう。

これまでどのような治療を行っても改善しなかった症状や病気が、グルテンフリーやカゼインフリーを取り入れたことで治ったケースが臨床レベルで多数確認されています。

特に、うつ病や統合失調症などの精神疾患、自閉症などの発達障害に対しては、効果が高い方法として指導されることが多いようです。

また、グルテンフリーやカゼインフリーは、頭痛やめまい、倦怠感などの日常的に起こる症状の改善にも大変有効です。さらに花粉症やアトピー性皮膚炎などの慢性的なアレルギー疾患を代表に、様々な病気に対しても高い治療効果を挙げています。

グルテンやカゼインを食事から取り除くことはそれなりの労力とコストを必要とするかもしれません。しかし、「グルテンとカゼインを除去する」というシンプルな考え方は、複雑なカロリー計算と比較して分かりやすいです。

また、薬を用いて病気を治療することに比べて、副作用などのリスクは大幅に軽減できます。

冒頭で触れたように、健康増進や美容の範囲を超えて、「病気の治療」を目的とした厳格なグルテンフリーとカゼインフリーを実践する場合は、長所と短所をよく調査し、自分の正確や体質、ライフスタイルに合致しているものかを考える必要があります。

そうした検討を経てグルテンフリーとカゼインフリーを実践すると決めた場合は、然るべき医師や管理栄養士の指導の元で行うようにしましょう。

グルテンフリー・カゼインフリーのお菓子レシピ

グルテンフリーやカゼインフリーは私たちの健康維持には、効果的な一つの方法です。ですが、現代は小麦や乳製品が使われた食品で溢れているため、私たちの生活からそれらを抜くことは大変難しいことと感じる人も多いと思います。

そこで、最後にグルテンフリーやカゼンインフリーのお菓子のレシピを紹介します。ご自宅で簡単に作ることができます。ご興味のある方は試してみて下さい。

サツマイモたっぷりの大豆粉蒸しパン

材料(直径8cmカップ 6~7個分)

  • 大豆粉 100g
  • 重層またはベーキングパウダー 大さじ1/2
  • てんさい糖 50g
  • はちみつ 大さじ1
  • 卵 1個
  • 豆乳 170cc
  • 菜種油 大さじ1/2
  • お酢 大さじ1/2
  • さつまいも(1cmの角切り) 1本

作り方

  1. 大豆粉、重層、砂糖をボールに入れ、まんべんなく混ぜます。
  2. 別のボールにはちみつ、卵、豆乳、菜種油、お酢を入れ、泡だて器でしっかりと混ぜます。
  3. ①を②に加えて、泡だて器で混ぜ合わせます(小麦粉ではないのでしっかりと混ぜて大丈夫です)。
  4. ③を型の2/3の高さになるように流し込み、上からサツマイモをのせて蒸し器に入れ、約30分間、中火にかけます。
  5. 竹ぐしなどを生地に指し、中身まで火が通ったのを確認できたら完成です。

豆乳プリン

材料(直径8cmカップ 5個分)

  • 卵 2つ
  • 豆乳 300cc
  • てんさい糖 大さじ2
  • バニラエッセンス 数滴

作り方

  1.  ボールに卵と砂糖を入れ、泡だて器でしっかりと混ぜ合わせます。混ざったら豆乳、バニラエッセンスを加えてさらに混ぜます。
  2.  ①をこし器でこしながら、型にゆっくりと流し込みます。
  3.  蒸し器に入れて、沸騰したら10分間、弱火で火にかけます。その後、10分間予熱で火を通します。
  4.  あら熱をとり、冷蔵庫で十分に冷やしたら完成です。カラメルソースなどをかけてもおいしいです。

グルテンフリーの場合、他にも、唐揚げやてんぷらなどの揚げ物の衣を米粉にしてもおいしく仕上がります。

また、チヂミの生地は通常、小麦粉が使われることが多いですが、米粉と片栗粉を使うと、サクッとした触感が出やすくなります。さらに、シチューなどでホワイトソースを作る際も、米粉を代用することができます。

カゼインフリーを実践する場合は、牛乳を使ったほとんどの料理で豆乳を代用品として使うことができます。例に挙げたホワイトソースも米粉に置き代えるだけでなく、豆乳を牛乳の代わりに使用しても作ることができます。

豆乳は加熱すると分裂しやすいため、長い間火にかけないようにするなどの工夫が必要な場合もあります。

監修:ルークス芦屋クリニック 城谷昌彦
レシピ協力:理学療法士 富永尚美