本日は東京八重洲にて、分子整合栄養医学のプレ講義が行われました。

午前中はヘルシーパスの田村社長による「サプリメントの基本」、そして、午後からは小池雅美先生による「LIVE! 症例解析」が行われまして、かなり内容の濃い一日となりました。

順番は逆ですが、今日は「実践講座プレ講座 報告レポートNo1」として、小池先生のライブ症例の様子から書きたいと思います。

検査結果の数値の意味が立体的に立ち上がる瞬間

4月9日から開講する第8期分子栄養学実践講座のプレ講座として、午後から小池雅美先生による「即興での血液データ解析」が行われました。会場の参加者から寄せられた血液検査のデータを、小池先生がその場で解析・解説していくという、未だかつてない講演でした。

解析する対象となったのは、会に参加された2名でした。

その場で配られた血液データを見ながら、小池先生は患者役の人に、実際に問診を行いながら、検査結果から推察される病態や症状がないかを尋ねます。

そして、体のコンディションと照らし合わせながら、不調の原因を深く探っていき、最後には改善方法や食事、サプリメントの選択方法についてアドバイスしていきます。

大勢の聴衆の前で解説を繰り広げながら、小池先生の頭の中で、患者に対するいくつかの仮説を組み立てていきます。同時に、患者役の人に追加の質問を重ねながら、一般人の参加者にも分かるように「なぜ○○という質問をしたのか」「どうして□□について聞いたのか」という丁寧な解説を行っていきます。

一瞬の迷いもなく、次々と考察を述べながら、現在の体の様子について所見を述べていかれるのですが、あまりにも短時間でスムーズに展開される解析に、セミナー参加者のメモを取るスピードが追いつきません。

小池先生の講義内容を必死にエクセルに落とした図↓

しかし、小池先生のテンポ良い解説に耳を傾けているうちに、症例の人の「人物像」や「ライフスタイル」、「栄養状態」が手に取るように見えてきます。一本の古い大木から、見事な彫刻が掘り出されていくかのように、無味乾燥なデータから生身の人間の実存が浮かび上がってくるではありませんか!

症状の奥に何かが潜んでいる-検査データを「そのまま読まない」のが小池流

1本目の症例の方は、「お腹トラブルを抱えていて、タンパク質の摂取・消化・吸収・代謝が良好ではない」という、よくあるやり取りからスタートしました。

通常ならここで、「肉や魚などの動物性タンパク質を食べると胸やけしますか?」と質問すると思いますが、小池先生はもっとレベルの高い視点から患者の状態を捉えています。

ひととおりの血液検査のデータを眺めたあと、小池先生がおもむろに切り出した言葉はコレ。

・お風呂など、水で濡れている床は平気ですか?
・手足は冷えますか?
・デパートの1階の化粧品・香水売り場にいることができますか?
・一日のうちで一番元気な時間帯はいつ?

ええええ!血液検査のデータから一体何を読み取ろうとしているの( ゚Д゚)

打者の手もとで曲がる”小池投手の鋭い変化球”を目の当たりにして、聴衆一同、無言の胸騒ぎが発動!!

さて、内心穏やかではない我々をよそに、小池先生の解析は淡々と進んで参ります。

白血球、赤血球、ヘモグロビン(Hb)、MCV、MCH、MCHC、血小板数、リンパ、単球と読み進め、さらに、ケトン、ヘモグロビン、アルブミンなど、患者の主訴に関係のありそうな項目をピックアップしていきます。

それぞれの項目に対する基準値を述べた後に、実際の検査数値が妥当なのかを見ていきます。また、一見すると、問題の内容な数値であったとしても、その数値をそのまま読んでいいのかどうかを詳細に解説していきます。

身体機能の一部が低下しているため、その機能を補完するように体がバックアップしていることがあります。こうした状況では、数値を額面通りには読むのではなく、そこに潜む問題点をあぶり出していきます。

患者の訴える主訴から「タンパク不足がある」ことが明確にも関わらず、タンパク代謝に関わる一部の数値が立派すぎる場合は、数値を押し上げている様々な要因を疑うのだそうです。

また、ASTとALTの相対的なバランスから「隠れ脂肪肝」を類推することに加え、主訴と整合性が取れていないγ-GPTとUN(尿素窒素)の数値から消化管出血や便秘、脱水を考慮に入れることに関しても教えて頂きました。

講義を通して、ALPやLDなどの酵素活性に必要なミネラルが不足していることで、どのような影響が体に生じるかについても、解析の流れに沿って分かりやすく伝えて頂きました。

銅や亜鉛といったミネラルは、ドパミンやノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、エピネフリン(アドレナリン)などの神経伝達物質の合成にも関与しているため、患者の性格や気分にも大きな作用をもたらします。そして、交感神経が常に優位になっているため、体が緊張状態になっていることが読み取れるのだそうです。

患者の体形や骨格、呼吸の様子からも様々なことが深読みできる

小池先生による「ライブ症例」では、数値を読み進めるだけでなく、患者役の人の体に実際に触れたり、体の様子をよく見て観察する分析手法も公開されました。

  • 深く息を吸って呼吸をしたときに、患者の肩が上がらないか。
  • 骨格は華奢でスリムか。

こうしたことからも、患者の栄養状態や自律神経のバランスを、一定の水準まで読み取ることが可能になります。

足りない栄養素を単にサプリで補うのは「糠に釘(ぬかにくぎ)」?

1本目の症例では、不足している栄養素のひとつに「亜鉛」がありました。これは、ALP(アルカリホスファターゼ)という酵素の活性状態から類推した結果です。ALPの補酵素(ほこうそ)に、亜鉛が使われます。

不足している栄養素が分かると、すぐに亜鉛のサプリメントのブランドや用量、飲むタイミングなどを知りたがってしまいますが、その前に考えるべきことがあります。「亜鉛が欠乏していることの裏を取る」ということです。

亜鉛はインスリンの分泌や細胞分裂に関係しています。後者については、亜鉛が不足すると細胞分裂が規則正しく行われなくなるリスクが生じるため、人によっては傷や虫刺されの「跡(あと)」が残りやすくなります。そのため、皮膚に跡が残りやすいかどうかを、患者に確認していくのですね。

亜鉛サプリを摂取する場合には注意が必要です。亜鉛は金属元素(きんぞくげんそ)であるため、体内で消化・吸収するには胃酸(塩酸)が必要です。

胃酸を作るには鉄が必要です。鉄とビタミンCは、「胃酸のpHをより酸性へと傾ける」とされています。

また、亜鉛も胃酸を合成するのに必要です。そして、先ほど述べたように、亜鉛や鉄などのミネラルが体内に吸収されるには、胃酸が必要です。

つまり、胃酸が十分な酸性を維持しておらず、アルカリ性に傾いている(pHが高い)と、亜鉛や鉄の吸収率が落ちてしまいます。反対に、十分な量の胃酸があると、ミネラルの亜鉛や鉄はイオン化し、腸管内で吸収されやすくなります。

したがって、今回の症例のように「亜鉛が不足している人」には胃酸の分泌低下が見られる場合があり、また、胃酸の分泌が低下することで亜鉛の吸収率が落ちると考えられます。

そのため、胃酸が出ていない状態で亜鉛や鉄のサプリメントを摂取すると、気分が悪くなる人が出るそうです。このように、亜鉛や鉄のサプリメントを摂取しても、胃酸の分泌量が不足して吸収することができなければ、血液検査の数値は改善されません。

亜鉛のサプリメントは、ビタミンCやビタミンAと一緒に摂取することで、細胞分裂の効果がより高まるとされています。

単純に亜鉛のサプリメントを摂取するのではなく、患者の体調や身体機能といった「個体差」を考慮に入れながら、サプリメントの飲み方をアドバイスする必要性があることを改めて学びました。

2本目の症例はもはや神業-奇跡を目にしたあなたは本物を知ってしまった

1本目の症例に引き続き、2本目の症例が行われました。2本目の症例は、さらに私たちを驚かせる内容でした。血液検査のデータには、患者の性別はおろか、身長や体重、主訴、既往といった情報が一切何も書かれていません。そこにあるのは、ただの「検査数値」だけ。

小池先生自身も、この症例は一体誰のデータなのか、全く知りません。

解析するにも一筋縄ではいかないであろうデータを、一体どうさばいていくのか。小池先生の本領発揮!

この症例には初めから「終着点」が用意してあったのか?

何の与件(よけん:研究や調査に着手する際に与えられた条件)も提供されないまま、いきなり始まった血液検査のデータ解析。症例が一体誰のものか分からないのですから、頭をフル回転させ、患者の様子を想像しながら読み解いていくしかありません。

分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学で実施される血液検査の意義は、「体の障害の程度を類推し、病気の部位の広がりを考え、病気の根本的原因を推測する」ことです。しかし、何の情報も与えられないままであれば、「個人のイマジネーションの域を超えない考察」に陥る可能性が高くなります。

悶々としながらデータに目を通す私たちとは対照的に、小池先生はテンポよくデータを読みあげていきます。

白血球と赤血球から始まり、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、MCV、MCH、MCHC、網状赤血球に差し掛かったあたりで、即座に「男性の数値」と言い当てた小池先生。(まだ、開始して5分経ってないんですけど…)

AST、ALT、LDH、γ-GTといった肝機能を見る項目に進むにつれて、どんどんと「核心」に迫っていきます。

そして、解析の時間が10分と経たないうちに、下記の仮説を立てられました。

・症例は男性
・脂肪肝
・アルコール飲んでるかも
・糖質過剰(チャーハン、ラーメン、餃子系)
・がっちりした体形
・神経質
・早食い

伏線は全て回収され、その華麗な展開に衝撃を受ける

「この症例を出された方は、どなたですか?」小池先生の呼びかけに応じ、聴衆の中から1名の男性が立ち上がりました。
(おお!やっぱり小池先生の言うとおり男性なんだ!)

症例のご本人が登場し、さらに詳細な問診が続けられていきます。身長、体重、年齢、普段の食事内容、便通の状況、仕事の様子など、ひとつひとつをヒアリングしながら、小池先生が最初に立てた仮説と照合していきます。

そして再び質問を重ねます。

・普段は気分は穏やかですか?イライラしますか?
・チョコレート好きですか?
・コーヒーやお茶はよく飲みますか?
・体温調節が難しかったり、気分が高揚したりしますか?

問診や症状、血液データの「何」に基づいて、こういう質問をしているのかを、小池先生は詳しく解説して下さいました。つまり、関連性がなさそうに見える質問には、すべて「明確な意味」があったのです。

詳細については書けないので割愛しますが、小池先生は、今回の症例に関して、食事や生活状況、腸内環境、ホルモンの分泌、神経伝達物質、血糖の調節など、あらゆることが複合的に絡んでいることを、ひとつずつ丁寧に解説して下さいました。

血液検査という「スナップショット」に残された足跡から、問題解決に至るための巧妙な道筋を、わずかな時間のうちに導き出す方法を全て公開して下さいました。

超ハイレベルな解析スキルは自分にも身に付くのだろうか

さて、第8期の分子栄養学実践講座の「プレ講義」はあっという間に終了しました。いや、正確に言えば、余りにも血液検査の解析が美しく、滑らかに進んだために、圧倒的な余韻を残したまま終わってしまったというのが正しいのかもしれません。

医療関係者の方と言えども、このようなスラスラと血液検査のデータを解析できる方はいないと思います。(いたら教えて下さい。)

一朝一夕には身につかないけど、目標にすることができる

今回、小池先生にご担当頂いた「ライブ症例!」。誰しもが小池先生のように、血液検査データを解析することができたらいいなと願うはずです。

ただ、この境地に達するには膨大な時間と労力を投資しなくてはいけないことは、誰の目にも明らかです。小池先生のような高いスキルを習得するのは、数ヵ月ではとても難しいでしょう。到底、小池先生のようにはなれないと、最初からあきらめてしまう人もいるかもしれません。

しかし、本日、東京に集った私たちは、分子整合栄養医学の本質に迫った医師の力強さを改めて知ることができました。

医療行為という実践的なアプローチを取りながらも、血液検査のデータやサプリメントに頼らなくても、栄養療法で患者の抱える問題に向き合い、解決するための方向に導いてくれるリーダーがここにいるのです。

  • 分子整合栄養医学って、検査をすることがゴールじゃないんだけどな。
  • 分子整合栄養医学って、サプリを飲むことや糖質制限をするのが目的じゃないんだけどな。

私たちの中にある「モヤモヤした感情」を吹き飛ばして、「私たちが求めていたのはこれ!」と思わせてくれるのが、小池雅美先生です。そして、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー医学を勉強したいと本気で思う人であれば、すぐに小池先生と一緒に学ぶ機会が得られます。

4月から実践講座が始まります

2017年の4月9日から第8期分子栄養学実践講座が始まります。第1回目の東京会場では「検査の読み方」と「症例検討会」が行われます。

過去に参加された方で、今期も継続される方は、新たなステップアップの場として活用して下さい。

そして、今期から初めて参加される方は、一緒に高みを目指していきましょう。実践講座に参加されると、基礎編と応用編のテキストを筆頭に、過去に開催された講義動画や資料を全てみることができます。

勿論、本日開催された、小池先生による「ライブ症例解析」のもようもご覧頂けます。

予習動画や予習テキストは、膨大な量に及びます。よって、参加を検討されている方は、早めにお申込みされ、事前にある程度の予習をされることをお勧めします。

第8期分子栄養学実践講座の開催日時と講義テーマはこちらです。

ではまたお会いしましょう♪