2016年の4月にウィリアム・ウォルシュを東京にお招きして開催した「エピジェネティクスセミナー」には、栄養療法や統合医療に関わる多くの先生方にご参加頂きました。

日本ではその3年前にベン・リンチ博士を呼んで「メチレーション治療」の概念についてセミナーをしてもらう機会がありましたが、今回のウォルシュ博士のセミナーではより具体的な治療と症例をメインに講義をして頂きました。

ベン・リンチの講義を受けて基礎知識を得ていたドクターは、ウォルシュの講義を聞くことでより臨床例は具体的な診断方法や治療手順、プロトコルを把握することが出来たのではないかと思います。

ウォルシュ博士を紹介してくれたジャック

もともとウィリアム・ウォルシュ博士のことを私たちに紹介してくれたのは、ニュートリションレポーターを発行しているジャック・チャレムでした。

ジャックはアメリカ人にしては珍しく控えめで、自己アピールが少ない謙虚な方ではありますが、実は米国のオーソモレキュラー医学の世界では大変な有名なのです。

数年前に、宮澤先生とジャックが共同で執筆した文献がJOM(ジャーナルオブオーソモレキュラーメディスン:Journal of Orthomolecular Medicine)に掲載されたことがありました。

文献のタイトルは「Immunoglobulin G and Food Allergies: Beyond the Controversy」
日本語では「免疫グロブリンG(IgG)フードアレルギー:有用性に議論の余地なし」です。

JOMはカナダに総本山を置く「国際オーソモレキュラー学会」が1970年代から発行している機関誌です。

栄養療法に関連する最新の文献やニュースが網羅されており、海外のオーソモレキュラー医学のドクターたちが購読している伝統あるジャーナルです。

このJOMに、執筆からたった数ヵ月という驚異的なスピードで掲載の許諾されたのは、ジャックの力添えをしてくれたお陰です。

2016年の4月に初めてウィリアム・ウォルシュ博士を紹介してもらった時も、ジャックがサポートしてくれたお陰で交渉がスムーズに進みました。

「ジャックからの紹介なら…」ということで、ウォルシュ博士は二つ返事で来日講演を引き受けてくれたのです。

もし紹介者がジャックでなければ、世界中を旅して臨床医の教育に当たっているウォルシュが、多忙なスケジュールを調整して、極東アジアの小国である日本まで来てくれることはなかったかもしれません…

分子から遺伝子の世界へ

私が「分子整合栄養医学」という治療法がある事を知ったのは2013年の事でした。

一人の患者として溝口徹先生や櫻本薫先生の書籍を手に取ったことがきっかけで、分子整合栄養医学や糖質制限のことを知るようになったのです。

そこから「オーソモレキュラー医学」について少しずつ学び始める訳ですが、それからわずか数年で分子栄養学の世界は遺伝子の領域へと拡大しつつあることは素人の私も感じ取っていました。

というのも、栄養療法を実践されているドクターの中には、2013年以前から、既にメチレーションや遺伝子治療の概念を持ち込み、臨床で実践している先生がいたからです。

情報収集力に長けていて、英語が出来るドクターはフットワークが軽いですから、どんどん海外の学会に参加して最新の治療法を学んでこられます。

そのうちの一つが、遺伝子多型(スニップ)に対する治療でした。

遺伝子に個体差が生じるために、脳を含めた全身に大きな障害が出るという考えに基づいて、統合失調症やうつ病、自閉症などの難しい病気の治療法を行うというものでした。

米国では既に多くの治療実績があり、この道の専門家と呼ばれる人たちが数多くいました。

その中で代表的な人物がエイミー・ヤスコやベン・リンチ、コリン・ネインバーグらだったのです。

こうした遺伝子治療の先駆者たちは「自閉症」に焦点を当てた治療を数多く成功させていました。

米国は日本とは事情が異なり、自然療法士や代替医療家が行える治療も幅広く、医師ではなくこうした専門家から直接アドバイスを受けながら治療をしている人が多いです。

勿論、彼らは医師免許を取得していないので直接的な医療行為は行うことができませんが、日本に比べて自然療法士の影響力や発言力は強いという印象を受けます。

また、アメリカでは人口の約70人に1人が自閉症児であり、年々その数は増加していると言われています。

そうした事情も相まって、自閉症の子供たちを救いたいと考える医師や保護者らから支持を得て、このような遺伝子療法の概念が広がっていったようです。

3万人の精神疾患を治療し続けた人生

ウォルシュ博士も自閉症の治療に積極的に取り組んできました。
これまでに6,500人もの自閉症の患者を診てきたそうです。
エピジェネティクスセミナーでは、自閉症の症例についても取り上げてくれました。

他にも、ウォルシュが臨床に取り組んできた病気は数えきれない位あります。

  • 行動障害 10,000名
  • ADHD 5,600名
  • 統合失調症 3,500名
  • うつ・不安症 3,200名
  • 双極性障害 1,600名
  • アルツハイマー病 120名

こうした数字を見ても、あまりにも膨大でピンときません。

これらの患者を合計すると優に3万人を超えます。

3万人の精神疾患の患者を治療した経験を積んだウォルシュには、一体どんな世界が見えているのでしょうか。

きっと問診する前の段階、つまり、一目見ただけで患者の生化学的タイプや遺伝子の異常が見抜けるのかもしれません。

疾患ごとに現れる共通の行動パターンや思考パターンも、楽に言い当てることができるのかもしれません。

ウォルシュは子供から大人まで、あらゆる種類の人々を見てきました。

日本とは異なり、アメリカでは治療する患者の人種や民族、宗教、文化的背景、食習慣は個人によって大きく異なります。

中には、前回のメルマガで紹介したように、日本人には信じられないような殺人を犯した囚人や暴れまわる患者がいました。

手の施しようがなく、どう考えても治療は不可能だと言われた患者が、ウォルシュの元に送られてくることも日常茶飯事です。



「3万人以上の患者に対してエピジェネティクス治療を行ってきた。」

この事実をどう捉えるかはこの文章を読んでいる人それぞれ次第です。

臨床医ならこの位の数の患者は経験しているものだと思う人もいると思います。

しかし、私が個人的に感じるのは、
「ウォルシュ博士の中には何か大きな超越したものが存在している」という事です。

それは明示的に言語化できるものではないでしょう。

ウォルシュ博士の中だけに確立された「宇宙空間」みたいなものが広がっているのではと想像しています。

そういう次元に達した治療家は、1つの事を聞いただけで100以上のことが瞬時に頭の中で展開され、次に何をすべきかが手に取るように分かります。

ですから、ウォルシュが実際に患者に接する時は、彼らの表情やしぐさ、発言から放たれる大量の情報を読み取った後に、ウォルシュの脳にある膨大なピースを繋げて、ひとつの最適解が即座に導き出せるのだと思います。

患者を一目見ただけで感覚的に理解できる能力が「神の領域」に達している。



ウォルシュ博士が来日した時に、終止彼のアテンドをしていたのは私でしたが、ウォルシュは私に対しては何も言いませんでした。

けれど、きっと彼には見えていたはずです。

私がどういう遺伝子タイプで、どういう性格や行動傾向があるのか、見抜いていたに違いありません。

アジア人であるとか、日本人であるとか、言語が違うといったことは、ウォルシュにとってはほんの些細な要素でしかありません。

非言語空間の中でウォルシュが嗅ぎわけたものは、私の健康状態や心理状態の「本質」を突いたものであったはずだと確信しています。



3万人の精神疾患の患者を診てきたウォルシュ。

我々がその境地に達するにはどれほどの時間と訓練が必要なのでしょうか。

日本におけるエピジェネティクス治療がどのように発展していくのかは未知数ですが、この治療法を学ぶ医師が増え、少しでも患者の治療に役に立てるのなら私としても嬉しい限りです。

「見えない世界」よりも「見える世界」が徐々に広がることで、全ての人たちが幸せと豊かさに包まれることを祈っています。

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