前回のつづき…

イリノイ州での囚人を対象とした更生プログラムで、死刑囚にチェスの試合で負けてしまったウォルシュは、凶悪犯罪者に対する本格的な調査を始めます。

ちょうどその頃、アメリカでは精神疾患への治療に画期的概念が導入され始めていました。

それまで統合失調症や自閉症、反社会的行動などの精神疾患は、間違った子育てやトラウマになる出来事が原因で引き起こされると考えられていました。

しかし、実際には精神疾患は、そうした過去の「心的苦痛」に起因するのではなく、脳内の生化学的不均衡が原因だということが分かってきました。
つまり、遺伝的になんらかの理由があって、脳内で必要な栄養素を代謝することができていない人が多かったのです。

暴力的な人は幼い頃からそうした特徴があった

実際にウォルシュたちが、犯罪者の家族にヒアリングを行うと、
幼い頃から一人だけ、他の兄弟とは行動が違っていたというエピソードがあったことが明らかにされました。

・他の兄弟は生活態度に問題がないのに、その子一人だけが乱暴だった
・4歳になる頃には既に精神セラピーを受けていた
・10代になると他人を傷つけて刑務所に入所
・自分の子供なのにどう扱っていいのか、暴力を振るわれるので怖い

こうした家族からのヒアリングを元にして、犯罪者の生化学に関する調査が進められますが、当時は一体どんな事を調べれば良いのか分からず、最初は手探りの状態だったと言います。

血液検査や各種の生化学検査をしても、犯罪者のデータに主だった相関性を見出すことはできませんでした。

ファイファーからの助言

そこでウォルシュ達に大きな助言を行ったのが、先のカール・ファイファーでした。
この時点で既に数十年のキャリアを持っていたカール・ファイファーは、精神疾患の治療に対してどのような検査をすればいいのかを把握していたのです。

「体内の微量金属を調べてみなさい」

というファイファーからのアドバイスを受けたウォルシュは、さっそく微量ミネラルの調査に取り掛かります。

銅、亜鉛、鉛、カドミウム、ナトリウム、カリウム、リチウムの血中と毛髪の値を調べました。

すると、ファイファーが指摘した通り、被験者にはミネラルの代謝異常があることが判明しました。

この事実に衝撃を受けたウォルシュは、より本格的な調査に乗り出します。

兄弟間での遺伝的代謝の違い

8歳から18歳までの24名の男子の兄弟を調査しました。
これらの被験者は、片方は攻撃的な兄弟で、もう片方は非行や暴力行動がない兄弟です。

実験の被験者は兄弟同士ですから、共に同じ屋根の下で生活し、食事や学校生活もほぼ一緒という条件です。

乱暴な兄弟と温厚な兄弟のミネラル分析をしたところ、暴力的な兄弟の方では、銅、亜鉛、マンガン、鉛、カドミウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムが異常なレベルで検出されました。

暴力的な子供たちに見られたミネラルアンバランスは、病気にごとに際立った特徴を表していました。



間欠性爆発性障害:IED
銅/亜鉛比率の上昇 ナトリウム、カリウムの低下 鉛、カドミウムの上昇

反社会性パーソナリティ障害:ASPD
銅の低下 鉛、カドミウム、ナトリウム、カリウムの上昇


間欠性爆発性障害
間欠性爆発性障害というのは些細なことをきっかけにして突然怒り出し、その怒りをこらえ切れずに、周囲の人や物に対して激しく攻撃する病気です。
ひとたび怒りのスイッチが入ってしまうと、自分では怒りや暴力を抑えることができません。暴力や怒りに我を忘れてしまうのです。

普段は大人しく、優しい性格の人が激変するため、周囲の人はとても驚いてしまいます。

衝動的な怒りが続くのは長くても数十分程度とされ、一旦収まると本人は深い後悔の念にかられます。
「どうして暴力を振るってしまったのだろう」「何故怒りが爆発したのだろう」と振り返ってみても、後の祭なのです。

本人だけではなく、周囲の家族や友人にも深刻なダメージを与えてしまう病気です。


反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害はいわゆる「非行」です。
世の中の決まり事やルールを守ることができずに、非倫理的な行動を取ってしまいます。

他人に対する思いやりや共感力がなく、自分が利益を得るために平気で嘘をついたり、他人を騙したりします。
薬物やアルコール、ギャンブル中毒になることもあり、学校で授業を付けたり、一定の職に就いたりすることが困難なタイプです。

凶器や武器を見ると興奮し、危険な行為に掻き立てられる性分です。
幼少期から問題行動が見られることも多く、少年院に入る人もいます。

間欠性爆発性障害と反社会性パーソナリティ障害の患者において、ミネラルアンバランスに特定の傾向があることを発見したウォルシュは更に研究を進めていきます。

そして、カール・ファーファーと一緒に仕事をするようになったのです。
直接指導を受けながら、カール・ファイファーによって編み出されたプロトコルに従ってウォルシュは治療を進めていきました。

そして、成人よりも子供たちの方が治療奏効率が良好だったことから、子供を中心とした治療に切り替えます。
2016年までに治療してきた子供の数は、行動障害:10,000名以上、ADHD:5,000名以上という、けた違いの実績にのぼっています。

栄養素の不足と過剰

ウォルシュが長年行ってきた研究から、こうした障害を抱える子供たちでは特定の栄養素が不足していると同時に、過剰になっている栄養素があることが分かってきました。それらが下記のような物質です。


不足すると脳機能を害する栄養素
・亜鉛
・メチオニン
・葉酸
・ビタミンB-3、B-6、 B-12
・DHA, EPA, AA(アラキドン酸)
・抗酸化物質: セレン、GSH(グルタチオン)など


過剰になると脳機能を害する栄養素
・銅
・葉酸
・鉄
・メチオニン、SAMe
・有害毒素: 鉛、水銀、カドミウムなど



栄養素の過不足や有害重金属の蓄積の状態を元に、ウォルシュは精神疾患を抱える子供たちの治療に取り組みながら、最新の情報も考慮して何万件という症例をこなしていったのです。

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