突然ですが、

『最先端のオーソモレキュラー医学に取り組むドクターは何を学んでいるか?』

このような問い掛けがなされたとすれば、
自ずとその答えは「脳とエピジェネティクス」になるでしょう。

うつ病や統合失調症、パニック障害、自閉症、ADHD、アルツハイマー病などの重篤な病気には、遺伝子や脳の機能が大きく関わっていることに疑いの余地はありません。

脳が私たちの感情や記憶、行動、学習をコントロールしていると同時に
遺伝子の振る舞いは周囲の環境やストレス、
不測の事態に対する身体的反応として表れます。

心は心臓のある場所に宿っているとイメージしがちですが、
喜怒哀楽の感情をひとつ残らず統制しているのは脳です。

画像の説明

私たちは、朝起きてから夜寝るまで
あらゆる類の感情に振り回されながら日々を過ごしているわけですが、
その「指令室」である自分の脳を実際に見ることは不可能であり、
ましてやシナプスの間で取り交わされる電気信号を肉眼でとらえる事なんてできません。

思い精神疾患と強い結びつきがある脳機能や特定の生化学的機構に着眼し、
その脆弱性を改善することで治癒へと導くことは
元来オーソモレキュラー医学が目指した「細胞レベルから全身機能を高める」
という理念に基づくものであり、
食事やサプリを中心に栄養素を補うという基本姿勢が科学的技術的進歩によって押し上げられた結果、今日のメチレーション、エピジェネティクスが活況を呈するようになりました。



細胞から遺伝子という微細なミクロの世界へ

オーソモレキュラー医学の開祖であるライナス・ポーリングやエイブラハム・ホッファー、
カール・ファイファーが統合失調症の患者にナイアシンを用いた治療法を始めたのが1950年代。


そこから70年近くを経た今、
エイミー・ヤスコやダン・ロシニョール、ベン・リンチ、ウィリアム・ウォルシュら、
米国の医師や自然療法士、生化学者らによって確立された
生化学的治療の取り組みは目覚ましい発展を遂げ、
彼らの元には世界各地から教えを請いたいと多くの人が集っています。



現代のバイオロジカル医療を牽引する時代の先達者においては、
各々が独自の治療手法やポリシーを持ち、得意とする治療分野は異なります。

治療の優先順位やサプリの用い方、採用する検査、キレーションなどの強い負担が強いられる介入行為に対するスタンスも千差万別です。



ここ数年でようやく日本社会の一部に浸透した分子整合栄養医学の世界にいる私たちにとっては、米国の治療家が提唱する個々の概念を理解することから始めなければならず、
言葉や文化、医療制度や薬局の位置づけの違いなどが複雑に絡み合うため、
短期間のうちに臨床現場に導入することは容易ではありません。

日本で分子栄養学を実践するドクターとしては
まずは机上の勉強で理論的武装をしてから、
コツコツと臨床現場で実績やデータを積み重ねていきたいというのが大変の意見のようです。



一方で、「最先端を走り続ける」米国の治療家によって提唱されている治療は
その具体的な手順や比重の置き方は異なれど、
遺伝子や細胞の働きをより良い方向へと向かわせ、
治癒率や奏効率を高めるために欠かせない共通事柄も多く存在します。

メチレーションやエピジェネティクス治療で共通すること

  • 腸内環境を正常化する
  • 感染や炎症の原因と特定し鎮静化する
  • 滞っている代謝経路を特定する
  • 遺伝子の脆弱性があるか見極める
  • 代謝機能を阻害する原因を除去する
  • 酸化ストレスへの策を講じる
  • 肝臓・腎臓の解毒を行う
  • 発汗、排尿、排便など、毒素の排泄経路を確保する



メチレーション修復という概念に至るまでの変遷

このような治療法を掲げる代表格として最初に紹介を受けたのがエイミー・ヤスコでした。

2012年頃、まだ私が分子栄養学を勉強し始めた頃に、
周囲の先生が読んでいたのが自閉症 回復への道しるべとデトックスで治す自閉症です。

画像の説明



それまでは血液検査から不足している栄養素を読み取る事さえすれば
栄養療法による治療は完結するとばかり思っていたのですが、
難治性の慢性疾患を抱える患者に対しては
更に高度なアプローチが必要だということを知るきっかけとなりました。




そうして、血液検査という身体状況のスナップショットを捉えたもの以外に、
身体の中で生理学的な活動を営む過程で生み出される中間代謝物から、
滞留している代謝経路や化学反応に異常をきたしている所を突き止める検査
として推奨されたのが有機酸検査でした。

分子栄養学が次の次元へと移行する絶妙のタイミングで
新たに手に取ったのがウィリアム・ショーが執筆した
自閉症と広汎性発達障害の生物学的治療法です。

画像の説明

有機酸検査を実施しているカリフォルニアニュートリエンツ
森田さんからご紹介頂いたものでした。



当時は(今でもそうですが)、難解な代謝経路のオンパレードと読みにくい翻訳のせいで、
何を言ってるんだかさっぱり分からず、要点が掴めないままでいました。

ところが、漠然とはしながらも、
この本は多くの患者にとって一条の救いの光になると強く認識したことは今でもはっきりと覚えています。



ベン・リンチの抜きんでた発信力

画像の説明

分子整合栄養医学に関連する検査が益々高度化、複雑化していく
トレンドの中で、メチレーションの基礎講義をしてくれたのがベン・リンチでした。
2014年の秋も終わりに差し掛かった頃のことです。

当時、ベンの経歴や治療法に関して情報を得るためにリサーチし始めてすぐに気がついたのは、
何といってもその豊富な情報と多様性でした。


ベン・リンチがエイミーやウィリアムと決定的に違った点はここにあります。


私たちが彼の存在を知る大分前から、
ベンはメチレーションや遺伝子多型に関する膨大な情報をインターネットで開示していました。

基礎的な情報は全面的に無料公開、
より専門的な医師向けの内容は有料…という具合に。



葉酸回路やメチオニン回路の解説は勿論のこと、
葉酸(Folic Acid)と葉酸塩(Folate)の違いや
遺伝子多型による代謝機能の低下による影響など、
日々更新される文献やエビデンスを様々な媒体を通じて発信していたのでした。



彼が発信する情報は、ウェブサイトのテキストという静的な情報に留まらず、
ポッドキャストでの音声配信やYouTubeでの動画配信、
メチレーションポスターや過去のセミナー資料など、
勉強したい人がいつでもすぐに使えるものを揃えていたのです。



ベンがインターネットという最強の伝達手段を介して情報を発信してくれたお陰で、
我々日本人が最新のエピジェネティクス療法を知ることできたのです。



ベンがウェブサイトで書いていた内容は、
自閉症や達発障害、不育症の方にとって大変貴重な情報であると確信し、
一人でも多くの人に知って貰おうという想いに至ったことから、
重要なテーマを抜き出して翻訳したのがMTHFRネット日本語版です。
画像の説明



日本語訳するのは大変な労力を必要とする作業ではありましたが
ベンが提唱するメチレーション治療の本質を学ぶという意味で
大変価値ある経験になりました。

その年の11月に開催されたセミナーは、
日本のオーソモレキュラー医学の世界に
初めてメチレーションという概念がもたらされた記念すべきイベントとなりました。



改めてベンのセミナーが開催された当時のことを振り返ると、
分子栄養学に長年従事してきたドクターでさえも、
この治療アプローチによってどのような治療効果がもたらされるのか、
臨床に導入することのメリットは何なのかを掴めていなかった人も多かったような印象を受けます。



しかし、何事にも初めてがあります。

ベンを招いてセミナーを開催したという事実が
日本のオーソモレキュラー医学や統合医療の世界を
次の次元へと導くための布石になることは誰しもが肌で感じ取っていたはずだと思います。

ドクターでさえも難易度が高いと感じたメチレーションですから
一般人の方にも知って貰うにはどうしたら良いかと悩んだ結果、
自分の復習も兼ねて作成したのがYouTubeにアップしたメチレーションの基礎動画でした。


メチレーションの基礎知識
画像の説明



歯科医の先生にも関係ある!?

医療関係者の方は既にお気づきかもしれませんが
今では、宮澤先生や溝口先生や本間先生をはじめとした「講師クラス」のドクターの会話に
メチレーションやエピジェネティクス、遺伝子多型という言葉が当たり前のように飛び交うようになり、折に触れて頻繁に引き合いに出されるようになっています。



そして、意外に思われるかもしれませんが、
メチレーションをはじめとするエピジェネティクスの影響は
歯科の先生にとっても他人事とは言い切れないようです。

matt young

2016年の5月に、IAOMT-国際口腔毒物学会という
米国の歯科団体から講師の先生をお招きしてセミナーを開催しました。

IAOMTの理事長であるマット・ヤング先生によれば、
遺伝子多型や代謝メカニズムの異常が原因で、歯科アマルガムの悪影響が通常よりも強く出てしまう患者や歯周病になりやすい患者、栄養摂取不良から口腔内を始めとする多種多様な全身疾患が引き起こされる事も多いとのことでした。

アメリカは日本と異なり、国民皆保険の制度は事実上存在していないとも言えますから、
より高付加価値の治療を提供し、自費率を上げることで病院経営や治療体制を
盤石なものにしたいと考える歯科医は、
次々に新しいことを学び、率先して取り入れています。

その一環として、内科医と組んで治療連携したり、
歯科医の裁量の範囲で行える生化学的検査を実施しているとのことでした。


患者の口の中を見れば、その人が抱える症状や病気が
手に取るように分かるという歯科医はたくさんいます。

歯周病が糖尿病や心臓血管疾患、がんにも関与していることは
歯科の世界では周知の事実です。


IAOMTに所属する歯科医は全員が歯科アマルガムの安全な除去法や
口腔内疾患が全身に及ぼす影響について精通している人ばかりですから、
彼らが免疫学や遺伝子学、栄養学に精通しているのは至極当然なことです。

アメリカでは、バイオロジカルドクターならぬ、「バイオロジカルデンティスト」が
社会からも一定もレベルで認知され、支持を得ているということを見せつけられるわけですが、
昨今の日本の医療制度や財務状況を鑑みると、自費でも構わないからより良い治療を臨む風潮は遅かれ早かれ私たちの生活にも入り込んで来るに違いないと個人的に考えています。



道のりは遠いが、やらないと何も始まらないのも事実

分子栄養学のセミナーや勉強会でお会いする方に
「奥田さんはメチレーションのこと全部わかってるんでしょ~!」
と言われることがありますが、それは全くの誤解です。

確かに、ベンやウォルシュの資料や動画を翻訳したり、
内容チェックしたりしているのは私ですが、
日本語に訳す=内容を100%理解しているという事では決してありません。


例え表面的な生化学のことを覚えたとしても、
医療現場に携わっていない一般人が、医学的、身体的な問題を推察するのは困難です。

背後にある症状や患者の身体的特徴、
薬やサプリへの反応などを見ながら総合的に情報を勘案して治療計画を立てるスキルは、
経験を積んだ本職のドクターでなければできないことですし、
法的な観点からも有資格者のみが行える医療行為と見なされます。



ただ、このメルマガで伝えているメッセージの文脈は
自己研鑽としてメチレーションを勉強したい全ての人に向けたものです。

そういうコンテキストの中で、ひとつ断言できることがあります。


私がメチレーションの回路図をそれなりに見られるようになったのは
翻訳作業を通じて「朝から晩までメチレーションの回路を見続けた」からです。

人間、毎日同じものを眺めていれば、絶対に覚えます。

みなさんも必ずや感覚を掴めるようになります。
心配する必要は全くありません。

もし医療関係者の方で覚えるのが億劫だという人がいたら
わざと見せびらかすように
メチレーションポスターを病室や待合い室に貼って下さい。

患者さんから質問されたり、検査結果と照らし合わせて診断しなくてはならなくなり、切迫した必要性に駆られて否応なく覚えます!

さて、エイミー・ヤスコやベン・リンチらが提唱する治療法が
導入されてから数年が経過しました。

医療関係者や一般人という立場に関係なく、
メチレーションを勉強しようか、敢えて冒険は冒さずに踏みとどまっておくか、
この段階でも迷っている人は多いと思います。


周囲の人はそれなりにメチレーションや遺伝子検査をやってるみたいだけど、
いざあの忌々しい代謝図の前に立つと、手も足も出ないのではないか…
と、躊躇してしまう気持ちは分かります。

ですが、学んでみたいという気持ちが少しでもあるのでしたら
始めるのは早い方がいいと思います。

何故なら、自分が頑張って追いつこうとしない限り、
先頭を走っている先生は
どんどん遠くに行ってしまうからです。

まずは何から始めるべき?

メチレーションを勉強されたい方は、
ベンのセミナー動画が公開されていますので見てみて下さい。

3つ教材がありますが、ポッドキャストは一番最後でいいと思います。

1. メチレーションとニュートリジェノミクスセミナー
2. メチレーション基礎セミナー(日本語吹き替え版)
3. メチレーション情報ポッドキャスト日本語版



1.のメチレーションとニュートリジェノミクスセミナーの動画を購入すると、
メチレーションの代謝図(A4サイズ)が10枚資料として付属しますが、
これは各代謝ごとに切り分けられた各論の資料です。
全体を把握するには、病院や自宅に貼れる大きなポスターがあると便利です。


メチレーションポスターの使い方
画像の説明

メチレーションのポスターはベンのセミナーの直後に
完全予約制としたため完売してしまいました。

YouTubeで提示したラミネート加工のものは在庫がないのですが、
上質紙版があるので欲しい方は奥田まで連絡を下さい。
どなたでも購入可能です。(1枚5,400円 送料込)



上級者の人、英語ができる人はどんどん進んでください

メチレーションに関してはセミナーを受講済みで、
既に臨床に導入していたり、
サプリを用いて治療に従事している方もいると思います。

メチレーションをもっと深く勉強したい方は、
ベンが運営しているウェブサイトを見て下さい。

日々コンテンツが更新されていますので、
一番新鮮な情報を入手することができます。

英語が理解できる人なら、医師・一般人に関わらず
ベンが開催した直近のセミナーをネット経由で見ることができます。

英語版のオリジナルポスターが欲しいという方もこちらから買えます。


ベン・リンチが提供しているセミナーや教材

SHEICON2016 Recording
Methylation and Nutrigenomics Part 1
Methylation and Nutrigenomics Part 2
Pathway Planner download
Pathway Poster
SHEI Membership


2016年の4月にベンがアメリカで行ったメチレーション治療に関する
大規模セミナー『SHEICON2016』の4日間にわたるもようが見られます。

詳しい内容はこちらを見て下さい。

ベンが言うには、日本からも定期的にアクセスがあるそうなので
彼のセミナーをウェブ経由で見ている日本人も結構いる事になります。



勉強するレベルに合わせてチョイスを

今日はいささか長文になりましたが、
これまでメチレーションに関して質問を受けた内容をまとめながら書いたので、
必要な情報は網羅されているはずだと思います。

ご自身の勉強のレベルや興味応じた選択肢があります。

勉強するかしないかも自分で決めて下さい。
全ては自分の意志で決められます。

もし勉強したいなと思ったら…

  • 初級の人は取り敢えずYouTubeを見る
  • 中級の人はポスターとセミナー動画を買う
  • 上級者は直接英語のサイトにアクセスする

それぞれのニーズに応じて選んで下さいね。
組み合わせは自由自在です。