糖尿病患者と炎症について

2型糖尿病患者は一般に肥満で、慢性の炎症を患い、インスリンに抵抗性があるとされています。

インスリンとは、血中のブドウ糖を取り込み、エネルギーとして保存するために働くホルモンですが、この3つの物質が互いにどう関わりあっているのか、どういう役割や反応が生まれるのか、未だに解明されていない部分があります。
肥満や糖尿病と炎症との関連性は、引き続き調査が進められていますが、
実際の臨床現場では、肥満や糖尿病の人は、C反応性タンパク(CRP)などの炎症マーカーの数値が上昇していることが殆どです。
2015年4月には、大阪大学の研究チームが、
肥満による糖尿病の原因とされる脂肪細胞の炎症の引き金物質を発見し、
米科学アカデミー紀要電子版に発表したことが取り上げられています。
『肥満糖尿病の引き金発見 脂肪細胞に炎症』
免疫学が専門の石井優教授によれば、
肥満になると脂肪細胞に免疫細胞のマクロファージなどが集まって慢性の軽い炎症が続き、
糖尿病や高血圧などの生活習慣病を招くと考えられているそうです。

肥満や糖尿病につきものの「脂肪細胞」と「炎症」は表裏一体となっているのですね。

食べ過ぎな上に運動不足だったり、不摂生な生活が続けば、すぐに脂肪がつきます。

肥満や糖尿病の人は、お腹周りに脂肪がたくさん付いていますが、
「脂肪細胞」はでっぷりとしたお腹に居座っているだけでは飽き足らず、
我々の見えないところで活発に動き回って悪さを働きます。

それが、炎症性サイトカインのインターロイキン6(IL-6)やCRPの発生です。
インターロイキン6は、炎症・免疫疾患の発症メカニズムに深く関与している化学物質と言われており、CRPはその代謝副産物です。
サイトカインもまた、インスリン抵抗性を悪化させます。
肥満や糖尿病の引き金となる「炎症」を引き起こしてしまう原因として
真っ先に挙げられるのは、精製砂糖の過剰な摂取です。
普段口にしている加工食品には、スクロースや果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)がたっぷり入っており、お菓子やパン、精製飲料水に限らず、ハムやチーズ、レトルト食品、お惣菜の素などにも使われています。
精製された穀物を原料に作られたパン、コーンフレーク、うどん、パスタなども、
摂取すると血糖値とインスリンを増加させてしまいます。

インスリンはCRPの分泌を促進させ、また、血糖値が上昇することで、
フリーラジカルが発生して炎症を長引かせることに繋がってしまいます。
そうした中、「肥満でも糖尿病にならない人」がいます。
普段、医療の最前線にいるドクターの方でも、そうした患者さんを見かけることがよくあるかもしれません。
体重超過や肥満でも糖尿病になる人とそうでない人の違いは、じつは「炎症」にあることが示唆されています。
2013年9月
『肥満でも糖尿病にならない人」の理由は炎症が鍵』
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
この記事によれば、肥満でも代謝的に健常な人が35%近く存在するそうです。
高血糖や高血圧、脂質異常といったいわゆる代謝因子によって心疾患や糖尿病の発症リスクが高まりますが、50~60歳の男女2,040例のデータを分析し、健康診断や血液検査で、BMIや代謝および炎症の状態評価を行った結果、
代謝不全のない人では、炎症反応の上昇を示す白血球細胞数や急性期蛋白質応答誘導が少なく、抗炎症作用のあるアディポネクチン濃度が高いことが明らかになったそうです。
この傾向は、痩せている人や肥満の人に関わらず、代謝が健常な人で認められました。
調査を実施したアイルランド、コーク大学の Catherine Phillips氏は、
「代謝的に健常な人では、肥満であれ非肥満であれ、炎症マーカーが低いことがわかった。
BMIに関わらず、炎症の状態が好ましい人では代謝系も健常だった。」
と結論づけています。
つまり、肥満の患者が糖尿病へと進行するかどうかは、
「炎症」の度合によっても左右されることが示されたのです。

肥満以外にも、炎症を発症させてしまう原因には、損傷や感染、加齢に伴う組織破壊などがありますが、やはり、最も関連性が強いのは、「何を口にするか?」ということです。

典型的なアメリカンスタイルの食事は炎症を惹起させる物質の巣窟です。
精製された砂糖と穀物、人口甘味料、香料、添加物、遺伝子組み換え食品、トランス脂肪酸…など、日本でもこうした物質は、普段手にする加工食品の殆どに含まれています。
炎症を引き起こすものとして、以前ブログで「脂質」に関して取り上げました。
『炎症と脂質のかかわり』
アメリカの以前の食事様式では、
オメガ6とオメガ3の摂取比率が1:1であったのに対し、
食事やライフスタイルの大きな変化に伴って、現在ではその比率が
20:1 や 30:1にまで、差が開いている…とする文献もあります。
炎症を惹起するリノレン酸やトランス脂肪酸の摂取量は増加傾向にあり
日本も含め、世界中で同じような動向が拡大しています。
加えて、日頃の食事では、抗酸化物資の減少、野菜・果物の摂取量低下や
グルテンやカゼインの摂取によるリーキーガット、食物アレルギーも炎症に寄与しており、
このことが結果的にインスリン・血糖値の上昇にも繋がるとされています。
次回は、トランス脂肪酸について少し詳しくみていきたいと思います。