r-GTP(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)

血液検査における酵素の位置づけでも説明したとおり、
γ-GTPは逸脱酵素に分類されると書いた。

逸脱酵素とは、身体に何らかの障害や刺激が与えられると、
組織が壊れて血中に染み出てくる(=逸脱してくる)酵素のこと。

r-GTPは主に肝臓や腎臓でつくられる酵素だ。

肝臓系では、肝細胞や胆管細胞、胆汁中に存在し、
血中にあるr-GTPは肝臓に由来するものが大半を占める。

r-GTPが異常値(高値)になる状況 Edit

1. 酒の飲み過ぎ・肥満・脂肪肝・薬の服用

これらがあると、γ-GTPが血液中に漏れ出して数値が上がりる。
特に、アルコールに短期的に反応するため、アルコール性肝障害の指標酵素のひとつとされている。

γ-GTPのみ高い値を示す場合は、
原因はアルコールの摂取によるものが多いと判断されることが多いようだ。
2. 胆汁うっ滞や胆管細胞の破壊

画像の説明

「胆汁」 とは肝臓から分泌される液体のこと。

脂肪を消化するために必要な液体で、
肝臓で1日に1リットルほど作られている。

胆汁はアルカリ性の液体で、胆嚢に溜められている間、
水分吸収され5~10倍に濃縮されたのち十二指腸に送られる。

画像の説明

胆汁の成分は、ビリルビリンという胆汁色素、コレステロール、胆汁酸塩などだが、
およそ90パーセントは水分から成る。

画像の説明

胆汁には消化酵素は含まれていないが、
十二指腸で膵液と一緒になることで胆汁が膵液の持つ消化酵素を活発にし、
脂肪やタンパク質を分解して腸から吸収しやすくする。

脂肪が分解されるとできる脂肪酸は吸収されにくくなるため、
脂肪酸を吸収しやすい形状に変化させる働きもある。

腸から吸収された胆汁はまた肝臓に戻り、
再び胆汁として分泌される腸肝循環と呼ばれる往復する働きを持っている。

胆汁は「黄褐色」をしている…と解剖学や医学の本には書いてあるが、
間がたつと徐々に酸化されて深緑色になる。

引用:
胆石ガイド田辺三菱製薬中外製薬のウェブサイトが分かりやすいので参考に。


「うっ滞」 とは、体液が正常に循環したり流れたりする事ができずに、
一定の場所に滞留してしまう状態を言う。

何らかの異常で肝機能が低下したり、胆管に胆石が詰まった場合にも、
うっ滞が生じることがある。

よって、一般的な血液検査では、r-GTPの値が高くなると
アルコールの過剰な摂取を注意されたり、
服用している薬について質問されたり
肝臓や胆管の異常、結石や癌のスクリーニングが行われる。

r-GTPの数値が51IU/L以上になると、肝機能異常の疑いのマークが付けられるようだ。

y-GTPの酵素としての生化学的な役割にも注目してみよう。 Edit

y-GTPは、グルタチオンや他のγ-グルミルペプチドから、
γ-グルタミル基をアミノ酸、ペプチドなどの受容体に転移する酵素。

y-GTP(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)以外に
GGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)とも呼ばれている。

画像の説明

細胞内のグルタチオンの分解と再合成に
関係するアミノ酸の細胞内への取り込みに
重要な役割を果たしている。

血液検査で測定される
ALP(アルカリホスファターゼ)という酵素と
同様に膜タンパク酵素であり、
腸管、尿細管、細胆管などの膜に結合して存在する。

y-GTPはグルタチオンを直接分解できる酵素 Edit

「グルタチオン」とは、体内で合成することができる自然の抗酸化物質。

分子整合栄養医学を勉強していく中で
「グルタチオンには抗酸化と解毒の作用がある」 という説明は頻繁に出てくるので、この栄養素も頭の片隅に置いておいて頂きたい。

グルタチオンは、
身体の中で活性酸素種を消去してくれたり、
有害なものを解毒してくれたり、ダメージを受けた細胞を修復してくれる。

細胞がもともと持っている自己防衛機能の一つとされている。

グルタチオンはアミノ酸である
グルタミン酸、システイン、グリシンがこの順序で結合した
トリペプチド(アミノ酸が3分子重合した化合物)だ。

画像の説明

血液検査でみるy-GTP Edit

さて、話をy-GTPに戻そう。

一般的な血液検査ではy-GTPが高いことが問題だとされる傾向が強いようだが、
栄養療法的な検査では、高値を示した場合の肝機能や胆管の問題に加えて
低値を示した場合には下記のような推察を行う。

y-GTPが低値になる状況 Edit

・タンパク摂取の不足
・グルタチオン活性の低下
・溶血(死んだ赤血球から生じるビリルビンの上昇)
・妊娠後半

女性ホルモンはy-GTPを低下させる働きをもっている。
そのため、男性に比べて女性は基準値が低く設定されている。

分娩直前では、妊娠前の約1/2程度の値になるとも言われている。

一方で、新生児期ではγ-GTPは高く(成人の約2倍)、
乳児期・学童期を経て漸減(成人の約1/2程度)し、
思春期以降になると成人とほぼ同じ値となる。

γ-GTPについては興味深いレポートがありますので、
興味のある方は読んでみて欲しい。

京都大学化学研究所 GGT阻害剤 有機化学的アプローチ

補足事項 Edit

血液検査で調べる項目としてASTやALT、γ-GTPといった酵素の働きや重要性について取り上げた。

ところが、現在でも酵素の仕組みや機能、化学構造に関しては解明されていない事項も多く、調べれば調べるほど泥沼におちいるかのように
人間の身体はどんなシステムから成り立っているのか、
ヒトという生き物を支える本質とは何かが見えなくなってしまう…

管理者の個人的な意見を述べれば、
分子整合栄養医学や生化学の学習を積み重ねていく中で思うところは色々とあるが、
普通の人がここまで詳細な生化学的機構を理解するのは現実的ではなく
その必要性も全くないと考える。

先に触れた「y-GTPがグルタチオンを分解する酵素」であることを
知っているドクターも殆どいないであろう。

実際、栄養療法に取り組んでいる医療関係者は(上記のドクターを含め)
こうした個別の酵素に着眼しているというより、
問診や症状から読み取った患者の情報を土台として、
検査数値を病気の要素や結果の一部として考え合わせた上で
仮説を立てたり、治療戦略を練っているのが大半。

一つの項目や一種類の酵素が高値、低値を示していたからと言っても
それは単なる「検査結果のデータ」に過ぎない。

単一の項目や数値だけにこだわると、俯瞰してみるべき全身の状態や症状が
ぼやけてしまう危険性が出てくるかもしれない。

何より、患者の症状を改善するという本来の目的がズレてしまうリスクも出てくる。

血液検査で調べる各項目は、極端な例を除けば、
それが単独で何かの意味を成すということはあまりない気がする。

栄養療法における血液検査の解読では
種々のファクターを総合的に勘案するスキルが大切で、
酵素機能を見極める場合においても、ASTやALT、ALP、ChEといった
関連項目を的確に組み合わせながら、深読みできる感覚を養っていくのが重要だと考える。