■酵素活性が最大化する至適温度
酵素には極めて優れた点がある

それは、40度前後の体温で素早く物質に化学変化を生じさせる点だ。

本来であれば物質を変換するためには、100度近い高温環境や高いエネルギー負荷を必要するが、ヒトの体内における「化学反応」には37度という極めて低温度の状態で、無数の代謝活動を行うことができる驚異的な力がある。

酵素による化学反応は一般的に1度変化すると、その反応速度は約10%変化すると言われている。ゆえに、温度が10度上昇するごとに、反応速度は約2倍ずつ速くなる。

酵素が最大の速度で反応を行える環境は、37度前後と言われている。

ところが、酵素は「タンパク質」からできているため、
酵素が存在している環境の温度が高すぎたり、低すぎたりすると本来の機能を発揮することができなくなってしまう。

37度をよりも温度が高くなるとタンパク質の高次構造が崩れ、
酵素を作っているタンパク質に不可逆的な変性が起こり、活性化されなくなってしまいまう。

反対に温度が低くなりすぎても、酵素反応は鈍くなってしまい、0度以下になると酵素は働かないものもある。

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爬虫類、魚類や昆虫といった変温動物が冬に動けなくなって冬眠するのも、こうした酵素活性と関わりがあると言われている。
酵素は温度が高くなれば再び働き始める。

下記は酵素の反応速度と反応温度を示したグラフだ。
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酵素の活性が最大になる温度を、「至適温度」や「最適温度」と呼ぶ。

酵素の種類によって最適温度は異なるが、
往々にしてヒトの体温が37度付近にあることが、酵素反応にとって大変都合の良いものだという共通認識になっている。



■pHも酵素にとって重要な要素
pH(ペーハー/ピーエッチ)とは、水素イオン濃度のことで、酸性やアルカリ性にどれだけ傾いているかを表す。

pH7.0が中性でこれより低いほうが酸性、高い方がアルカリ性となる。

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私たちの正常血液(体液)のpHは7.35~7.45 弱アルカリ性

少なければ(pH7.35を下回ると)酸性(アシドーシス)になり、6.8を下まわると死を招く危険がある。

多ければ(pH7.45を越えると)アルカリ性(アルカローシス)になり、7.8をこえると死を招く危険がある。


前述した通り「酵素」もタンパク質から作られている。

その表面のアミノ基やカルボキシル基のイオン化状態はpHによって変わる。

酵素の構造において、化学反応の対象となる物質(基質)が結合して
化学反応が進む部位を「活性部位」や「活性中心」と言うが
こうした部分もタンパク質からできているので立体構造はpHの影響を受ける。

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pHが高すぎても、低過ぎても構造に変性が起こり、酵素タンパク質は不活性化し、使い物にならなくなってしまう…

酵素作用には一定のpHが必要であると同時に、その酵素が最も高い活性を示すpHを至適pHと言う。

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最適pHは一般的にその酵素が見出される細胞内の環境を反映している。

例えば、胃の最適pHはpH1~2

これがpH3~4に上昇すると(アルカリに傾くと)ペプシンの活性が低下する。

そうなると、肉や魚など食べたもの消化が十分にできず、胃が重苦しくなる。

こうした状況に陥った場合、分子整合栄養医学では、胃酸分泌が不足している原因を考えることから着手する。

対処法としては、消化酵素、レモン水、お酢、ベタインHCL(ベタイン塩酸)、ハーブ、漢方などを用いることを検討することが多い。

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因みに、日本人は胃酸の分泌が少ない体質の人が多いと言われている。

胃内のpHは、空腹時にはpH1~1.5で、食事をとるとpHは4~5になる。

次第にpHは低くなり(酸性に傾き)、食後2~3時間でまた空腹時程度のpH1~1.5に戻る。

血液検査で測定される「ペプシノーゲン」はタンパク分解酵素である「ペプシン」の前駆体で、胃酸によって活性型のペプシンへと変化する。

生命活動は化学反応の連続体・集合体によって成り立っているので
「酵素」が正常に働かなければ、私たちの身体機能にも大きな影響を及ぼすことになる。