食事から摂取されたタンパク質は、胃液に含まれる胃酸とペプシンという消化酵素で分解されたのち、十二指腸でトリプシン、更に小腸でペプチダーゼによって最終的にアミノ酸まで分解される。

タンパク質がバラバラになったアミノ酸は、小腸の上皮細胞から取り込まれ、毛細血管から門脈を通って肝臓に運ばれる。

肝臓に運ばれたアミノ酸は、体内で再び必要なタンパク質合成に利用される。

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→詳しくは「2. 栄養素を用いて身体の機能を向上させる考え方 (1/3) 」を参照のこと

体内では食事から摂取したタンパク質を分解して得たアミノ酸の他に
体タンパクの分解から生じたアミノ酸も存在する。

食事由来と体タンパク由来のアミノ酸は、互いに区別されることなく利用される。

摂取した食品と今まで自身の肉体にあったタンパク質が融合するのだ。

ヒトはアミノ酸を材料として、心臓、肝臓、脳などの臓器や筋肉、神経伝達物質、抗体、ホルモン、酵素やヘモグロビンなど、生命活動に必要な様々なタンパク質を合成していく。

生体では、食事の摂取と体タンパクの分解から得たアミノ酸をもとに、
その量に応じた分だけ、新たにタンパク質が合成されるということを繰り返している。

オリジン生化学研究所によれば、
”体内で合成されるタンパク質の総量(体重60kgの成人で180g/日)は
食事によって摂取されるタンパク質(成人男子の所用量で70g/日)よりも多い。

成人では見かけ上、(身体を構成する)タンパク量は日々変わらないと考えられるので、新たに合成されるタンパク質のかなりの部分が、体タンパク質の分解によって生じたアミノ酸を再利用して合成されていることが分かる。”
と説明している。

前回アミノ酸の章では、ゆで卵から摂れるタンパクの量について記載したが
ヒトの身体機能を維持するには、ゆで卵を20個食べたところで、
到底少なすぎる量であることが理解できる。


さて、ヒトタンパクを合成するのには20種類のアミノ酸が必要だが、
身体を維持するだけの量が不足してしまったら一体どうなってしまうのだろうか?

アミノ酸が辿る運命は2つ

・非必須アミノ酸(11種)が不足した場合
ヒト細胞の中にある材料を使って必要なアミノ酸を作り出す

・必須アミノ酸(9種)が不足した場合
食事から摂取量が不足したら必須アミノ酸からタンパク合成をする道は閉ざされる


食事から9種類の必須アミノ酸が摂取できなければ、我々の生命活動は成り立たない。

必須アミノ酸は1種類でも欠けると、正常なタンパク質を作ることができないからだ。


しかし、我々は毎日9種類のアミノ酸をきちんと摂取できているかと言えば、そうでない時も勿論ある。

  • 風邪をひいて食事ができない
  • ファスティング(断食)をしている
  • ケーキとチョコレートを食べる日々
    こういった状況であっても、生命活動は何とか維持できている。
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これを下支えする概念的な論拠として引き合いに出されるのが
アミノ酸プール」だ。

別名「アミノ酸の桶の理論」とも言われる。


ヒトには身体に「アミノ酸」の貯蔵庫で予備を備蓄しておくことで、体内でアミノ酸が不足した時の為に素早く使用できる機能が備わっている。

「アミノ酸プール」は、タンパク代謝に利用される遊離アミノ酸のことで、血液および各組織に存在する。

遊離アミノ酸は、食事由来や体タンパク由来のアミノ酸としてプールに貯蔵されつつ、遊離の状態になっているので細胞の中や血管の中を巡り、必要に応じてプールを行き来している。

体内で最も大きなアミノ酸プールは骨格筋で、全アミノ酸プールの 50%以上を占めるとされ、骨格筋1Kg重量あたり3~4gの遊離アミノ酸を貯蔵している。


アミノ酸プールは、一定量を越えると過剰分は分解されエネルギーとして使われたり、
グリコーゲンや脂肪として貯蔵される。

グリコーゲンとは、筋肉と肝臓にあるエネルギーの一時保管所のこと。

余剰のグルコース(ブドウ糖)を一時的に貯蔵しておくための場所だ。

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グリコーゲンは、多数のブドウ糖が複雑につながった
多糖類で、骨格筋で筋収縮のエネルギー源となるほか、肝臓のグリコーゲンは血糖値を一定に保つために使われるなど、様々な役割を担っている。

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グリコーゲンは、空腹時や絶食などで血糖値が下がった際にグルコースを放出し、活動に必要なエネルギーを供給する。

肝臓中にあるグリコーゲンの量は少なく、
ブドウ糖のストックとして大人でも約60g程度と言われている。

12~18時間絶食すると肝臓におけるグリコーゲンはほぼ枯渇する。

筋肉のグリコーゲンは運動負荷後にのみ枯渇する。

グリコーゲンの材料はグルコースだが、
グルコース以外に、糖原性アミノ酸からもグリコーゲンが作られる。

糖原性アミノ酸には、アラニン、アスパラギン酸、メチオニン、スレオニン、バリン、グルタミン酸などの種類がある。

糖原性アミノ酸はTCA回路でのATP合成やオキサロ酢酸から糖新生に入り、グルコースに転換される。

グルコースを生成し、血中に放出して血糖値を上昇させる役割も担う。



食事から摂取したり、身体から分解されたアミノ酸だが、
そのすべてがヒトのタンパク質に生まれ変わり、再利用されるわけではない。

ヒトのアミノ酸の再利用率は、一説には50~70%だと言われている。

タンパク源を全く摂らなかった場合、1日に30g以上ものタンパク質が利用することが出来ない形のまま分解され、身体から排出されて、失われるとも言われている。

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アミノ酸プールの図を見て頂ければ分かるが、
プールにある特定のアミノ酸が十分量があっても、
別の種類のアミノ酸の量が不足すれば、
プールの水は低い方の高さまでしか入らない。

例えば、上のようにリジンが不足すると、
他のアミノ酸がいくら沢山あってもプールの中の水は、漏れてしまう。


アミノ酸プールに関して、
動的平衡2」の中で福岡伸一博士は次のように述べている。

”9種類のアミノ酸をバランスよく摂取しなければ、体は少ないものに合わせてタンパク質を合成する。一種類でも不足すれば、他の余分なアミノ酸は捨てられる。”


ここまで読み進めていくと、タンパク質の摂取において最も重要なことは、20種類すべてのアミノ酸をアミノ酸プールに準備しておくこと、という結論に至る。

多種多様な食品からまんべんなくタンパク質を摂取して、バランスを取るのが最も良い方法であることに異論の余地はないように思える。


だが、目下の問題は、

  • 今自分の身体の中でどのアミノ酸が不足しているのか
  • プールから水がじゃぶじゃぶ漏れている原因が何なのか
    を把握するのがそう簡単ではないことだ。


タンパク不足であることは自分の身体のコンディションから何となく推察できるが、
自分はロイシンとメチオニンとトリプトファンが足りない…といった具合に、
個々のアミノ酸不足まで言い当てることは果たして可能なのだろうか?

また、非必須アミノ酸は生体内で合成できるからと言って油断していいものかと言えば、そうでもないような気がする…

遺伝子の振る舞いやエピジェネティクスの観点から、
自分はグルタミン酸を合成・代謝する力が弱い…という事実があったのだとすれば、
その一つのピースが欠けていることが、全身に大きな問題を生じさせているのかもしれない。

アミノ酸を通じて色々なクエスチョンが頭に浮かんできて、想像は尽きない。