アミノ酸プールの章で、タンパク質の消化・吸収の大よその過程を示した。

タンパク質はアミノ酸まで分解されて小腸から取り込まれたのちに
毛細血管から門脈を通って肝臓に運ばれ、
体内で再び必要なタンパク質合成に利用される。

こうした消化過程は、生化学や栄養学の殆どの教科書に載っていることだ。


だが、実際のところ、
タンパク質はアミノ酸まで分解されてから、更に下位の分子まで分断されることが分かっている。

アミノ酸より小さい分子。

つまり、炭素やアミノ基、カルボキシル基といった構成成分にまで分解されてしまうこともあるのだ。

例えば、BCAAというサプリメントがある。

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BCAAは必須アミノ酸の、バリン、ロイシン、イソロイシンのことを指す。

Branched Chain Amino Acidsの頭文字を取ったもので、
分子構造から分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸と呼ばれることもある。

ヒトの筋たんぱく質中の必須アミノ酸のBCAAの割合は約35%にもなる。

従って、筋肉づくりに果たすBCAAの役割は大きく、ゆえに、運動中に分解する量が多いと考えられている。

スポーツを実施する場合、約30分前にBCAAのサプリを摂取すると
筋肉の分解や損傷も防ぐことができると言われている。


グリコのウェブサイトによれば、
BCAAを摂取することで中枢性疲労の軽減にも役立つとされている。

中枢性疲労の一つのメカニズムとして、脳内におけるトリプトファンからのセロトニン生成によるものがあると考えられている。

血中から脳内にトリプトファンの輸送が促進されると中枢性疲労が高まるという。

脳内にトリプトファンが輸送される場合には、脳血液関門(BBB)を通過するが、
脳血液関門のトリプトファンの輸送体はBCAAの輸送体と共通であるため、このゲートを通過する際に競合する。

血中のトリプトファン濃度に対するBCAA濃度が低下すると、脳内にトリプトファンの取り込みが増加して、中枢性疲労が促進されることから、中枢性疲労の予防・回復にたんぱく質(BCAAを多く含む)の摂取が有効である可能性が示されている。

脳内へのトリプトファンとBCAA輸送の競合
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動画でも説明しているタンパク代謝だが、
アミノ酸から更に極小分子化合物へと代謝されるのだとしたら、摂取したアミノ酸は狙った通りの効果を発揮するとは限らない場合もあるのかもしれない。

生体内で合成することができない必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンを意識して摂取したのに、実は違うアミノ酸として再合成され、違う役割を与えられている可能性も否めない。

サプリメントから摂取した特定種類のアミノ酸のうち、
実際に何割がそのまま同じ種類のアミノ酸として体内吸収され
何割が更に小さい分子へと姿を変えたのか…

こうしたことを示す教科書や文献はあまり存在しないようだ。


分子整合栄養医学の世界は実に奥深く
ミクロな世界へと足を踏み入れれば入れる程、予期せぬ疑問や発見が待ち受けている。

種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」の如し。

目指す先に見えていたはずの目的地は影も形もなく
期待した「結論」の代わりに、新たな「問い」が存在していることの方が多い。

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