Methylation Inhibited by Candida’s Toxin より
http://mthfr.net/methylation-inhibited-by-candidas-toxin/2012/09/08/
消化管機能を修復し、腸内細菌叢を健全な環境に保つことはメチレーション治療を行っていく上で
最も重要視しなくてはならない事の1つです。
腸内環境を改善する目的は多岐にわたりますが、多くの方にメチオニン合成とその意義を知って貰うという意味も踏まえ、ここではメチオニン合成とアセトアルデヒドの関係について少しご説明したいと思います。
メチオニン合成酵素とは?
MTHFR、5-メチルテトラヒドロ葉酸、及び、その補酵素であるメチルコバラミンにより代謝された基質と反応する酵素
メチオニン合成酵素の役割は?
メチオニン合成酵素は2つの異なる機能を持ち合わせています。
- ホモシステインをメチオニンに変換
- 5-メチルテトラヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸塩に変換
テトラヒドロ葉酸塩に変換後は、DNA発現やDNA修復に利用される様々なフォレート類へと代謝される
メチオニン合成酵素はどのように機能するの?
5-メチルテトラヒドロ葉酸からホモシステインにメチル基を供与
メチル化されたホモシステインはメチオニンへと変換
メチル基をホモシステインに受け渡した5-メチルテトラヒドロ葉酸はテトラヒドロ葉酸に戻る
テトラヒドロ葉酸は再び代謝され、DNA発現やDNA修復に利用されるヌクレオチド塩基の合成を行う
MTHFRに遺伝子変異があると、5-メチルテトラヒドロ葉酸を代謝する生体能が十分でないため、
然るべき代謝プロセスも制限される場合があります。
上記の代謝図からも明らかなように、5-メチルテトラヒドロ葉酸やメチルコバラミンが欠乏するとメチオニン合成酵素は機能しません。
メチオニン合成酵素が機能障害に陥ると、ホモシステインが上昇し、フォレート類は低下する傾向が見られます。
ビタミンB6やメチル葉酸、メチルコバラミン、ベタインなどを摂取することで、
滞ってしまった代謝経路を再循環させ、迂回路を効果的に利用できる場合があります。
代謝経路に介在する栄養素を用ることで、交通渋滞が発生していた代謝プロセスを円滑に動かせるようになりますがメチオニン合成酵素を最適に機能させるために、これとはまた違う観点から考察してみるのも有用です。
こんな状況だと酵素は正常に機能しない
・活性型の基質不足(例:メチル葉酸)
・補酵素不足(例:メチルコバラミン)
・代謝を阻害する化学物質への暴露(例:重金属や溶剤、化学製品、毒性物質)
上2つの項目に関しては既にこのサイトでも触れて来ましたが、
3番目の問題についてはまだ解説していませんでしたよね。
メチオニン合成酵素を強力に阻害する物質は数える程ですが、そのうちの1つはカンジダからの代謝物です。
カンジダアルビカンスはアセトアルデヒドと呼ばれる毒性物質を放出します。
引用:
「アセトアルデヒドによる肝臓でのメチオニン合成酵素活性の抑制
エタノールが及ぼすメチオニン合成酵素活性に対するin vivo実験からの証明」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9590515
アセトアルデヒドはエタノールの代謝副産物です。
つまりどういう事かと言いますと…
二日酔いの症状を思い出してみて下さい。
- 頭痛
- ぼんやりした思考
- イライラやうつ
- 疲労感
- ヒリヒリした痛み
- 過敏になる
次に、酵母菌の過剰増殖による症状を思い出してみて下さい。
- 頭痛
- ぼんやりした思考
- イライラやうつ
- 疲労感
- ヒリヒリした痛み
- 過敏になる
では、メチル化が低下した際の症状はどうでしょうか?
- 頭痛
- ぼんやりした思考
- イライラやうつ
- 疲労感
- ヒリヒリした痛み
- 過敏になる
MTHFR遺伝子変異やメチレーションに問題を抱えている患者を治療する場合は、
既往や症例を念入りにヒアリングし、腸管の消化能力がどうなっているかをきちんと診断することが欠かせません。
私が診察する際には以下の事柄を注意深く聞き取りながら問診をしていきます。
- 過去5年の間で抗生物質を使用したか
- ステロイドの使用経験があるか
- フラジール(メトロニダゾール)を使用しているか
- 様々な属や菌種が組み合わさったプロバイオティクスサプリを摂取しているか
- 腸管症状-便秘、下痢、過敏性腸症候群
- 肛門の痒み
- 扁平苔癬(へんぺいたいせん):皮膚や口腔粘膜に小さい赤か紫色の隆起した発疹を生じる
- 白板症舌(はくばんしょう):陰部などに白斑を生じる
- 舌が真っ白になっていないか?
- 甘い物が止められない
- 何度も膣感染を繰り返していないか
- 爪のカビ、爪の真菌症
- 免疫力の低下
- 疲労感の度合
- ぼんやり、もうろうとした思考がないか
生体内で酵母菌が増殖しているとこうした症状が頻発します。
アセトアルデヒドがメチオニン合成酵素を阻害することをご理解頂けたと思います。
カンジダとアセトアルデヒドに対して何か手立てを施さなければ、健康は取り戻せないことは納得できますよね!
酵母菌を除去しメチオニン合成酵素の抑制因子を消し去るための治療提案
- ソフトドリンクやソーダ類、砂糖、単純炭水化物の摂取を控える
- セレン、亜鉛、ビタミンC、A、D、Eを摂取し免疫力を高める
- ビオチンとサッカロマイセス・ブラウディ(saccharomyces boulardii)でカンジダアルビカンスの繁殖を阻止
- 経口キシリトール製品でアセトアルデヒド生産を減少さえる
- 複数種類の属や菌種が入ったプロバイオティクスで善玉菌を増やす
- 抗真菌系ハーブと栄養素を用いて酵母菌を除去する
- モリブデン、ビタミンC、NAC、グルタチオンでアセトアルデヒドを除去する
- チアシード、マグネシウムの摂取や十分な水分補給(点滴)を行い、乾燥食品を控えて胃腸の蠕動機能を改善
- 良質のタンパクと野菜を含んだ食事を摂る
- 専用酵素を用いてバイオフィルムを破壊し、酵母菌の再発を防ぐ
- メチルコバラミンとL-5-メチルフォレートでメチル化を促進
酵母菌やカンジダの除去に効くサプリメントは僕の会社でも販売していますのでご参考まで
http://www.seekinghealth.com/natural-health-remedies/yeast-candida-overgrowth-support.html
注意:
ご存知の通りメチレーションの代謝機構は複雑で、ここにご紹介したのは数ある治療アプローチの中のごく一例に過ぎません。
どのようにカンジダ除去を進めていくのかは、個人の遺伝子変異や生活習慣、年齢、症状によっても大きく異なり、治療の選択肢は様々です。
ここでの重要なのは、メチレーションは遺伝子変異とビタミンさえ注意すれば良いというものではなく、腸内環境も合わせて考慮しなくてはならいという点です。
2013年9月19日 追記:
Magnesium Advocacy Group というサイトにアセトアルデヒドに関する有益な記事が掲載されています。
アセトアルデヒドはメチオニン合成酵素を阻害すると述べましたが、そもそもアセトアルデヒドをどうやって除去するのかについては言及していませんでしたね。
ついつい、うっかりしていました。
マグネシウム欠乏がMTHFRに影響をもたらすのは本当!?
Mg deficiency affects MTHFR? Really?…
http://gotmag.org/mg-deficiency-affects-mthfr-really/
この記事を読んで頂くと、マグネシウムがアセトアルデヒドをどうやって取り去ってくれるのか理解できると思います。
マグネシウムはアセトアルデヒドを排除するだけではなく、あまねく生体の酵素反応に関わっているキープレーヤーでありながら大半の人が欠乏している…ということを是非覚えておいて下さい。
引用:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22909057
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9590515
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21114016
参考:
Cobalamin-Dependent Methionine-Synthase